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映画・演劇のレビュー

『湖の女たち』

2024-05-17 18:17:00 | 映画

大森立嗣が監督・脚本を手がけ、吉田修一の作品に挑む。刑事を福士蒼汰、介護士を松本まりか。W主演で演じたサスペンス映画なのだが、何を描きたかったのか、よくわからないままストーリーは進み戸惑うばかり。福士は浅野忠信とのコンビで捜査に当たるが、浅野が暴力的で取り調べも酷い。いくらなんでも容疑者にあんな対応するかな。

さらには福士と松本のいびつな関係もリアリティがないだけでなく、理解不能。あんな変態的な恋愛が果たして必要だったのか。50人が亡くなったにも関わらず闇に葬られた過去の薬害事件、さらには戦時中の631部隊の話が絡んできて、さらには地元の中学生が犯人だったとかいうオチ。あんまりじゃないか? 意外な展開なんていうのを踏み越えている。介護施設での100歳の老人の殺人というとっかかりはまるで生かされていないのも気になる。原作は面白かった気がする(忘れている!)けど、なんでこんな映画になったんだろうか。

見ながら、不快感しか感じない。苦痛な2時間21分だった。見終えた時、どっと疲れが襲う。嫌な映画だった。だけど何故か、心に沁みてくる。あぁ嫌なものを見てしまったな、という気分。見なければよかった,という思いと、でも凄いものを見てしまったという満足感。大森監督は敢えてこの粘りつくような映画を作ったのだ。

嫌な奴ばかりが出てくる。嫌な結末が待ち受ける。カタルシスはゼロ。介護施設の老人を殺す女子中学生は、「自分は、あんなになってまで生きていたくないから、さっさと死ぬ」と平然と言う。彼女にビンタする松木まりかは、正義感からではなく本能的に手を挙げただけ。ハッとしてすぐに謝罪するが。

昨年の『月』に続く介護施設での殺人を描く映画である。これは生理的不快感を助長する場面の連続に耐えてラストまで見るべき映画でした。



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