ガッツ藤本(藤本正人)のきょうのつぶやき

活動日記ほど堅くなく、日々の思いをつぶやきます

『有機野菜はウソをつく』 齋藤訓之 著

2025-01-19 16:23:54 | 本・映画など

このところ 有機 に没頭してきたので 頭を冷やすために読んでみた。

いい本だった。

筆者はこんな想像を提示する。


あなたが巨人につかまってしまう。

捕らえられたあなたを見て、巨人たちが会話する。

「丸のみしようぜ」

「いや、あいつ化学物質使ってるぜ」

「カバンの中にはビタミン剤と風邪薬が入っていた。それに化粧水とオーデコロンとリップクリーム。

虫よけスプレーと虫刺されの薬。それに水虫の薬も。どれも化学物質だ。」

「ゲェッ!」

「おそらく風呂ではシャンプーにコンディショナーやボディソープも使っているはずだよ。」

「おおっ!」

「それにあいつらの国では水に塩素が入っている。家では芳香剤と蚊取り器も使っているよ。外では車の排気ガスを浴びて・・・」

「なんてこった」

「俺たちの有機の規格には合わんよ。食えたもんじゃない」


こう言われると何とも釈然としない。 が、慣行農業を敵視し 有機を唱える人は、これに似ているところがあるのではないか?!


以下 読んだ内容と感想である。


1.化学肥料も農薬も厳格に規制されている。

そもそも化学肥料も農薬も、『沈黙の春』(1961)、『複合汚染』(1974)以降、


改正農薬取締法、食品衛生法、化学物質の審査及び製造等の帰省に関する法律などで 残留性なども厳格に規制されてきた。

(これにはEUに比べて基準が甘いとか、規制がされていないとか、異論もたくさんある。)

2.植物は栄養を無機質の形で取り入れる。

有機農業だろうと慣行農業だろうと、
植物が栄養を取り入れるのは、窒素、リン酸、カリウム(カルシウム、マグネシウム、硫黄・・・)

に代表されるように無機質で、
水に溶け(陽)イオンの形で根から吸収されるのである。

3.日本は養分を保つのに難しい 土と降雨 の環境だ。

土は、構成する4種類に分けられ、1.造岩鉱物 2.粘土鉱物 3.腐植 4.生物 からなる。


土はコロイド状になっているのが最も養分を蓄えられる。粘土の中で土壌溶液に蓄えられるのだ。

土のコロイドがカルシウム、マグネシウム、カリウムの順に蓄えているのがPhとしても良い。 phは大切で、ph6~7が最適だ。


しかし、日本は雨が多く、雨は二酸化炭素を多く溶かし込み、酸性を呈する。
酸性に傾いた雨はカルシウムやマグネシウムを流してしまい、土も酸性になってしまう。
酸性に傾くと造岩鉱物や粘土鉱物から溶け出したアルミニウムや鉄が溶けだし、それにリン酸が結合してリン酸アルミニウムやリン酸鉄になってしまい、
大切なリン酸なのに植物が吸収できない形になってしまう(リン酸の無効化)。

4.有機であろうと化学であろうと、養分を与えるには適期がある。
   これが肝心だが、これが手間がかかるのだ。

根を張るときには与えない。自分で頑張らせて四方にしっかり根を張らせる。
身体が成長するときには、窒素を与え、アミノ酸、たんぱく質を作らせ、光合成により細胞壁を作らせる。
花芽が付く直前には、カリウムとリン酸を与える。と同時に窒素は断つ。
実がなるときにはカルシウムを与える。その時は、リン酸もカリウムも断つ。

これを適切にするには 手間がかかる。 


元肥(もとごえ)は上手くしないと 植物が根を張るのをさぼり、窒素が多すぎ日照不足なら細胞壁を強くできすに徒長を起こす。
また、堆肥は単肥とちがっていろんなものが入っていて、遅効性なので、コントロールが難しい。
窒素は与えすぎると硝酸態窒素として雨に流され富栄養化し、環境を汚染する。また、食べてもおいしくない。
リン酸とカリウムも与えすぎになる傾向。
リン酸はアルミニウムと化合し、無効化するし、アルミニウムの持つ病原菌抑制の力もそいでしまう。

カリウムはどんどん吸収するが、与えすぎで野菜はどす黒くなってしまう。
化学肥料の単肥の方がコントロールしやすいのだ。登録農薬ではない特定農薬(重曹、食酢、天敵など)でも、成分が一様でなくコントロールするのが難しい。
その分 農家の技術が求められる。


5.そもそも「有機農業」は近代科学主義に対するアンチテーゼとして生まれた

そして、ナチスに迫害されたり(シュタイナー農法)、戦後はアメリカではヒッピー文化に浸透したりして、「バック トゥ ザ ネイチャー」反体制の流れとして広まった。

日本はそもそもは有機農業だった。 でも、戦後、化学肥料の即効性も知られてきた。
また、進駐軍のサラダ需要に対しては、堆肥でなく化学肥料を使う「清浄野菜」が効果を上げ、化学肥料も安くなって化学肥料はどんどん広まっていく。

しかし、一方で土が砂漠化することもわかり、畑に有機化合物をすきこみ腐植を進める農法も見直されていく。
「有機」は日本でも70年代、やはりアンチテーゼとして広まっていったが(大地を守る会・MOA農法・ヤマギシズムなど)、

80年代後半には、GATT貿易の自由化に備え、コスト削減として化学肥料と農薬を減らすことが模索された。
有機農法は農協を敵に回し、周囲からも異端視されがちだったが、
90年代、逆に、安い肉が出回って肉から野菜に差別化の流れがくる。
外食産業(すかいらーくグループ)によって「有機」の価値を見出され、「有機」「減農薬」をうたって有機野菜を価値化した。
こうやって野菜が商品化され、有機野菜が「ブランド化」されていった。

6.有機か化学かではなく、結局 姿形のいいものが良い。

虫食いは有機の勲章ではない。やたら虫に食われている野菜は、弱い作物なのだ。
有機でも駄目なものはダメ。まがい物が出回っていないか?
色が少し薄くきれいなのが良い。濃すぎるのは硝酸過多。
農薬も適切に使えば、生き物たちと共存し、環境多様性も保たれるようにできる。
旬の野菜が一番良い。

そして最後に、筆者は農業における指針というか、基準を示している。

もっとも重要なベンチマーク
1.単収を高める。
基本的な態度
1.コントロール可能なもののコントロールを放棄しない。
2.すべてをコントロールできるとは考えない。
3.人・モノ・金・時間の投入を抑えるように考える。
4.技術を高めること。新しい技術を取り入れることを放棄しない。
重要な判断基準
1.土の内容と働きを考えて、その効果を引き出すように働きかける。
2.作物全体が健康に生育し、作がそろうように働きかける。
3.作業や資材等は、環境への負荷を考慮して選択する。
要求される実践
1.作業を記録する。
2.適期作業を励行する。
3.肥料・農薬等は必要な量だけ。
4.管理には有無や数字で、意味のある指標を用いる。
5.科学的に無意味な資材を使わない。
6.法律を順守する。

藤本感想)
まさにその通りだと感じた。
特に、
栄養は無機質で摂取する。有機肥料も適宜適切に使用しないとダメ。むしろ、化学肥料の方が制御しやすい、という点や、
農業も業なのだから単収を上げなければ良いことも広まらない、ことや、
人・モノ・金・時間の投入を抑える手法が支持されるのであって、また、新たな技術を拒否するのではなく柔らかな頭で、技術を高めねばいけないことは痛感した。
そして、なんと言っても美味しそうな均整とれたものが、健康で強い植物なのだ。
自分は昔、美は対象である、という内容の本を読んだことを思い出す。クジャクの羽も線対称、美しい顔も線対称なのだそうだ。
人は均整とれた肉体、整った顔に美を感じる。 それは、生物として強いからであり、それを好むのは、よい遺伝子を残そうとする習性からだ。
そうやって、美しいと映る要素は遺伝子として広まっていく。
見た目 とはそういうものなのだ。

化学(肥料・農薬)の方が簡単で、技がいらぬし、手間がいらない。人間は省力化する宿命だ。
何と言ってもきれいに作付けされ、単収が上がることが基本だ。
それをしっかり弁えて、慣行農業を否定せず、良いところを利用しながら、それでも、土の力を大切にし、有機に寄り添って技を高めていく。
生態系も守っていく。大きな潮流は有機に傾いていると自分は確信するので。

そんな気持ちで、考えを進めていきたい。

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