おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

JAWS/ジョーズ

2019-08-07 07:22:04 | 映画
「JAWS/ジョーズ」 1975年 アメリカ


監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 ロイ・シャイダー
   ロバート・ショウ
   リチャード・ドレイファス
   ロレイン・ゲイリー
   カール・ゴットリーブ
   マーレイ・ハミルトン
   ジェフリー・クレイマー

ストーリー
小さな海水浴場アミティの浜辺には、気の早い若者のグループが焚火を囲んでビールを飲んだりギターをかき鳴らしてたわむれていたが、その中にクリシーという女子大生がいた。
波打際めがけて走り出し、一糸まとわぬ姿でなまぬるい夜の海に飛び込んだ。
やがて彼女何かが自分の足をひっぱっているような衝撃に襲われた。
恐怖で声が凍って、クリシーの身体はかき消すように海面から消えた。
翌朝、アミティの警察署長ブロディの家に電話がかかり、溺死者が出たとの報告が入った。
浜辺に直行したブロディは、そこに打ちあげられているきりきざまれたような人間の肉体の断片を目撃し、署に戻ったブロディは事故報告書の死因欄に“鮫に襲われて死亡”と書いた。
ブロディは海岸に遊泳禁止の立て札を立てることを決意したが、アミティ市の市長ボーンが、アミティは夏の間に海水浴場がおとしていく金で、住民が細々と残り1年の生活を成り立たせていて、海岸を閉鎖する事は大変な死活問題であり、死因は鮫でなく漁船に巻き込まれたかもしれないと主張した。
検死官も市長の言葉に追従し、翌日の日曜日、大勢の人が浜辺にでて初夏の太陽を楽しんでいたが、ブロディの心は落ちつかなかった。
やがて第二の犠牲者として少年が海中に消えた。
少年の母親は復習のために3千ドルの賞金を出すという新聞広告を出した。


寸評
この頃のスピルバーグはいい。
僕は1970年代のスピルバーグ作品である「激突!」「ジョーズ」「未知との遭遇」などは好みに合う作品群だ。
1980年以降になるといい作品もあるが、偉くなりすぎてしまったのかちょっと鼻につく作品が多くなったような気がしてあまり好きな監督でなくなった。
「激突!」に次いで見たこの映画も映画的才能を感じさせる彼の代表作だ。
サメの映画だがあまりサメが登場しないのも良くて、ジョン・ウィリアムズのテーマ音楽がサメの接近をあらわすという演出はなかなかいい。
恐怖の盛り上がりに使われる手法だと思うが、ここでは何度も巧みに利用されていて効果的だ。
テーマ音楽は色んなものに使われることになり、ジョン・ウィリアムズの功績は極めて大きい。

美しい夜の海の光景から女子大生が被害にあうシーンの手際よさはこの作品のレベルを感じさせる。
その後に人命を重んじる警察署長のブロディと、島の経済を優先したい市長の対立も、ありきたりとは言え適度の尺をもって描かれている。
そして男の子が犠牲になって、その母親から「遊泳禁止にしなかった署長が悪い、息子を殺したのは所長だ」となじられ、市長が母親の誤解だと署長を慰める展開も自然な流れで、観客の緊張は保たれたままである。
人食い鮫が襲ってくというだけの作品なのだが、その中で緊張感を保ち続ける至難の技を見せているのは特筆もので、脚本と表現が上手い具合にマッチしている。
サメが全容を見せるのはわずかで、背中のヒレであったり、音楽であったり、タルの動きなどがサメの存在と動きを著し、そ事がかえって恐怖と緊張感を生み出していくという演出だ。
この作品に影響を受けてどれだけのパニック映画が撮られたことか。
しかし本家をしのぐ作品はついに現れなかった。

ロバート・ショウのクイントという鮫ハンターが登場し、話は彼の強烈な個性によって面白くなっていく。
昔ながらの漁師で、海洋学者のフーパーなど眼中にない。
それなのにサメにかじられた自分の体を自慢し合って認め合う場面は、お互い鮫に取り付かれている仲間と感じたのだろう。
そこでクイントは鮫の傷の一つが極秘作戦で広島に投下する原爆を運んだ帰りに、日本の攻撃を受け海に放り出されて鮫の餌食となりほとんどが死亡したことを語る。
戦争そのもだけでなく、戦争が原因で亡くなる人も多くいるのだとの主張が見て取れる場面だ。

いよいよサメ対人間の闘いが始まる。
黄色タルを引っ張って突撃してくる鮫の迫力が素晴らしい。
口を大きく開き牙をむいて襲ってくる鮫は作り物とは思えない迫力を生み出している。
実写との融合が上手い。
クイントが「鮫は人間を丸のみにする」と言っているのが彼自身に対する伏線となっている。
スター俳優が出なくても面白い作品は撮れるのだと証明した作品だ。