春日山城跡の本丸まで攻め上り、その帰りのことである。
あいにくの雨の中、びしょ濡れになりながら、やっとの思いで登り口の謙信公銅像前まで戻ってきた。
すでに時刻は大きく正午を回っていた。
ふと目の前に「茶屋」を見つけ、これ幸いと一休みさせてもらい昼食をとることにした。
濡れて情けない顔をした我々を見て、年配のご夫婦が招き入れてくれ、すぐにストーブに火をつけてくれた。
淹れていただいた熱いお茶を飲むと、冷えたからだが温まり生き返るようだった。
壁に貼られたメニューの「山菜そば」の写真を見ていると、「タラの芽とコシアブラの天ぷらですよ」とご主人の声。
山菜の女王とも言われるコシアブラが食べられるとはラッキー!
タラの芽とコシアブラの天ぷらが載ったアツアツの汁をすすると、じわりと腹に滲みていく。
そして、山で摘んでこられた山菜がうまい。
ガツガツ食べている様子を見ていたのか、ご主人が皿に載った天ぷらをサービスしてくれた。
御親切に、感謝!
食事というものは、その状況によってうまさも変わるが、この時の蕎麦はなんとも言えずうまかった。
お店を切り盛りするご夫婦のお気持ちが、蕎麦の味を、よけいおいしくしたのであろう。
しばらくすると、びしょ濡れだったウィンドブレーカーやズボンも乾いてきた。
礼を言って外に出ると、雨も徐々に小降りになってきた。
何一つ気取ったところはない、決して高価な内容でもない、だけど、実に後味の良い食事ができたお店であった。