32.
ギルガメシュは語った。
「舟師ウルシャナビよ、わが言葉を退けないで欲しい。
何のために、わが腕は疲れ切ったのか。何のために、わが心臓の血は失せ去るのか。わたしは自分のために、よきことを企てたのではなかったか。大地のライオン(蛇のこと)にも、わたしはよきことを行ったのに、いまや20ベールも流れはかの草を運んでしまう。
いつのことだったのだろう。深淵の溝を開けたことがあった。深淵の溝を開けたとき、わたしは道具(プックとメック)を落としてしまったのだ。あの時はエンキドゥが、わたしの代わりに道具を探しに行ってくれた。わたしが戻るべきであったのか。そして舟を岸辺に置いておくべきだったのか」泡のように浮かびくる記憶は定かではなかった。
「老いたるものが若返る草は、求めるとなお遠ざかり、人間の名前は葦原の葦のようにへし折られる。美しい若者も美しい娘も等しく死にへし折られるのだ。誰も死を見ることは出来ない。誰も死の声を聞くことは出来ない。死は怒りのなかで人間をへし折るのだ。
いつかはわれわれは家を建て、巣造りをする。いつかは兄弟たちがそれを分配してしまう。いつかは憎しみが生じ、いつかは川が氾濫し、洪水をもたらす。蜻蛉たちも川に流される。顔は太陽を見つめて生きようとしても、すぐさま何もかも失せてしまう。眠る者と死ぬ者は等しい。人々は死の姿を心に描けない。」ウトナピシュティムの語った言葉がギルガメシュの心に甦った。
ギルガメシュは語った。
「舟師ウルシャナビよ、わが言葉を退けないで欲しい。
何のために、わが腕は疲れ切ったのか。何のために、わが心臓の血は失せ去るのか。わたしは自分のために、よきことを企てたのではなかったか。大地のライオン(蛇のこと)にも、わたしはよきことを行ったのに、いまや20ベールも流れはかの草を運んでしまう。
いつのことだったのだろう。深淵の溝を開けたことがあった。深淵の溝を開けたとき、わたしは道具(プックとメック)を落としてしまったのだ。あの時はエンキドゥが、わたしの代わりに道具を探しに行ってくれた。わたしが戻るべきであったのか。そして舟を岸辺に置いておくべきだったのか」泡のように浮かびくる記憶は定かではなかった。
「老いたるものが若返る草は、求めるとなお遠ざかり、人間の名前は葦原の葦のようにへし折られる。美しい若者も美しい娘も等しく死にへし折られるのだ。誰も死を見ることは出来ない。誰も死の声を聞くことは出来ない。死は怒りのなかで人間をへし折るのだ。
いつかはわれわれは家を建て、巣造りをする。いつかは兄弟たちがそれを分配してしまう。いつかは憎しみが生じ、いつかは川が氾濫し、洪水をもたらす。蜻蛉たちも川に流される。顔は太陽を見つめて生きようとしても、すぐさま何もかも失せてしまう。眠る者と死ぬ者は等しい。人々は死の姿を心に描けない。」ウトナピシュティムの語った言葉がギルガメシュの心に甦った。