
❤️記憶のメモ書き
コロナの自粛発令に慣れ、GOTOキャンペーンも遠い日の出来事の様な日々。
ふと頭をよぎるあるおばあちゃんの姿、「わしゃ 前橋の農民じゃ〜」丸いキラキラした目で語っていた。
11月初旬、娘家族を案じてGOTOキャンペーンで京都に滞在した。4人の子供達と仕事と生活を頑張る親達がそれぞれに
コロナ生活にストレスを含み疲れているのを、SNSで感じ取り呼ばれてないが訪ねた。私が、初日に感じた家族の疲弊は、
子供達も親も相当な物だった。近くに親戚もない単体家族は、コロナで立ち往生しては戻りを繰り返していた。
私は、とりあえず家事をこなし、家族に夕飯のゆったりとした時間を確保しよう〜と決めた。せっかくの京都だが外出は控えた。娘と相談し年末の早目の掃除も兼ね忙しくしている中で、孫達が明るい声で飛び込むように学校から帰ってくる。日々、みんなが元気を取り戻した。特に婿は、目に見える程元気になった。彼は、元々明るい能天気な性格だが学者肌の大学の先生だ。時間的融通を効かし子供達を日々見回り、塾や習い事の送りや夕飯作りもこなしている内に疲れは溜ったと推測した。彼にも、私は正に救いの神?。京都の初日に、彼が疲れた様子で「子供達が全然言う事を聞いてくれない---」そりゃそうだ大学生じゃないんだから、のびのび育ち過ぎ?位の子供達、頭ごなしは駄目に決まってる。家事や子供達との時間が、少しゆったりするだけで、家族は丸くなり笑顔が増えた。
10日間は、あっと言う間に過ぎGOTO1泊の宿泊を大好きな神戸港町にあるホテルにした。自由な時間を散々歩き周り、ルームサービスの豪華なディナーで夜景を堪能した。翌朝6時にフロントアウトしながら、視界の隅に写る年配の親子らしい粗末な服装と大きな響く声が気になったが、歩いて2分のポートピア駅に向かった。
神戸の街をほっつき歩き、このモノレールで海を眺めながら空港へ向かうのは、私の好きな家路となっている。沖縄で、移動に車を使うから電車や駅は魅力的だ。特に、ここ神戸の近代的な建物や遠くに見える六甲山や、港の海とのバランスも素晴らしく本当に素敵な路線なのだ。
駅に着くと、券売機の前で困った様子の親子らしき二人。ホテルでアウトしてた二人だ、90歳近くなる小柄なおばちゃんと、立膝座りで鞄をまさぐる顔半分白マスクで覆った40歳代の男のそばには白い杖。やはり親子かなと思いながら、声をかけた。行き先を聞き券売機を見ると30円不足だ。おばあちゃんに促されて男は財布を探してる、私は30円を足して出たチケットを二人に渡し、息子らしき人から渡された500円玉を押し返した。私は沖縄生まれで、電車のチケット買うのもやっと慣れてきたから気にしないで〜と。
おばあちゃんが大声で言った。私は耳が聞こえんが連れは目が見えん〜全盲の男性だとわかった。マスクがほぼ目までかかっている。私は、二人と反対方向の神戸空港なので、お礼の言葉に気をつけてと返し、改札口に向かった。ふと表示を見ると三宮も空港も改札入口は同じ、振り返ると二人は駅の出口方向に歩いている。
私は、飛行機の時間が気になったが、急いで後を追っかけ改札入口を教えた。やはり、間違えてた。改札に入って5分位で神戸空港行きがきた。乗り込もうとする二人に、15分後に三宮行きが来るからと止める。おばぁちゃんが、「ありがとう〜わしゃ 前橋の農民じゃ〜」と返して来た。乗り込んだモノレールの窓の外、ホームでは、丸いキラキラした目で私をじっと見るおばぁちゃんと目迄マスクの男が頭を下げた。
おばぁちゃんは身長140cm位、40歳代の男は、白い杖の様に細い身体に白シャツ生成りのズボン、目迄白マスクと顔が見えない風体。ホームで、おばちゃんは、大声で「ここは、素晴らしい街じゃ、こんなキレイな街はない!ホントにいい街じゃ」感嘆し、白いマスクの男は音もなくうなずいた。電車が動き出し、遠のく二人を私は、不思議な旅人だと感じた。
コロナは、収るどころか広がり自粛は続く〜。旅に出る事もはばかれるこの頃、私はおばちゃんがキラキラした目で、わしゃ前橋の農民じゃ〜と言ったのを思い出し前橋を調べた。埼玉県!二人には遠い旅だったろうにと、あの時私によぎった感動が増してきた。まるで、絵本の中の二人だった。おばぁちゃんの顔は、はっきりと思い出すが、服装はあねさん被りとモンペ風だった様な気がしてはっきりしない、息子らしき人の姿格好ははっきり覚えているのに何故かあの表情しか思い出せない。本当に、生き生きとした表情で語っていたおばぁちゃん、耳が遠いから大声で遠くを見るように懸命に話してた。
私の母は91歳になるしっかり者だが、あのおばぁちゃんの姿とは全然違うと感じている。目が見えない、耳が聞こえない旅する二人が支え合い、前を見る姿が異質にさえ感じたからかも知れない。
私の心に焼きついた二人、おばぁちゃんのキラキラした目の語り。
人の暮らしは、いろいろあれど生き様は培うものだろう〜子供達も大丈夫、私も大丈夫、そんな気になる。