猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

砂と霧の家

2017-03-07 04:02:26 | 日記
2003年のアメリカ映画「砂と霧の家」。
亡き父が残した海辺の一軒家に住んでいるキャシー(ジェニファー・コネリー)。夫に
去られた彼女は、仕事もなく1人ぼっちで失意の日々を送っていた。遠くに住んでい
る母にはそのことを言えず、「幸せに暮らしている」と電話で嘘をつく。そんな時、
行政の手違いにより、たった数万円の税金未払いから、家を差し押さえられてしまう。
新しく家主になったのは、政変でイランを追われ、アメリカに亡命してきたベラーニ
元大佐(ベン・キングズレー)の一家だった。新しい家で人生をやり直そうとするベラ
ーニだったが、キャシーは弁護士や親しい警官に相談して、家を取り戻そうとする。

税金未納により思い出のつまった家を差し押さえられ、住むところを失った女性と、
その家を購入し、妻子と共に人生をやりなおそうとするイラン人の元大佐。2人の対
立を描いている。キャシーは結婚生活が破綻し、夫は出ていってしまったが、そのこ
とを母や兄に言えないでいる。これがそもそもの間違いだったと思う。正直に話して
いれば、後に起きる不幸は避けられたはずだ。キャシーのところには何度も督促状が
来ていたのだが、彼女は郵便物をチェックしていなかった。そのズボラさや短気な性
格が原因で激しい争いになってしまったのだと思う。ベラーニ元大佐が「自業自得だ
」と言うシーンがあるが、キャシーはちょっと気の毒だが、間違ってはいない。
ベラーニの妻はまだアメリカでの生活に慣れておらず、いつも不安を抱えている。そ
こへキャシーが何度も「家を返して」と押しかけてくるものだから、妻の心はどんど
ん追い込まれていく。息子(高校生くらい)も父親とキャシーの対立に胸を痛め、どう
していいかわからない。ベラーニはイランでは大佐だったこともありプライドが高い
が、妻と息子は優しく善良な人たちだ。観ていてキャシーもかわいそうなところはあ
るのだが、ベラーニの妻子が気の毒でたまらなくなる。
ラストは悲劇である。誰も幸せにはならない。こんな展開になるとは、と、ちょっと
驚いた。家の取り合いをするキャシー役のジェニファー・コネリーとベラーニ役の
ベン・キングズレーの演技がとてもうまく、2人の家に固執する様子がよく伝わって
くる。あまり期待しないで観たのだが、意外におもしろかった。悲しい物語である。




コメント (3)
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