おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

欲望のバージニア

2024-08-08 07:10:07 | 映画
「欲望のバージニア」 2012年 アメリカ                                                 
 
監督 ジョン・ヒルコート                                                   
出演 ジェイソン・クラーク トム・ハーディ シャイア・ラブーフ    ガイ・ピアース    ジェシカ・チャステイン ミア・ワシコウスカ           ゲイリー・オールドマン    デイン・デハーン クリス・マクギャリー    ノア・テイラー

ストーリー
1931年、バージニア州フランクリン。
そこは、禁酒法時代にあって、酒の密造がもっとも盛んな街のひとつ。
そんな無法の街で密造酒ビジネスを手がけるのが、長男ハワード、次男フォレスト、三男ジャックのボンデュラント兄弟。
末っ子のジャックは牧師の娘バーサにご執心で、自分も早く大きな商売をしたいと野心を燃やしていた。
一方、都会から流れてきた謎めいた女マギーが街に現われ、兄弟が経営する酒場で働き始める。
そんな中、新たな取締官レイクスがフランクリンに赴任。
すると彼は着任早々、密造酒業者に対して高額な賄賂を要求し、従わない者には容赦のない制裁を行っていく。
同じようにボンデュラント兄弟にも賄賂を要求するフランクリンに対し、決然とこれ拒否をするフォレストだった。
拒否した兄弟はレイクスの残忍な仕打ちを受けることになり…。


寸評
三兄弟のキャラクターはきっちりと描き分けられている。
長男は酒浸りの毎日だが腕っ節だけは強そう。
次男はこの兄弟の束ね役で、ビジネスに邁進するものの武骨者で女性に対してはまったく消極的。
三男は末っ子のこともあって少しか弱いが、それだけに早く一人前になりたいと焦っている。
そんな三人に二人の女性を絡ませながら、新任の取締官と対決していくというのが大筋。
どうもこの街は密造が半ば公認といったところがあって、街の保安官もボンデュラント兄弟を認めているところがある。
したがって、彼等は法を犯している悪人ではあるが正義の悪人で、悪人の悪人である取締官との対決といった構図だ。
この構図設定は、街の人達を巻き込むことで違和感のないものになっていた。
禁酒法時代の密造酒作りを描いていながら、悪人同士の内輪もめと言う単純なギャング映画でないところがいい。
エリオット・ネスを描いた「アンタッチャブル」とは全く趣が異なった映画だ。

全体としては見ごたえもあるのだが、もう少し描き込んでも良かったのではないかと思わせる人物もいた。
例えば、ゲイリー・オールドマン演じるフロイド・バナーは一体どのような立場と権力を得ているのか?
レイクスの上司も賄賂を要求している一員なのだが、その姿は全く見えなかった。
レイクスを演じるはガイ・ピアースは粘着質で、ブチ切れると手が付けられない特別取締官を好演していたが、もっと凄味のあるキャラクターであった方が緊迫感が漂ったと思う。
ボンデュラント兄弟が結構対等に渡り合っていて、見ていて負ける気がしないのだ。

不死身の三兄弟であることが冒頭で語られるが、本当に不死身であれでよく生きていられるものだと思う。
最後は少し拍子抜けしたりするが、人生のはかなさと先行きの不透明感を語って余韻あるエンディングになっていた。
よくある手ではあるけれど・・・。