猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

罪の手ざわり

2014-07-04 02:41:03 | 日記
中国映画「罪の手ざわり」を観にいった。
ダーハイ(チアン・ウー)は山西省で炭鉱夫をしながら1人暮らしをしている。彼は、村の
共同所有だった炭鉱の利益が、実業家の同級生ジャオによって独占され、村長と会計係は
その口止めに賄賂をもらっているのではないかと疑い、大きな怒りを抱いている。
重慶の男チョウ(ワン・バオチャン)は出稼ぎだと妻に嘘をついて、各地で強盗を繰り返し、
家に送金しており、妻は大金を送ってくる夫を、ただの出稼ぎではないのではないかと
怪しんでいた。
シャオユー(チャオ・タオ)は、カフェで恋人と待ち合わせをしていた。2人は何年もの
付き合いになるが、彼は妻がいる身だった。「奥さんをとるなら、私と別れて。お互いに
よく考えて決めましょう」とシャオユーは言った。
縫製工場で働くシャオホイ(ルオ・ランシャン)は、よりより高給な仕事に就こうと、香港
や台湾からの客を対象にしたナイトクラブ「中華娯楽城」で働くことにした。この店で
シャオホイは列車の中で偶然乗り合わせたホステスのリェンロン(リー・モン)と出会う。
シャオホイはリェンロンに恋をし、一緒にここを出よう、と話すが、リェンロンには3歳
の子供がいて、子供を育てるためにコスプレをして客をとっているのだと告げた。

実際に起きた事件を元に、4つの物語で構成されている。とてもおもしろかった。チョウ
の話はあまり印象に残らなかったが、あとの3つは胸に残った。チョウの話は、冒頭で、
強盗に襲われたとはいえ、まだ少年にも見える若い強盗たちを、なんのためらいもなく
射殺したのにはびっくりした。この男にも妻子がいて、自分が強盗で奪った金を、妻に
送金しているのだから、ちょっと信じられない神経だ。
1番見応えがあったのはダーハイの話だ。村で賄賂が行われていると確信して、北京の
中央規律委員会宛てに告訴状を送ろうとするも、住所を知らないので送れない。ダー
ハイの怒りは増すばかりだ。
シャオユーの話は悲惨だ。彼女は風俗サウナの受け付けをしている。それなのに客に
相手をしろと執拗に迫られ、暴力を受けてしまう。彼女の顔を何度も札束で叩く男を
見ていると、私も怒りが湧いてきた。
他にもシャオユーは不倫相手の妻とその連れに暴力を受ける。妻は「人の夫を誘惑する
のがあんたの人生なの?」と罵声を浴びせられるのだ。どうして女は夫が浮気をすると
こういう方向に出るのかなあ。私はいつも不思議に思う。女は女を憎むというが、私
だったら浮気した夫に怒り、憎むと思う。大体女が誘惑してきたかわからないじゃない
か。夫の方が誘惑したかもしれないのに。かわいそうなシャオユー。
シャオホイはまだ若い、20歳そこそこに見える。働いているナイトクラブでホステスを
好きになるが、彼女には幼い子供がいた。ホステスたちはコスプレをして列になり、服
には番号札がある。これで客に指名されるのだ。まるっきり商品だ。同じ女として辛い
気持ちになった。シャオホイの純粋な気持ちは打ち砕かれる。若い人が希望を失うさま
は、見ていて悲しい。
中国の社会の片隅で、普通に生きてきた人たちが、罪に手を染める瞬間。そうなるはず
ではなかったのに。静かだが、悲しく、重たい映画だった。



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