ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

SNS-少女たちの10日間ー

2021-04-28 23:54:48 | あ行

衝撃的だけど、議論も呼びそう。

 

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「SNS-少女たちの10日間ー」69点★★★☆

 

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チェコ発のドキュメンタリー。

 

事の発端は2017年、

ヴィート・クルサーク監督が

通信会社から「チェコのインターネット上で起こっている問題を動画で伝えてほしい」という

依頼を受けたことだそう。

 

クルサーク氏は同僚のバーラ・ハルポヴァー監督に協力を求め

「12歳の少女」を偽ったSNSアカウントを作り

何が起こるかを撮影した。

そこで起こった衝撃の事態を

「もっと広く伝えるべきだ」――と考え、

二人の監督はこの映画をスタートさせたのです。

 

で、本作は

両監督が主演女優をオーディションするところから始まります。

 

監督たちが求めているのは「12歳にみえる大人の女優」。

何が起きるかを想定し、その衝撃を多少受け止められる

“成人女性”を選んでいるんですね。

 

で、3人の女性がオーディションで選ばれる。

監督たちは、彼女らのキュートでパステルな「ニセの子ども部屋」をスタジオに作り、

「12歳の少女」として3人のアカウントを作り

その後に

何が起こるかを、記録していくんです。

 

で、何が起こるかというと

あっという間に成人男性たちが「12歳の少女」にアクセスしてきて

ビデオセックスを要求したり

ポルノ画像を送りつけてきたり――と

はなはだ、直視に耐えがたいことが起こる。

 

 

現場には精神科医や弁護士も待機し、サポート体制も万全で

テーマも訴えも、とても重要。

 

でも、正直に言って、見ててかなり胸が悪くなるし

もし自分が10代の子を持つ親だったら――と思うと

直視できる確信がないほど、

恐ろしいです。

 

それに、これはあくまでも

しくまれた「罠」なんですよね。

 

無垢な少女に群がるオオカミを仕留める――という大義名分はあれど

「12歳の少女」を演じた女優たちに

相手と会話させ、さらにフェイクの写真を公開したりするのって

どこまでセーフなんだろうか――

倫理面からも、若干のモヤモヤはある。

 

本国でも賛否あったそうですが

それでも同時に、SNSの危険性をあぶり出すという

監督たちの意図も重要だと感じる。

 

実際、この映画で刑事手続きにつながった案件もあるそうで

大きな意味はあると思います。

 

それに冒頭のオーディション場面で

面談する女性たち誰もが、この映画に参加しようと思った理由を

「自分も被害にあったから」「友人が被害にあった」と話すんですよね。

それを踏まえて、この現実を直視しなければいけない、と

強く思いもした。

 

見た人がそれぞれに考え、意見を発してほしい映画であります。

 

★4/23(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

※公開情報は各劇場のホームページなどをご参照ください。

「SNS-少女たちの10日間ー」公式サイト

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