
長いこと使いこんで変形してしまった右手を、暇にまかせてじっと見つめたら気がついた。
鶏皮みたいにしぼんだ手の甲に比べて、手のひらを返せば皺ひとつなくいやにてらてらと光っている。
何かのサインではないかしらん?
右手の五本の指のうち、外側の三本が、第一関節の先っぽでみな左向け左をしているのも
小指の外側に目玉みたいなタコができているのも、絵具を皿に溶くときの形そのままで
曲がった中指にはもう何十年も前から大きな鉛筆タコが棲みついているのだから
これは人間の手? と、我ながら恥ずかしい。
それを自覚したのは、お正月休みで帰省した太郎の手を、何かの拍子に観察して以来のことだ。
赤ちゃんのもち肌とも、たおやかな女性のものとも異なる、しっとり肌理の整った長い指が美しく眩しかった。
体育会系の、まっ黒ケの顔によくぞこんな白い細い指が付いたものだ
男の子の手なんぞ想像したこともなかった。この世にはいろんな美しさがあるんだなぁ
いくら心を磨いてもかなわないものがいっぱいある…
そしてつくづくわが手を見たら、
あら、長年の付き合いで馴染んだ手相がいつの間にか変わっている!
無数の糸くずみたいな細かいとぎれとぎれの線が手のひら一面に表れていて、驚いた一時期があった。
複雑怪奇な世の中に対応したらこうなるのか
手相に詳しいと自称する知り合いに見てもらったら、もったいぶって口外は出来ないとおっしゃる
と聞けば余計面白くて無理やり聞き出したのが、曰く、「愛情に泣く」(¬o¬)----☆
ん?
当たるも八卦当たらぬも八卦。
あの糸くずがどこへ消えたのか、今は横に2本、縦と斜めに大きな線が1本ずつくっきり残るだけの
シンプルな子どもの頃の手相に戻っている。
無に還元するまでの道のりを歩き始めて、行程はつつがなくはかどっているとみえる。
これ以上ややこしい線が二度と戻ってなどきませんように~
居室の窓から曇り空を、若い?頭脳で今日もぼんやり見上げているさまは、あまり絵にはならないとは思うけど。