「冗談じゃないよ」と、自動販売機が、急に人が乗りうつったように話し出しました。「誰が金も持ってない人間に、ただで商品をやれるのかね。もう一度出直してきな――」
しかし、サトルはあきらめませんでした。
「お願いします――。水を飲まなければ、生きていられない。――頼むから、一滴でもいいから、水をくれ……」
と、サトルは祈るように言いました。
「ダメなものはダメだ……。とっとと帰りやがれ!」と、自動販売機は、モーターをブンブン言わせて怒りました。
サトルはあきらめがついたのか、くるりと自動販売機に背を向けました。しかし、そう見えたのもつかの間、サトルは鬼のような顔をして振り返ると、思いきり自動販売機を蹴りつけました。そして叩きつけ、蹴りつけ、また叩きつけました。
サトルは、獣のような叫び声を上げながら、めったやたらに自動販売機に襲いかかりました。自動販売機はたまらず口を開け、ひっくり返りました。
サトルは、仰向けになった自動販売機を、息を切らせながら見下ろしていました。そして、ぬっと頬を吊り上げて笑うと、自動販売機の口に手を突っこみ、缶ジュースをつかみ出すと、浴びるように片っぱしから飲み干しました。
「プハーッ、飲んだ飲んだ――」と、サトルは袖で口を拭きながら、満足そうに寝転びました。その顔には、自動販売機を壊した罪悪感など、まったく浮かんではいませんでした。
ザザ、ザザァ。ザザザ――。
心地よい寝息を立てているサトルの耳に、激しく砂をかく音が聞こえてきました。なにごとかと体を起こすと、サトルをつけ狙う青騎士が、砂を蹴立ててこちらに向かってきていました。
まだ、夢を見ているのかと思ったサトルは、目をしばたたかせながら、ぐんぐんと近づいてくる青騎士を、ただじっと見続けていました。
ヒヒヒーン――……。
と、耳を塞ぎたくなるほど甲高い馬の嘶きが聞こえても、青騎士の姿に混乱しきったサトルは、すぐに立ち上がろうとしませんでした。
ピトリ――と、缶に残っていたジュースがこぼれ、サトルのズボンを濡らしました。
サトルは、ズボンに染みるジュースの冷たさに、ようやく我に返りました。
「フワァーアー!」と、奇妙な声を上げて立ち上がったサトルは、すぐ目の前に迫った青騎士に背を向け、一目散に逃げ出しました。
しかし、青騎士はすぐさまサトルに追いつくと、鋭いヤリを馬上から突き下ろしました。サトルは、あっと言って飛び退くと、そのままグルグルと砂山から転げ落ちてしまいました。
しかし、サトルはあきらめませんでした。
「お願いします――。水を飲まなければ、生きていられない。――頼むから、一滴でもいいから、水をくれ……」
と、サトルは祈るように言いました。
「ダメなものはダメだ……。とっとと帰りやがれ!」と、自動販売機は、モーターをブンブン言わせて怒りました。
サトルはあきらめがついたのか、くるりと自動販売機に背を向けました。しかし、そう見えたのもつかの間、サトルは鬼のような顔をして振り返ると、思いきり自動販売機を蹴りつけました。そして叩きつけ、蹴りつけ、また叩きつけました。
サトルは、獣のような叫び声を上げながら、めったやたらに自動販売機に襲いかかりました。自動販売機はたまらず口を開け、ひっくり返りました。
サトルは、仰向けになった自動販売機を、息を切らせながら見下ろしていました。そして、ぬっと頬を吊り上げて笑うと、自動販売機の口に手を突っこみ、缶ジュースをつかみ出すと、浴びるように片っぱしから飲み干しました。
「プハーッ、飲んだ飲んだ――」と、サトルは袖で口を拭きながら、満足そうに寝転びました。その顔には、自動販売機を壊した罪悪感など、まったく浮かんではいませんでした。
ザザ、ザザァ。ザザザ――。
心地よい寝息を立てているサトルの耳に、激しく砂をかく音が聞こえてきました。なにごとかと体を起こすと、サトルをつけ狙う青騎士が、砂を蹴立ててこちらに向かってきていました。
まだ、夢を見ているのかと思ったサトルは、目をしばたたかせながら、ぐんぐんと近づいてくる青騎士を、ただじっと見続けていました。
ヒヒヒーン――……。
と、耳を塞ぎたくなるほど甲高い馬の嘶きが聞こえても、青騎士の姿に混乱しきったサトルは、すぐに立ち上がろうとしませんでした。
ピトリ――と、缶に残っていたジュースがこぼれ、サトルのズボンを濡らしました。
サトルは、ズボンに染みるジュースの冷たさに、ようやく我に返りました。
「フワァーアー!」と、奇妙な声を上げて立ち上がったサトルは、すぐ目の前に迫った青騎士に背を向け、一目散に逃げ出しました。
しかし、青騎士はすぐさまサトルに追いつくと、鋭いヤリを馬上から突き下ろしました。サトルは、あっと言って飛び退くと、そのままグルグルと砂山から転げ落ちてしまいました。