今年最大の寒波が上空に居座っている。
日中も絶え間なく雪降り続く厳冬の一日。
玄関のベルが鳴った
筆がブルンとぶれて思わず舌打ちが出る
渋りつつ腰を上げて、
玄関に出てみるとおなじみの宅配のおじさんだ。
「今日は美味しいお肉が届きましたよう」
あらま、このひとは。
となじる気も起きなくなる人のよい笑顔につられ
こちらも調子を合わせて破顔してしまう。
「寒いのに、ほんとに、ほんとにご苦労様」
「あ、ハンコさかさまよ」
天地たがえて今や判を押そうとするを押しとどめ、
にっこりにやり
ウインクする見かけによらず視力のいいおじさん。
「はーい、ありがと。
鍵しっかりかけといてね」
と雪の戸外へ飛び出してゆく。
天性なのか年の効なのか
雪の中に薄れてゆく宅配の車をしばらく見送った
あの車の中、あったかいんだろうなぁ…
風もなく音もなく、雪は小止みなく
しんしんと底冷えのする厳冬の一日。