平成28年12月21日(水)
十六日からキーボードの前に座る機会がなかった。そこで、この間、考えたことを記しておきたい。
(プーチン来日と対ロシア交渉)
大山鳴動して鼠一匹。
即ち、「領土」進展なし。
ただ、北方領土での日露共同経済活動合意(これがネズミ)。
十六日夕刻、神田の学士会館に向かっていたが、大手町は大渋滞だった。
その理由は、ロシアのプーチン大統領の経団連訪問に伴う交通規制だった。
その夜に見たTVの影像には、
経団連に入るプーチンに、サッと擦り寄って握手する男がいた。
ちょっと、狡いと感じた。客を迎える館(やかた)の亭主が挨拶を済ます前に、横から自ら客を迎えるが如く挨拶をするのはルール違反であろう。この男は、先日、ニューヨークでアメリカの次期大統領トランプ氏と会見してきた御仁であった。とはいえ、経団連は営利目的の企業が集う団体であるから、はしっこいのがいるのは当然で、目くじらをたてることもない。
それはともかく、
ロシアのプーチン大統領は、安倍総理と総理大臣公邸で共同記者会見をして、
直ちに経団連を訪れている。そして、サッと日本を離れた。
この行動に、プーチンの日本訪問目的が現れている。
つまり彼の訪日目的は、
領土問題を「棚に上げ」た上での経済的利得。
このプーチンを見て、
かつて日本を訪れた中共の鄧小平の行動を思い出した。
クリミア占領による経済制裁と石油の価格低迷で、
経済的に苦しいプーチンは鄧小平を見習ったなあ、と。
鄧小平は、初めて日本を訪問して、
尖閣諸島を「棚に上げ」て我が福田内閣をホッとさせ、
直ちに我が国の大企業を訪問した。確か、大阪では松下電器に来たのではないか。
これが日本を訪れた鄧小平の真の目的だった。
これを切っ掛けにして、我が国と企業は、中共へ巨額の資金と技術援助を開始した。
これによって、我が国の政治は、我が国の資金と技術で、
現在の最大の脅威である中共という軍事大国を造ることになる。
他方、安倍総理も、この度の日露の共同経済活動の合意を、
領土問題解決の大きな一歩を踏み出すことができたと評価(自画自賛)している。
この安倍総理の対露交渉における真意を、
木村汎北海道大学名誉教授が本日(二十一日)の産経新聞の「正論」に書かれている。
「関心は領土よりも露との『共栄』か」と。
また、産経新聞は、安倍総理の評価を裏付けるように、
「総理が日露防衛協力を急ぐ理由」
と題する記事を掲載し、それは、
中共の軍事的脅威に、日露連携して対処する為であるとした。
そして、その為に、この度の日露の領土問題を「棚に上げた」共同経済活動の合意
が必要であると位置付けている。
そこでまた思い出した。
日本は、かつて、同じようにロシアを頼ろうとしたことがあった、と。
即ち、我が国政府は、昭和二十年初夏、ヤルタ密約を知らず、
米軍による本土爆撃が激しさを増す中で、大東亜戦争の停戦を、
日ソ不可侵条約を結んでいるソビエトのスターリンに頼って実現しようとした。
そして、そのスターリンが日本侵攻の準備中であることを知らずに、裏切られた。
いま、また同じように、
我が国政府は、ロシアに頼って中共の軍事的脅威をしのごうとしている。
二年前にクリミアを武力併合したKGBのプーチンが、そんな甘い相手か。
そこで、言っておく。
国家の安全を確保するために、
もちろん、諸外国との連携と協調が必要である。
しかし、それは、自ら独立自尊の力を保持する国家が為しうることであって、
その努力を放棄して他国を頼るのは、
李氏朝鮮がシナやロシアの属国に堕ちて国を失った故事を見るまでもなく、
我が国家を軍事的強大国の属国に堕落させる道である。
これが、どうして
「領土問題解決の大きな一歩」であり得ようか。
その正反対だ。
国家の存続を、独力で為す体勢を整えずにロシアに頼る道は、
全ての領土を失う道であるからである。
(オスプレイ墜落事故)
十二月十三日、夜、沖縄北部の浅瀬に、
アメリカ海兵隊のオスプレイ一機が不時着し機体が大破した。
幸い乗員五名は無事である。
このオスプレイ不時着に対する地元沖縄の反応と、
その反応に引きずられるように同調する内閣・防衛省の対応はまことに惨めである。
地元沖縄から報道されてくる反応は、
この不時着を「反基地闘争」の格好の材料として利用するものである。
従って、内閣・防衛省は、断じてこれに同調してはならないのである。
防衛大臣は、
まず、不時着したオスプレイの五人の乗員の無事に安堵した旨を表明し、、
次ぎに、彼らの、身の危険を承知で、
住民のいる陸地を回避して浅瀬に不時着させた判断と行動を賞賛しなければならない。
国家は、そういう武人の道義を忘れてはならんのだ。
沖縄のアメリカ海兵隊司令官のローレンス・ニコルソン中将は、
複数機のオスプレイの洋上での通常の給油訓練中の、
機体の不良によるのではなく給油パイプ切断による事故である旨、記者会見で語り、
乗員の、市街地を避けて浅瀬に不時着した判断と行動を高く評価している。
かつて、入間基地を離陸したT33ジェット練習機に搭乗していた
航空自衛隊の中川尋史空将補と門屋義広一等空佐(共に死後昇進)は、
エンジン不調で墜落するT33から脱出せず、機体を必死に人のいない河川敷までもっていき、そこに墜落させると共に殉職した。
まるで、特攻、だった。
この中川空将補と門屋一等空佐が賞賛に値するように、
不時着したオスプレイの五人の搭乗員も、賞賛されるべきである。
これは、国家として大切なことである。
そう、ロシアのプーチンに頼って中共の軍事的脅威をしのごうとするよりも大切である。
西村眞悟の時事通信より。