犀のように歩め

この言葉は鶴見俊輔さんに教えられました。自分の角を道標とする犀のように自分自身に対して灯火となれ、という意味です。

福岡市民大茶会に行く

2023-11-03 16:03:19 | 日記

福岡護国神社で開催された福岡市民大茶会に行きました。社中の人たちと一緒に回るのはコロナ禍から3年ぶりになります。

表千家、裏千家、武者小路の三千家、遠州流、南坊流など九つの流派が護国神社や隣接する大濠公園に一堂に会した、大規模な茶会で、別々のテントに設えられた茶席を巡るのです。昭和41年に各流派合同の野点茶会を開催したのを皮切りに、福岡市茶道文化連盟が組織化され、今日の福岡市民大茶会につながりました。コロナ禍による2回の休止をはさんで、今年で55回の区切りの会に当たるとのことで、主催者の継続の志しには頭が下がります。

この茶会の最大の魅力は、普通は見られない他流派の点前や道具が見られることです。特に今年は、わが社中が茶席を受け持つこともないので、ふらっと文化祭に出かける気分で参加できました。茶道の古伝書「南方録」を編纂した福岡藩士、立花実山ゆかりの「南坊流」は、いつもながら男性の茶人の多い、武家の茶道の雰囲気を醸し出しているのが印象的です。稽古場の雰囲気もやはり我々のものとは違うのだろうか、などと考えました。

二つの茶席でお茶をいただいて社中の人たちと別れたあと、護国神社末社の稲荷神社を抜け、六本松1丁目の特徴のある住宅街に出ました。ここは幾筋もの路地を挟んで古い住宅が立ち並んでおり、昭和レトロな雰囲気を醸し出しています。遠回りしてこの街に寄ったのは、この街の古民家を改装した特徴のある店々があるからです。


包装紙専門店、カフェ、たこ焼き屋、キモノブティック、猫のもの限定の本屋「書肆吾輩堂」など、店舗を経営する多くが若者で、路地に新しい息吹が満ちているように感じます。

このあたりは、戦後引揚者のための住宅地として、国と護国神社が土地を提供した地域だそうです。そういうわけで、今でもこの一帯は護国神社が所有していて、路地のある街並みがそのまま残っていると聞きました。グーグルマップでこの地域を見ると、護国神社と福大大濠高校の広大な敷地に浮かぶ「浮島」のような印象を受けます。

異なるものが、異なるままに隣接し、影響を与え合うこと。市民大茶会も六本松の路地裏商店も、古いものが、かえって新しくあるための知恵を育んでいるように思いました。


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