平成28年6月27日(月)
イギリスの国民投票によるEUからの離脱決定に関して、
我が国内での議論に危うさを感じるので申しておきたい。
何故、危ういのか。
それは、この度の決定が、
EUに留まるのがイギリス国民の「理性」であるべきところ、
その「理性」が、
EUから離脱しようとする「感情」を抑えることができなかった結果である、
との解説が大勢を占めているからである。
即ち、
離脱賛成が過半数を占めるということは、
英国有権者が抱く反EUの「民族的感性」が、
加盟維持という「国際主義的理性」を凌駕したということ。
従って、あの英国でも、
大衆迎合的ナショナリズムが本格的に始まったことを意味する。
という解釈が大勢となっている(産経新聞「正論」平成28年6月27日)。
さらに、この産経「正論」では、
離脱の「民族的感性」は「ダークサイドの覚醒」であり、
それは、「現在世界中で醜く、不健全で無責任な、
大衆迎合的ナショナリズムが闊歩している」、その一環なのである。
このようにこの度のイギリスのEUからの離脱決定を理解してしまうと、
我が国においては、イギリスの離脱を、
我が国とは無関係な別世界のイギリス国民が
とうとう呆けて理性がなくなり、
感情に走った結果だと言うことになる。
しかし、違う。
イギリス国民のEU離脱決定は、別世界のことではなく、
実は我が国も突き付けられている同じ問題へのイギリス国民の解答なのである。
それは、グローバリゼイションへのイギリスナショナリズムの解答である。
つまり、移民問題へのイギリスの解答なのだ。
そもそも、「民族的感性」は
「国際主義的理性」によって抑止すべき
「醜い不健全で無責任なダークサイド」なのであろうか。
そうではない、
「民族的感性」こそは
国民国家を成り立たせる大切な精神的要点であり、
「国際主義的理性」こそ
民族的感性を崩壊させて国民から拠り所を奪い国民国家を解体させる
「醜い不健全で無責任なダークサイド」なのだ。
この「国際主義的理性」つまり「グローバリゼイション」によって、
「21世紀に入り世界各地で貧富の差が一層拡大した」(産経「正論」)
健全な国民国家こそ、人類の幸せを確保する要である。
健全な国民国家の崩壊は、
グローバリゼイションという弱肉強食の暴力と無秩序をもたらす温床であり、
それは、何れ世界を一人の絶対的独裁者に支配させる道である。
そもそも、20世紀までのヨーロッパにおいて、
「理性」と「感性」のどちらが人類に惨害をもたらしてきたのか。
キリスト教の原理主義即ち「理性(偽善)」がもたらした惨害、
マルクスの「理性」つまり「インターナショナリズム」がもたらした惨害、
ロベスピエールやヒトラーの「理性」がもたらした惨害を思い起こすべきだ。
狂気と偽善は、いつも「理性」の姿をして顕れていたのだ。
そして、大惨害をもたらしてきた。
これに対して、
「民族的感性」は
豊かで多様なヨーロッパの文明を生み出してきたではないか。
以上で明らかであろう。
イギリスのEU離脱決定は、
実は我々日本国民が直面している同じ問題に対するイギリス国民の
「民族的感性」に基づく解答であった。
その直面している問題とは、「移民問題」そして「TPP」である。
イギリス国民は、
民族的感性によって、移民を拒否する回答を出したのである。
我々日本国民も、
民族的感性によって、同じ回答を出すべきである。
西村眞悟の時事通信より。