自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

手作り今昔

2009年08月25日 | 絵と文

 時代がわかるけど「ガリ版印刷」ってご存知?
 いわゆる原紙切り、気取って言えば「孔版印刷」、ワープロもパソコンもほとんど普及していない頃の簡単な印刷手法で、一時期学校では先生のプリント作りなどよく手伝わされたものです。
 自分で原版を作るのですから、こどもが小学生になって父兄の手による学級新聞づくりを始めたとき、カットや漫画などふんだんに挿入しては遊び心で楽しんでいるうち、いつとはなく町の印刷屋さんから声がかかり、仕事として朝夕追いかけられるはめになってしまいました。

 仕事となれば、ひどかった。
 何しろ重いものはハシくらいしか持てないたおやかな細身の体?が、明けても暮れても締め切り時間と首っ引き、運動は皆無なのに不自然な姿勢で重圧かけ通しなのだから、気がついたときはもうあちこちがズタボロ。
 次々来る急な注文に追われてご飯食べ忘れることが日常茶飯事で、
 まるまる7年間はともかく頑張ったのですが、そのころから整形外科の医者通いも日常茶飯事に。

 ある日遅い昼食をトレーに盛り付けて仕事場に運び、原稿に目を通しながら食べようとしたら、なんと口が、口が、ハンダづけされたみたいにくっついてびくともしないのです。眼をお茶碗に集中して何度も力いっぱい試みるうち、カっクン、と大きな音をたててやっとこさ口が開けました。そのあとはカクカク、むしゃむしゃ、カクカクと異音の連続。
 仕事に夢中になるといつか歯を食いしばっているのです。いけない、と顎の力を緩めると途端に指先までへなへなと脱力して、思わず鉄筆を取り落とすのは不思議でした。
 原紙に穴をあけるためには指先から手首、ひじ、肩、あご、を通りぬけて反対側の手先にいたるまでの筋肉が連動するらしい。
それも大変なエネルギーを使って。

 帰宅した彼に顎の異音を聞かせておもしろおかしく報告しました。
 すると、一人きりのときは無理に口を開けようとしてはいけないよ、といいます。
 なぜかって、開かない口を無理にこじ開けようとするとあごの関節が外れることがあり!!
 あわ、わ、なんてよだれを垂らしてちゃ電話もできないだろ
 そんな状態でご近所に助けを請うのも恥ずかしいだろ・・・だって ((((;´・ω・`))) 
 なるほど。 言われてみればその通り
 そこまでは考えもしないのがつまり若さなのでありました。



 ふた昔もっと前のことです。
 なぜ今頃思い出したんだっけ?
 そうそう、最近顎関節症という記述がどこかでふと目にとまったからでした。
なんでも顎関節症とはれっきとした慢性疾患で、免疫系、血管系、循環器系から関節炎、目、耳、脳に自律神経失調から情緒不安定その他まだまだに影響する可能性があるそうです。  思い当たるふし節はたしかにあり、

 20年は長いようで短く、いえいえ短いようで長い月日でもありました。
 よかった。その間あごは外れることなく無事でいてくれて。
 うっかり美味しいものも食べられない、なんて大悲劇に見舞われるところでした。
 顎の異音に限って言えば、音は小さくなったけれど、おしゃべり下手、嫌い、機会も少ない、この三重苦(楽かも)の脳内に、耳鳴り協奏曲のシンバルのようにときおり響きます。


 余談はともかく
 グループ展が近づいて、今なお元気な顎のおかげでお煎餅などかじりながら
 パソコン、コピー機相手に例年手製のパンフなど、今年新調の機械から効率よく吐き出されるのを眺めての感慨でした。
 つい先日、鉄版や鉄筆など一式を見つけ出して廃棄したのですが、一時代重要な位置を占めていた過去の遺物に決別というよりも、そのひんやりした触感、そしてただただ、なんとまぁ両手に重かったこと…

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