熊野比丘尼は春を売る

　今、「こんなに面白い江戸の旅」（大和田守と歴史の謎を探る会 河出夢文庫）を読んでいる。中でも熊野比丘尼に関する記述は興味深い。
　ケンペルの言葉を借りて以下のように説明している。
「〔ケンペルの江戸参府旅行日記〕には次のような描写がある。これらの剃髪した人々のうちには、比丘尼とよばれる若い女性の教団がある。彼女たちは熊野やその近国にもっとも多くいるので、仏教の方の尼僧と区別するために、熊野比丘尼とよばれている。彼女たちは、ほとんどが、われわれが日本を旅行していて姿をみたうちでもっとも美しい女性である。善良で魅力的にみえるこれらの貧しき若い女たちは、大した苦労もせずに尼として物乞いする許可を受け、旅行者から思うままに魅力的な容姿で大へんうまく布施をまきあげる術を身につけている。〔中略〕彼女たちは自分の住いから一、二里の所に出かけ、籠や馬に乗って通り過ぎる身分の高い人々を待っている。〔中略〕相手の所に近づいて野良の歌を歌い、銭離れのよい人をみつければ、何時間でも伴をして相手を楽しませる。」〔原文ママ〕
　（文・山口）　

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