くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

地図にない場所(80)

2020-06-22 18:56:49 | 「地図にない場所」
「知ってるんですか、無幻さんのこと……」
「ああ、知ってるとも……ワシの下で修業しておったんじゃよ……」と、木は思い出すように言いました。「ワシはな、樹王と呼ばれている……このドリーブランドを隅から隅まで知っている者だ……」
「隅から隅まで……」
「そう……隅から隅まで……ワシはな……このドリーブランドが、ドリーブランドになる前から……ここにこうやって立っておったのじゃ……その間には、いろんな事を見てきた……ワシの見てきたそのすべてが……ドリーブランドの歴史そのものなのだ……」
「でも、どうしてこんな砂漠の真ん中で……」
「ホッホッホッ……本当のワシはここにはおらんのだ……いや、ここにいるのもワシだが、本当のワシは、この世界より遙かに遠い世界に立っておる……そう……つまりワシは、一度にたくさんの場所に生きておるのだ……君が落ちてきたという世界も、ワシの生えておるどこかの世界じゃろう……」
 サトルは樹王の話を聞いて、これまで見たり体験してきたことを、思い出し思い出し、ひとつずつ話していきました。
「オー……あそこか……おまえはそこに戻りたいという訳か……」と、樹王がわかったというように、体を前後に揺らしながら言いました。
「はい、そうです。でも、ぼくは戻れるでしょうか――」と、サトルはたずねました。
 樹王は、しばらく黙っていましたが、ゆっくりと口を開いて言いました。
「おまえは、様々なことにとらわれすぎている……おまえが落ちてきた世界へ帰るには……よほど勉強せねばならないようだ……しかし……」
 樹王は「しかし……」と言ったきり、また目を閉じて、すっかり黙りこくってしまいました。サトルは、どきどきしながら樹王が口を開くのを待っていましたが、しばらくしてもまったく目を開ける様子がないので、また急に恐くなり、死ぬまでここにいなければならないんだ、とその場に座りこみ、手で顔を覆ってしまいました。
「……」サトルは、誰か人がそばにいるような気がして、手の間から真っ赤になった目をそっと開きました。
 と、樹王の陰から、誰かが顔を出してサトルをのぞいているのが見えました。
「あっ!」と、サトルは短く声を上げました。サトルをのぞいていた顔には、鼻も口もなく、ただひとつの目だけが、パッチリと大きく開いていたのでした。
 ひとつ目の顔は、サトルが驚いて声を上げると、さっと樹王の陰に隠れました。
「ほらほら……リリ……出てきてごらん……なにも怖がることはないよ……」と、目をつぶっていた樹王が、すっと目を開き、やさしい声で言いました。
 樹王が言うと、幹の陰から、背中まである長い髪をした木の人形が、恐る恐るうつむきながら姿を見せました。骨のように太い木の枝を、何本もつなぎ合わせたような人形でした。どうしてかはわかりませんが、人形はサトルと同じように、命があるようでした。しかしその顔には、まばたきをしない目が、大きくひとつついているきりでした。
 サトルは、またなにかの化け物かと思って、樹王と木の人形の顔を交互に見ながら、ずるずると後ろに下がりました。
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よもよも

2020-06-22 06:08:30 | Weblog
いやはや。

まじ寒い。。

それにしても、

都道府県間の行き来が解除になったせいか、

街の中急に車の量が増えたわ。。

良いのか悪いのか、

行き来が解除になったって、

別段ウィルスが消えたわけじゃないんだよね・・・。

油断大敵って言うけど、

なんかまずい気がするけどなぁ。。

って、このまま体育館も一般開放制限無くしてくれれば

いいんだけどなぁ。

あーあ。
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