ノマドランド 生き方を考える映画とある。
ノマド(遊牧民)現在はキャンピングカーで仕事や生きがいを求めて移動し車上生活者の事を表す。悲しみを抱えて、亡き夫の愛車で旅に出るファー、出会う人々に導かれるようにノマドランドを訪れる。
私は、ファーの考え方や行き方に共感する。
年老いていく事以外は、どんな事もこなし乗り越えていくタフな身体と心、旅先で出逢う人との関わり方は繊細でこの上ない優しさのファー。が、彼女の心に沈んだ悲しみはそこにうずくまったままーーー。ファーが森の水場に一人全裸を浮かせているシーンは、彼女の孤独や深いやるせなさが伝わる。私は、この女優さんだからこその逞しい美しさがあるシーンだと思う。
他にも、好きなシーンはいくつかある。崖から孵化した卵の無数の殻が落ちて渓谷の川に白い花びらのように流れるシーン。夕陽のキャンピングカーロード、年老いた彼女や彼らの意志を持った顔のアップは、たるんだ頬や顎や刻まれた深い皺も何のその、生きてきた尊厳を感じさせる。
後半に、ファーがノマドランドに集う人々に寄り添い友人となった人達から届く心に癒されていく。死を受け入れた友人の夢叶った幸せな最後がノマドランドへSNSの便り、家族といる幸せを選びノマドランドを去る友人、多くの悲しみや深いやるせなさ、ささいな幸せが交錯する中でファーの悲しみは溶けていく。私の心も洗われるーーー。
ラストシーン、夫と暮らした家に戻り、埃に沈んだ部屋から夫が大好きだった砂漠を眺めるファー。その瞳は明るい。私も頑張る〜自分にも人にも優しく、いろんな思いを新たにさせてくれた映画。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます