
何度か同じ店舗を訪れて買い物をしたときのこと。
長い待ち時間の退屈を紛らわせようと、顔なじみになった若い店員さんがにこにこして話しかけてきました。
「T市には長くお住まいなんですか?ご出身もこちらで?」
「いいえ。生まれは隣県の新潟なんですよ」
ごく自然に、記憶は飛んで子供のころの懐かしいシーンがさまざま思い浮かびました
ほぼ同時に店員さんの方も懐かしそうな表情になりました。
つるつるした若い肌に眉も目もぱっちり描きこんで卵のむき身をみるようです。
若い女性は日頃私の周囲にいないので、数人いる彼女の同輩みんな同じに見えて年齢が分かりません。
もともと興味がないのだし、しげしげ見るのは失礼だし、そもそも人の顔オンチなんだし。
「友達とスキーに行きましたよ!雪が多いのですよね!」
「ええ。昔はもっと多かったような気がするけれど」
「窓から出入りすることもあるって聞きましたけど本当?」
「本当ですよ。なにしろ除雪車なんてものがナかったんだから。」
「 ? 」
するうちすぐに会話が噛み合わなくなって、気付いた彼女が私平成の生まれなのでと気の毒そうに言い訳をしてきます。
そうでした、4~5年前かそこら学生時代のことでも偲んでいるらしいお嬢さん、その頃はまだこの世にお目見えしていません。
つい最近の出来事ででもあるような鮮やかな記憶が、半世紀以上もさかのぼった時代だったとは驚きでした。
「10年ひと昔」とはいつの頃の単位でしょう?
入学前のオチャッピィを宇宙人と表現したら、化石人と見事に言い返されたどこかのおba~ちゃんとは同類項
オバァチャンなんてのはしわくちゃで、蓬髪で、二つに折れた腰、杖を頼りの消えてゆきそうなイメージなんだけど……
勢いがなくなったらしく、その時周りにいた四~五人の店員がいっせいに言ってくれましたよ
お客様は10歳、いいえ15歳は若く見えますよ! (…私自身年が信じられないんですよぅ)
お洋服が素敵ですね! (…10年以上も前に作って、さんざん着古したものなんだけど)
時事問題、ヨガ、お仕事、何もかも敵いませんわ! (…アソビだったらとても敵いませんわ).。o○
残念なことに、もうおだてに乗って嬉しくなる年ではありません。
若い彼女らに見送られて、私は老眼鏡と補聴器を手に足元頼りなく帰路についたのでした。