「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」 1994年 アメリカ
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監督 エドワード・ズウィック
出演 ブラッド・ピット アンソニー・ホプキンス
エイダン・クイン ジュリア・オーモンド
ヘンリー・トーマス カリーナ・ロンバード
ゴードン・トゥートゥーシス クリスティナ・ピックルズ
ストーリー
20世紀初め、モンタナの牧場では、元騎兵隊大佐のウィリアム・ラドロー(アンソニー・ホプキンス)は、戦いの記憶から逃れるため、この地に定住して3人の息子たちの成長を見守っていた。
中でも狩りを好む野性児の次男トリスタン(ブラッド・ピット)に、ことのほか愛情を注いだ。
ウィリアムの妻イザベルは、過酷な自然環境に耐えられず彼と別居して街に住んでいた。
時は流れ、ハーバード大で学んでいた末っ子サミュエル(ヘンリー・トーマス)が、婚約者スザンナ(ジュリア・オーモンド)を連れて帰郷した。
やがて第一次大戦が勃発し、3兄弟はヨーロッパ戦線に出征するが、サミュエルは戦闘中に死亡する。
帰国したトリスタンは、悲しみに暮れるスザンナを慰める。
その夜、2人は結ばれ、同じく彼女を愛していた長男のアルフレッド(アイダン・クイン)は、もう兄弟ではないと告げて街へ去った。
アルフレッドは街で事業に乗り出して成功するが、弟を救えなかった罪の意識に憔悴しきったトリスタンは、「永遠に待つわ」と言うスザンナを残して世界各地へ放浪の旅に出た。
数年後、モンタナに帰ってきたトリスタンを迎えたのは、半身付随になった父ウィリアムだった。
今は議員となったアルフレッドとスザンナは結婚し、新生活を始めていた。
トリスタンは、ネイティヴ・アメリカンとの混血で、使用人の娘であるイザベル(カリーナ・ロンバード)と結婚し、息子と娘が生まれた。
その頃、トリスタンは禁酒法に逆らうように酒の販売の商売を行っていたが、ある日、警察の待ち伏せに遇い、威嚇射撃の流れ弾でイザベルが命を落としてしまった。
寸評
モンタナを舞台にした作品では雄大な自然の光景が印象に残る。
この映画も例外でなくジョン・トールのカメラが美しい。
ジェームス・ホーナーの音楽が重なるだけで俄然雰囲気が出てくる。
映画は主人公のトリスタンが生まれて死ぬまでの物語だから、アンソニー・ホプキンスが率いるラドロー一家に起きた63年の出来事を描いていることになる。
長い時間軸をまとめるために手紙が効果的に使われ、ドラマチックな出来事を情緒的に撮りあげている。
母親はモンタナの厳しい季節を避けて別居している設定がなされていて、父親のウィリアムと母親のイザベルのやりとり、息子たちが両親に送る手紙が物語の進展を紡いでいくという手法は作品にマッチしたものとなっている。
三兄弟は仲良く育っているのだが、描かれているのはその三人が一人の女性を愛したことで、一人の女性が三人を愛したことで起きた悲劇だ。
末っ子のサミュエルがハーバード大学で学んでスザンナという婚約者を連れて帰ってくる。
サミュエルは名門大学を出たことで世界情勢にも関心が高く純真さを失っていない青年だ。
父親が別居中の妻に家庭に女性がいるのはいいと伝えているが、長男のアルフレッドも次男のトリスタンもスザンナに一目ぼれしてしまっている。
しかしスザンナはサミュエルの婚約者なので、彼らには自らの気持ちを抑える理性がある。
スザンナがアルフレッドとテニスに興じる姿は楽しそうだし、馬を乗り回す姿はトリスタンに一番似合そうだ。
その雰囲気が後半への大きな伏線となっているだろうことを感じさせる。
三人が第一次世界大戦のヨーロッパ戦線に出征していきサミュエルが戦死することで、残された兄弟に亀裂が生じ始めるのだが、亀裂の原因はスザンナの存在である。
スザンナは出征前からサミュエルよりもトリスタンに気持ちがいっていたのだろう。
トリスタンがスザンナと関係を持ったことで、兄弟の関係は崩れてしまう。
秘かに思いを寄せていた末弟の婚約者を、あっさりと一番身近な弟にさらわれたのだから、アルフレッドの居たたまれない気持ちは理解できるものがある。
アルフレッドでなくても、その家を出たくなるのは当然の気持ちだろう。
父親からサミュエルを守れと言われていたのに守れなかった後悔の念がトリスタンにあるのだが、アルフレッドはトリスタンがスザンナを得るためにサミュエルを見捨てたのではないかとの疑念を生じさせている。
もしかしたらという描き方をしてもよかったとも思うが、心底恋い焦がれるとそんな疑念を生じさせてしまうのは分からぬでもない。
30日間の禁固刑を受けているトリスタンの面会に来たスザンナに「サミュエルの死を望んでいた。あの子たちの母が私である夢を見、イザベルの死を願った」というスゴイ言葉を言わせている。
それに対応するのはアルフレッドがトリスタンに言う「私は神と人間のルールに従ってきた。お前は何事にも従わなかったが、皆はお前を愛した」という言葉であろう。
野性的なトリスタンを愛してしまったスザンナを不憫に思う。
最後は鬱積していたものを一気に吹き飛ばす展開で、物語の締めくくりとして納得させられた。