※前回の秋田の記事はこちら(32節・愛媛戦、0-2)
※前回のヴェルディの記事はこちら(33節・岡山戦、1-2)
※前回の両チームの対戦はこちら(16節・ヴェルディ 3-1 秋田)
既に今季のJ2残留を決めている秋田。
初のJ2リーグを戦い抜いたその結果は快挙といってもいいものですが、県の上層部の方にとってはそんな捉え方はされていないようであり。参考動画
将来への叱咤激励と捉えても良いかもしれませんが、そうした上昇志向により身の丈思考が抜け落ち転落への道を辿ってしまったJクラブも歴史上にあるので、それがプラスになるとは素直に思えません。
J3という「沼」ともいえるリーグを戦い、ひたむきさを前面に出したパワーサッカーに活路を見出し、念願の昇格を果たしたクラブ。
そこに信念と誇りを持っている関係者・ファンが数多いる以上、支持を得られるような発言にはどうしても思えず。
この乖離が将来に暗雲を落としやしないかと感じてしまいますが、まずは目の前の残りの試合を戦うのが第一。
秋田にとってはこれがホーム最終戦で、一年の総決算ともいうべき試合。
前半戦には無かった連敗も、折り返し後には3度作ってしまい現在2連敗中とあり、地元で良い所を見せて終わりたいという状況です。
試合開始となり、普段通りにロングパス中心で陣地を押し込み、数多獲得したスローインから攻勢を掛ける秋田。
前半5分の江口の左からのロングスローから、獲得したコーナーキックでさらにセットプレー攻勢に。
しかしモノに出来ず終わると、ヴェルディの攻撃へとターンチェンジ……したかは定かでは無いですが、自分がヴェルディの立ち回りをじっくり観察する時間に。
福村が左サイドバックという事で、「左肩上がりの最終ラインによるビルドアップかな……」と思っていましたが、この日の福村は上がりが自重気味。
前回のこのカードの時には、右サイドバックがあまりにも上がらずといった前半のヴェルディでしたが、この日はそれが左右逆となっており。
以前とは違い新井瑞希という突破力豊かな選手が左ウイングに居るため、その後方で構える体勢を取っていたようでした。
序盤はその新井瑞のドリブル突破に活路を見出していましたが、13分には逆の右サイドで組み立て。
梶川パス→小池ポストプレイ→深澤ダイレクトで裏へミドルパスというヴェルディ定番のような流れで、受けた佐藤凌我がエリア内へ進入、切り返しからシュート。
GK新井栄聡が足でのセーブで防ぐもCK攻勢へ突入、迎えた2本目の左CK、サインプレーを選択したヴェルディ。
梶川から上げられたライナーのクロスで、エリア手前やや右から森田がボレーシュートを放ち、秋田・藤山がブロックするもエリア内にこぼれ。
そこから馬場シュート(GK新井栄セーブ)→佐藤凌シュートという連撃でゴールネットを揺らし、先制に成功します。
秋田にとっては愛媛戦での間接フリーキックを彷彿とさせるような失点シーンでありました。
すぐさま反撃に入る秋田、16分に右CKを得て、クロスがクリアされてからの二次攻撃。
右サイドのかなり手前から江口が放り込み、ファーで増田の折り返しを受けた千田がエリア内左奥を突いてシュート。
GKマテウスがセーブしたものの、顔面でのものであったため痛み試合が中断。
今季から脳震盪の疑いに対して非常にナイーブになっており、ここでも無理はさせられないという判断に陥り、交代の措置が採られます。
そして思いがけぬ初出場の舞台となった長沢。
アクシデントによりクールダウンが心配された秋田ですが、25分には左サイドでパスを繋ぎ前進、三上がマイナスのカットインでエリア内に侵入してシュート。(枠外)
飲水タイムを挟んだ29分には右サイドのスローインから繋ぎ、武のクロスのクリアボールを拾った稲葉がシュート(GK長沢キャッチ)と攻め立て。
前線からのプレッシングも旺盛に行いましたが、それに対してヴェルディはロングボールを使ってかわす立ち回りを敢行。
試合が進むにつれて右SB・深澤の上がりも目立たなくなり、最終ライン4枚で幅を取り、ボールの出どころを増やす体制を作っていました。
これにより前掛かりな姿勢をひっくり返される、という危惧が過る秋田。
実際にそうなってしまうのですが、契機は36分の秋田のフリーキックから。
クリアボールを拾った梶川から受けた新井瑞が右サイドをドリブル、一旦は奪われるもプレスを掛けて秋田・江口の蹴り出しをブロックして奪い返し、そのままエリア内でGKと一対一に。
そして横パスを出してかわすと、中央で小池が合わせてシュート。
ミスキックした小池でしたが、前に飛んだため事無きを得てボールはゴールに吸い込まれ。
しまらないながらも、自己最多のシーズン17得点目を挙げた小池。
同点どころか点差を広げられてしまった秋田、その後は左サイドでの茂の突破力を押し出す攻撃を繰り広げます。
それが奏功し39分に茂のドリブルがヴェルディ・深澤の反則を生み、左サイド奥からのFKに。
キッカー江口がゴールに向かうクロスを入れると、ニアサイドで武が跳ぶも合わず、しかしこれがナチュラルなスルーの形になってそのままゴールイン。
GK長沢にとっては厳しい二択を突きつけられた格好となり、1点を返した秋田。
マテウスの治療→交代もあり、前半から長いアディショナルタイム(7分)となった最終盤。
秋田は自陣からのFKでGK新井栄がエリア内へ放り込み、武が合わせにいった所をGK長沢が跳び出して抑えにいくもこぼれ、クリアされたボールを江口がダイレクトでミドルシュート。(枠外)
秋田らしい攻撃を見せたものの、その後ヴェルディがCKで好機。
キッカー梶川のニアへのクロスを佐藤凌がスルー、こぼれ球になった所を馬場がシュート。(ブロック)
1失点目然り、こうしてセットプレーでクリアしきれず混戦を作られがちなのが今後の守備の課題のように思えました。
試合は1-2のまま前半終了、後半へ突入します。
ともに交代は無く迎えた後半。
ヴェルディは一言で言えば「かたい」という立ち回り。
前半から徐々にシフトした、DF4人がそのまま最終ラインに残る基本線は変わらず。
それはヴェルディらしくない、ビルドアップの硬さを呼び起こしていましたが、逆に守備では秋田のやり方にキッチリ対処する堅さを生んでおり。
敵陣に進入してもあまり上がらずというリスク管理を主体とし、ロングボールによるカウンターを一切許さず展開します。
こうなると主体的に相手を崩す事をしなければならない秋田、サイドから縦パス・ポストプレイを交えて前進を図るものの、好機は作り出せません。
糸口を掴みたい秋田は後半12分、最初のカードを切り齋藤→半田へと交代。
その直後にGK長沢のパスミスを武が拾い、エリア内に進入するという絶好機が訪れます。
中央で切り返してシュートした武ですが、ブロックに阻まれてモノに出来ず、以降ヴェルディのターンとなってしまいます。
可変が少ないこの日のヴェルディでしたが、それでも根底の繋ぐ能力は健在で、ボールを細かく繋いで敵陣で秋田ディフェンスを揺さぶっていき時間を進めていきます。
行き詰まり感が漂い始めた秋田、18分に再度交代し、今度は3枚替えと思い切った策に出ます。
武・三上・茂→中村・沖野・久富へと交代。(いずれも同ポジション)
20分、増田のラフなロングパスから左サイドで組み立て、交代で入った久富が奥からクロスを上げるシーンを作るもシュートは撃てず。
既に契約満了で退団が決まっている久富、その意地をチーム力に還元させんと奮起します。
それでもヴェルディ優勢の流れを変える事が出来ないまま、26分に飲水タイムへ。
ブレイク明け、ヴェルディも最初のカードを切り、新井瑞→山下へと交代。
小池が左WGに回り、右WGに入った山下。
その山下を中心とした右サイドでの攻撃に脅かされるも、反撃の流れを掴む時を待ち耐える秋田。
そして32分、左サイドの久富のドリブルから好機を作り、攻撃権を確保する事に成功。
33分、左サイドのスローインから素早くクロスを上げると、中央で半田がフリック。
ファーサイドに流れた所を中村が合わせにいきましたが、届かずと惜しいシーンが生まれます。
何とか良い流れを作った秋田、35分に最後の交代を使い、江口→高瀬。(藤山が右SB→ボランチへシフト、飯尾が左SB→右SBへシフト)
その後センターバック(千田・増田)が敵陣まで出てボールカットするなど、全員ベクトルを前へ向けてゴールを目指します。
しかしその流れも、39分のCKで逆にヴェルディのカウンターを呼んでしまった事で終焉します。
40分には福村のボール奪取から縦に速く送るヴェルディ、エリア内で山下がシュートするもGK新井栄がセーブ。
再び前掛かりの意識を突かれる恐怖が過る展開となり、それを防がんと必死で防戦に入る秋田。
しかしそれも実らず43分のヴェルディの攻撃、左サイドで小池がスルーパスを受けて中央へ流れ、パスを送ったのちエリア内での攻防に。
森田のシュート(縦パス?)がブロックされた跳ね返りを佐藤凌が落とすと、秋田・増田がクリアしにいくもボールは無情にも逆方向、つまりゴール内へ。
最後はオウンゴールとなりましたが、押し込まれた末の追加点を許してしまいました。
何とかホームで意地を見せたい秋田でしたが、ストロングポイントがヴェルディにしっかり抑え込まれているので厳しく。
AT目前で、ヴェルディは残った交代枠を使い切る3枚替え。(ンドカ・ボニフェイス、森田・小池→平・加藤・杉本)
その後もヴェルディが攻める展開を中心に進んでいき。
そして敵陣での加藤のボール奪取から、拾った山下が中央突破でエリア内へ進入、切り返しからのシュートをゴールネットに突き刺し。
ダメ押しの4点目を加えます。
結局1-4で試合終了となり、前回対戦時のスコアを上回られてしまった秋田。
内容でもセットプレーの守備、主体的な攻撃といった課題が露呈しましたが、あくまで基本線はひたむきさ。
冒頭のような意見の食い違いに惑わされず、どれだけ来季に向けて肉付けをしていくかが問われる事となるでしょう。