平成28年12月1日(木)
昨十一月三十日、
政府は、安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」
の第五回会合を官邸で開き、「専門家16人」からの意見聴取を終了した、と報じられ、
翌十二月一日の朝刊(産経新聞)には、その「専門家16人」の
天皇陛下の譲位に関する意見が
「有識者会議のヒアリング対象者の見解」という一覧表で掲載された。
その一覧表とは、各ヒアリング対象者の天皇陛下の譲位に関する賛否の意見が、
賛成○、反対×、その他△
で示されている。
同じ十一月三十日、
五十一歳の誕生日を迎えられた秋篠宮が記者会見に応じられ、
天皇陛下の八月八日のお言葉に関して記者の質問に応えられた。
次のお考えが掲載されている。
「長い間考えてこられたことをきちんとした形で示すことができた、
これは大変良かったことだと思いますし、
様々な制限がある中で、
最大限に御自身の考えを伝えられたのではないか
と考えております。」
この秋篠宮のお言葉は、十月二十日の地久節において
皇后陛下が発表された次のお言葉に対応するものである。
「皇室の重大な決断が行われる場合、
これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々であり、
その配偶者や親族であってはならない
との思いをずっと持ち続けておりましたので、
皇太子や秋篠宮ともよく御相談の上でなされたこの度の陛下の御表明も、
謹んでこれを承りました。」
従って、秋篠宮のお言葉は、
皇后陛下が、「皇室の重大な決断が行われる場合」に「これに関わられる方々」
として挙げられた、「皇位の継承に連なる方」として
天皇陛下から御相談を受けてこられたうえでの言葉である。
さて、本稿の冒頭に改めて「有識者会議」が、
①安倍総理の「私的諮問機関」であること、
その正式名称が、
②「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」であること、
その上で、
③この有識者会議が、専門家を招いて意見をヒアリングし、
その意見が、○、×、△、で報道されたこと、
を記した理由は、
この三つの要素を総合すれば、
安倍内閣とこの「有識者会議」が、
本人達の主観的意図はともかくとして、
昭和二十二年五月三日施行された「憲法の下僕」として、
我が国の天皇と皇室を、
このGHQ憲法の枠に閉じこめるためにあることを端的に示しているからである。
そもそも、GHQ憲法の次元に、
万世一系の皇統を受け継ぐ天皇の御存在は納まるはずもない。
その「GHQ憲法」の為に日本と天皇があるのではない。
しかるに、無理にそのGHQ憲法の枠内で議論するために、
②の名称が付けられた。
馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
いや、不敬ではないか。
何故なら、
天皇陛下は、
宮中の祭祀が天皇の本質的なおつとめであることを踏まえられたうえで、
「国民のために祈り、国民によりそう」、という重要なおつとめが、
加齢の故に若いときのようにはし難くなったことに懸念を表明されたのである。
それを、「天皇の公務の負担軽減」とは何か!
御真意を曲解すること甚だしいと言わざるを得ないではないか!
有識者会議は「国民のために祈り、国民によりそう」天皇のおつとめを、
今上陛下が「天皇の負担」と思われ、
その「負担の軽減」をお望みになって、
八月八日のお言葉を発せられたとでも思っているのか!
また①、
それが総理大臣の私的諮問機関とは何か。
かつて、憲法第1条を引きあいに出し、
「天皇の地位は国民の意思に基づく」から
政権を取った自分たちの意思に天皇は従わねばならないとして、
国家元首でもない習キンヒラという男と天皇の会見を強引にセットした者がある。
安倍総理もこの事例通り、
総理大臣は、天皇の上位にあって、天皇の譲位を、
「認めてやる」か「認めない」かを決めてやる立場にあると思うのか。
私的諮問機関なら、
総理の気に入らない者を「有識者」にする必要はない。
従って、昨年の戦後七十年決議の時に招いた中西輝政京大名誉教授を、
今回「有識者」から外した理由も合点がゆく。
しかし、気に入るものだけを集める「私的諮問」なら、「私的」にやれ。
専門家を仰々しく官邸に呼び込んでするべきではない。
山口県の私邸でやれ。
さらに③、
街頭の通行人のインタビューではあるまいに、
天皇の譲位というやんごとなき高貴な地位に関する「専門家」の意見が、
○、×、△で報道されるとは恐れ入る。
○、×、△でやるなら、GHQ憲法の規定に忠実に従って、
有識者は毎日、全国各地の街頭に立って、
通行中の「主権の存する国民」にインタビューして
○、×、△の集計をしたらどうか。
また、「専門家」なら、
そんな軽薄な「私的諮問」で意見を言うのは、
「専門家」の名が廃る、と言って、以後「出演」を断ってはどうか。
これに対して、
同じ十一月三十日に明らかにされた
皇后陛下のお言葉に続く秋篠宮のお言葉は、
我が国開闢以来、万世一系百二十五代の皇統を歴代継承してきたって今日に至る
皇家の家訓に基づくものである。
即ち、ともに、
聖徳太子の十七条憲法三に曰く、承詔必謹、に帰結するお言葉である。
GHQ憲法の為に、日本があり天皇があるのではない。
万世一系の天皇を戴く我が歴史の中に流れる清流の如き、
眞の憲法に目覚めよ。
皇后陛下と秋篠宮の言われる通り。
それは、承詔必謹、!
西村眞悟の時事通信より。