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参議院審議を不要とした自・公両党と維新の会

2017-06-29 | Weblog
シリーズ平成の本音―参議院審議を不要とした自・公両党と維新の会
 6月16日、与党自民・公明両党は、参議院法務委でのテロ等準備罪法案の審議を尽くさないまま、‘中間報告’を参院本会議に提出し、そのまま採決した。同法案は、法務委での18時間弱という生煮えの審議のまま本会議で自・公両党と自民党予備軍ともなっている日本維新の会などの多数で採択したが、‘中間報告’での採択であり、審議が尽くされていないことは明白だ。
 同法案は、暴力団などの組織犯罪を撲滅する上で有用と見られるものの、277にも及ぶ準備的行為で国民を罪人に出来る法律であるだけに、慎重な審議が求められた。しかし金田法相は、‘一般人には適用されない’という当たり前のことを繰り返すのみで、具体的な質問には答えられず、事務方に答弁させる始末であり、担当大臣が理解できない法律を国民が理解できるはずがない。
首相自体も‘一般人には適用されない’との答弁を繰り返していたが、これは、‘一般人’が‘何もしなければ’ということであり、当然のことを言っているに過ぎず、誤った印象を与える不誠実な答弁でしかない。刑事局長は、‘一般人’がこの法律に触れるような行為をすれば対象になる旨答弁をしている。それにも拘らず、法相はもとより、首相さへも法律の基本的な解釈を理解せず、国民に安心感を与えた上、審議も尽くさず法案を強行採決するという乱暴且つ不誠実な対応をしている。
 今回の与党の対応から、次のことが言えそうだ。
 1、参議院は税金の無駄、廃止すべし
 与党自民・公明両党と日本維新の会が、参議院の審議を不要としたので、参議院は廃止しても良いのではないか。税金の無駄だ。
 そもそも現在の参議院は、衆議院のクローン組織、或いはコピーに近い存在であり、その必要性が疑われていた。それを与党自体が追認したに等しい。
 2、個性を失い、自分の意見を持たない議員―政党助成金は廃止すべし
 テロ等準備罪法は、本来テロではなく、組織暴力活動を防止する目的のもの
であり、この点でも疑義があるが、国民の6、7割が良く理解できない、十分な審議が必要としている中で審議を中断し、‘中間報告’で本会議採決を強行したところであり、それに自・公両党や日本維新の会の議員が一人も棄権も反対もしていないのは、独裁政党のようで非常に奇異だ。国民の疑問に答えようとする議員が出ても良いところだ。
 ‘党議拘束’に盲従するというところであろう。党の一体性を保つと言えば聞こえは良いが、議員の個性喪失、独自性の放棄でしかない。
 公明党は、支持母体が創価学会で、同じ宗教を信じるということであるの
で仕方がないのかもしれない。しかし国家緊急事態では、あらゆる形で政権側が権力強化を図り、公明党や創価学会関係者も同法の対象として捜査の対象になる可能性もあるだろうに。日本維新の会に至っては、自民党予備軍のようで、国政には意味がない政党になっている。日本に‘都’は一つで良い。大阪は大阪の有権者が決めることだろうが、東京には維新の会は不要だ。
 ‘党議拘束’が強く、議員の個性が無くなっているのは、国庫から各党に
政党助成金が出され、それを党が所属議員に給付していることが大きいように見える。議員は党から回された国民の税金をほとんど自由に使える。そもそも、有権者の4割前後が無党派層であるので、税金から党に助成金を出すのは筋が違うのではないか。政党助成金を廃止し、出すのであれば、政党を問わず、国が議員(候補者)に直接支給し、報告義務を課すべきであろう。
 3、現政権での憲法改正は不適切
 森友学園問題でも、加計学園問題でも、夫人を含めて国民の背後でいろいろ画策しているにも拘らず、それを隠そうとするばかりか、100万円の寄付はしていない、加計学園側には何もしていないなど、事実に反することを主張し、挙句の果てに関係省庁に対しつじつまを合わせるよう嘘や資料隠しをさせる結果になっている。その上、それを担当政府職員の勝手な行動によるとして片付けようとするなど、行政の適正管理能力や内部統制能力を欠くこと甚だしい。
 このままでは、官僚が嘘をついたり、資料を隠蔽、廃棄したりすることが容認されるという重大な結果を招きかねない。
 更に与党両党と日本維新の会は、国民が理解していない法案を通すために参議院を切り捨てた。まるで独裁政党のようだ。
 このような政権、政党の下での憲法改正は、独裁的で歪んだ結果になる恐れがあるので適当ではなさそうだ。そもそもこの政権は、選挙の際、憲法改正につき主要な改正項目を含む提案を国民に対して行って選ばれてはいないので、憲法改正を行うための国民からの信託を受けてはいない。(2017.6.19.)
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危険を呼び込む安倍政権の安全保障姿勢

2017-06-29 | Weblog
平成の本音―危険を呼び込む安倍政権の安全保障姿勢
 世界各地でイスラム過激派によるテロが横行し、東アジアでは北朝鮮による核、ミサイル開発が進み、南沙島の施設構築など中国の海洋進出が進んでいる中、安倍政権は新たな安保法制の下で米国との同盟関係を拡大強化し、安全保障面での積極的な姿勢を鮮明にしている。
 このような世界や地域情勢の不安定な状況については多くの日本国民も認識しており、現政権の姿勢を好ましく受け止める向きもある。
 しかし安全保障面での強硬姿勢を世界に発信すればするほど、これら諸国やグループは反発し、敵対姿勢をより鮮明にし、逆に日本に対する危険が増大する恐れも指摘されているところ、最近北朝鮮やロシアから次のような反応が示されており、歴史や情勢を見極めた熟慮ある対応が必要になっている。
1、北朝鮮による日本全域の標的化
北朝鮮が核とミサイル開発に邁進し、国連を含む国際社会からの批判が高まる中、安倍政権は、本年北朝鮮のミサイル発射が行われるたびに‘容認できない。現在は対話の時期ではなく、圧力を掛けるべき’との姿勢を声高に表明している。
 5月26、27日にイタリアで開催された主要先進国首脳会議(G-7)において北朝鮮問題が取り上げられ、同首相より同様の発言がなされたことが報道された。これを受けて、5月29日、北朝鮮外務省は声明を発し、安倍首相がサミットにおいて、‘北朝鮮に対話ではなく、圧力を掛ける時だ’として、‘安保理制裁決議の厳格な実施と新たな決議の採択を唱えた’旨非難し、また日本の官房長官他の関係閣僚が‘個別の制裁’を画策しているとした。
そして同声明の結びにおいて、‘日本の米軍基地のみが北朝鮮戦略部隊の標的であるが、もし日本が現実を正しく理解せず、米国に追従して北朝鮮に敵対するのであれば、標的は変更されるだろう’と警告した。この声明において、北朝鮮は、‘同国の核戦力の推進は、米国の核戦争に向けてエスカレートしている動きに終止符を打つための自衛の権利の行使である’とし、核開発の目的は米国への対抗のためであることを明確にする一方、‘日本は、この北朝鮮の自衛行為に脅威や挑発とのレッテルを貼っている’として非難している。
 北朝鮮の核、ミサイル開発は、歴史的に朝鮮戦争が休戦(1953年7月)となり、休戦協定の下で米・韓両国と北朝鮮の対峙関係の中で行われているもので、日本が第一義的な標的ではないし、ましてや朝鮮戦争の当事国でもない。北朝鮮側もその点は理解して対応していることは十分留意する必要があろう。
 このような中で、日本は日本海に展開された米国の原子力空母2隻(カール・ビンソン及びロナルド・レーガン)と日本の海上自衛隊の護衛艦、航空自衛隊の戦闘機による日米共同訓練が6月1日、日本海の北陸沖で実施された。
保守系紙は、防衛省の発表に基づき、これを‘北朝鮮の挑発行為をけん制’との見出しで、写真入りで報じ、TVニュースでも画像と共に報じた。
 北朝鮮の核、ミサイル開発は、日本としても見逃すことが出来ない。空と海を中心とした防衛策の強化が必要だ。他方、‘北朝鮮の挑発行為をけん制’というのは良いが、北朝鮮にとっては、北朝鮮の面前の日本海で米空母が日本と共同訓練すれば、それは‘米・日による北への挑発行動’と受け止められ、日本にもその敵意が向けられる恐れがある。ましてや、朝鮮戦争後、米・韓両国は北朝鮮と‘休戦’しているだけで軍事対立は終結していない。米国が北の核、ミサイルの開発、実用化に直面し、日本海に空母を派遣することは米国の判断であろうが、そのような歴史的、軍事的な状況を十分に認識せず、北朝鮮の面前の日本海で日本が米国の空母と共同訓練することは、災いや危険を日本に引き込む結果となる恐れがあり、見識が欠け、熟慮に欠ける行動と言えないだろうか。日米の共同訓練が必要であれば、太平洋等で行えば良く、敢えて北からの災いや危険を呼び込み、日本国民を危険に晒す必要はないであろう。朝鮮戦争再燃の場合には、日本は自国の防衛は別として、後方支援を中心に行うことが望ましい。
もっとも軍事・安保専門家や新保守グループが、脅威や危機を煽って日本の軍事強国化を図ることも考えられるが、それは日本にとって決して安全を確保する道ではないと言えないだろうか。

 2、北方領土返還は前のめりの日米同盟強化で遠のく
6月1日、ロシアのプーチン大統領は、サンクトペテルブルク市で、各国の通信社代表等と会見した際、北方領土問題について、‘これら諸島が日本の主権下になれば、米軍が展開される可能性がある。ロシアにとっては容認出来ない’と述べ、安全保障上の懸念を表明した。
同大統領は、また、ロシアが北方領土において軍備を増強していることへの質問に答え、米軍が韓国に配備したミサイル防衛システム(THAAD)など、‘同地域で起きていること’への対応とした上で、‘ロシアにとって脅威を抑えるにはこれら諸島は最適の場所’と述べたと伝えられている。
ロシアが、ウラジオストックに繋がる日本海で先に実施された米国原子力空母と日本の海自、空自との共同訓練をどのように見ていたかは想像に難くない。日米関係を強化、拡大して行くことは良いが、沖縄普天間基地の辺野古への移設が実体的に米海兵隊基地を強化、拡大する形で進められていることや軍事・防衛分野での一連の日米連携の強化を強調すればするほど、北方領土の返還は遠のくことが懸念される。

3、イスラム過激派、イスラム国の‘聖戦’のターゲットとされた日本
 安倍政権は、日米同盟の強化を図りながら、国際テロ問題を含め国際場裏での連携を保ちつつ‘積極的平和主義’を推進するとの姿勢を表明している。
その流れの中で、安倍首相は、2015年1月、エジプト等の中東諸国を訪問中であったが、最初の訪問国エジプトにおいて演説し、「人道支援、インフラ整備など非軍事の分野での支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、IS(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する身代金要求と殺害予告が行われ、その後2人の日本人は殺害された。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のために連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進する中で、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 中東の情勢は、歴史的にキリスト教、ユダヤ教、イスラム教という3つの宗教と部族集団が絡み、そしてフランス、イギリスの植民地支配を経て今日に至っており、複雑な歴史的背景がある。古くはキリスト教諸国による十字軍とこれに対抗するイスラム教徒による聖戦(ジハード)が対立し、戦後には長期化するイスラエル、パレスチナ間の中東紛争を抱えており、これがイスラム過激派アルカイーダのテロ活動の遠因となっている。日本は、歴史的に中近東においてキリスト教とイスラム教との対立に巻き込まれたこともなく、戦火を交えたこともない。そのような歴史的な関係をも踏まえこの地域との関係を考えるべきであろう。

 現在、自民、公明連立政権が進めている安全保障政策は、日本の安全と平和のためと声高に言われているが、一定の効果はあるものの一面的であり、逆に危険を呼び込み、国民の危険を増大させる結果となっているので、歴史的な地域情勢などを総合的に考慮した姿勢が望まれる。日米関係の強化、拡大は今後とも日本外交の軸となろうが、軍事同盟化の強化、拡大を図るのであれば、核兵器大国米国の世界戦略と連携することより、危険も増大することを国民に十分説明の上進めることが望まれる。核兵器禁止条約に向けた国連決議において、日本が棄権するなら兎も角、米国の核抑止に依存しているため‘反対’票を投じたことも疑問とする向きもある。(2017.6.10.)(All Rights Reserved.)
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特区制度は特定人のための得区か!?

2017-06-29 | Weblog
特区制度は特定人のための得区か!?
 国家戦略特区制度を利用して、今治市に獣医学部を新設することについて、推進母体である加計学園の加計理事長が安倍首相と緊密な関係にある一方、国家戦略特区諮問会議の議長が首相であることから、首相が直接、間接にどのように関与しているかが問題視されている。
 特区制度は、規制緩和による経済活動の活性化の一手段として、全般的な規制は維持しながら、地区や分野などを限定して規制の対象から外す制度である。一見規制緩和に繋がりそうだが、行政上は規制の細分化、複雑化であり、審査手続きが細分化される。更に、組織面でも国家戦略特区諮問会議を新設し、内閣府が省庁横断的に事務を所掌するなど、屋上屋を重ね、複雑化しており、実体的には規制の撤廃、緩和からは程遠い制度となっている。
 今治市における加計学園による獣医学部の新設については、まず現在以上の獣医学部の新設が必要か否かであるが、京都府の京都産業大学からも提案がなされていたので、何故今治市なのか、何故加計学園なのかが問われなくてはならない。
 この問題をめぐり、同学園の理事長が安倍首相と大学時代からの友人であり、昭恵夫人も同学園の名誉園長であった他、現在でもゴルフや会食等で頻繁に交流している一方、「総理のご意向」とか「官邸の最高レベルの言ったこと」などと書かれた文科省のものと思われる文書が公表されたことから、国会の内外で問題視されている。これに対し、安倍総理大臣は「彼からこの問題について、頼まれたことはなく、働きかけていない」などと否定しているほか、菅官房長官も文書について、「怪文書のような文書だ」と述べ、また文書の存在の調査を求められた文科大臣が、‘その存在は確認出来なかった’など、働き掛けの事実や関係文書等の存在自体を否定し続けている。
 更にこの新設については、内閣府の担当審議官や和泉首相補佐官が関与している他、文科省出身の木曽氏が内閣官房参与として関与していたことが明らかになっている。木曽氏は、加計学園の理事である上、関連の千葉科学大学の学長であったことが明らかになっており、この問題への関与だけでなく、利害関係団体との実質的な関係者でありながら内閣官房参与を務めていたことから、‘利害の衝突’が存在する人物であるので、任命責任も問われるところだ。
 加計学園による獣医学部の新設については、余りにも首相サイドとの関係性が深い。それ自体に問題があるわけでは必ずしもないが、公務に就いている者が、新聞社を含め利害関係者と頻繁にゴルフをしたり、会食することは何かと疑惑を呼ぶので好ましくない。公務員の倫理規定ではこれを禁じており、首相や閣僚についても任期中は適用されるのであろう。
 また官邸首脳や自・公両党や一部保守系紙は、前川前文科省事務次官は、同省の天下り問題で辞任した人だとか、出会い系バーに出入りしていた人であるなどと言及し、同人の信頼性を疑わせる個人攻撃を行っているが、これは‘別件’で同人の発言を疑わせる‘印象操作’であり、森友学園問題同様、フェアーでないし、そのような批判をする資格もなさそうだ。首相サイドは、明らかに獣医学部の新設を強力に推進して来ており、‘関与はしていない’‘圧力を掛けていない’というのは嘘であろう。‘記録がない、文書等もない’も嘘であろう。森友学園問題同様だ。権力側が嘘や資料、記録の隠ぺいをしていながら、一方を別件で批判するのは如何なものであろうか。天下り問題にしても、文科省だけではない。若干関連団体や補助金団体への天下りは若干改善しているようだが、現在でもほとんどの経済官庁OB等が、企業等の顧問や社外取締役等として多数天下っている。その他省庁の天下り調査の結果はどうなっているのだろうか。
 しかし最大の問題は、首相や官房長官はじめ官邸、内閣府、文科省など、特区や教育行政関係者が、獣医学部の新設について、記録がない、文書が残っていない、記憶がないなどとこぞって関与していたことを否定していることだ。もし加計学園による獣医学部を今治市に新設することが必要で、京都産業大学の提案より適切であるというのであれば、その理由を具体的に説明すればよいことであろう。何故堂々と国民に対しその必要性、適切性を訴えることができないのか。何故、関与を否定しながら、国民の背後で事を進めようとするのか。森友学園の問題と類似する。今回の場合は、国家戦略として進めようとする政策において、特定団体、個人に便宜、利益を与えること、いわゆるえこひいきに直接、間接関与し、或いは推進しようとしていたものであり、公正、公平な行政の上でより責任が重い。
 関与を否定すればするほど、加計学園による獣医学部の新設が適切でなく、恣意的な筋わる案件であるとの印象を与える。
 安保法制の時に官邸が法制局長官人事に介入するなど、安倍政権下で官邸の官僚幹部への人事権が強化されている。これ自体は政権交代を前提とすると合理的な基準や範囲内の下で実施されることは必要であろう。しかし恣意的な人事介入が横行するようになると、官僚は首相、官房長官、大臣に物が言えなくなり、専制的な恐怖政治のようになる恐れがあり、物が言えなくなる。現状においては、首相や官房長官の発言や意向に沿わないことについては、記憶や記録にないと言い、また記録データや文書を廃棄したり隠したりするような行動が、今回の文科省や内閣府だけではなく、防衛省や財務省でも起こっており、非常に不健全で危険な状態にあると言えないだろうか。政策を歪めるだけでなく、真実を歪め、虚偽が正当化されようとしている。行政組織の統治能力、内部統制の欠如も甚だしい。
 最近、世界でマスコミ力も低下していると言われている。世論調査も当たらない。日本もそうなのであろう。マスコミが商業化、既成化し、報道やコメント、評論等がステレオタイプ化しているようだ。主要報道関係の論説クラス、評論家の多くは、官邸から食事等に誘われることを待ち望んでいるという話もある。だから呼ばれるような発言をし、記事を載せる。政府の考え方をいち早く報道することに追われ、それに対する疑問や多様な意見が見られない。このように政府内でもマスコミでも、発言がし難くなり、抑制され始めると、その傾向が加速し独裁化が進んで行くのではないだろうか。
 国家戦略特区は、アベノミクスの中でほとんど飛んでいない‘第3の矢’の規制緩和のいわば目玉として打ち出されたが、今日までほとんど成果が無いばかりか、規制緩和ではなく、規制の更なる細分化であり、実体的には規制の強化で、政権中枢に近い特定の団体、個人へのえこひいきや利益の供与になり易い制度となっていることが明らかになっていると言えそうだ。特区ではなく、得区だ。一定の条件で獣医学部の新設を認めるということでは‘規制緩和’だが、‘広域的に存在しないこと’という新たな条件をつけて規制を強化し、首相に近い加計学園による新設を認めている。
 確かに規制緩和には、強固な利益団体が存在し、それが保守層の支持基盤になっていることが多いので、その岩盤を打破することは困難である。それを打破するためには強いリーダーシップが必要であるが、それがえこひいき、情実のためであれば問題だ。
 特区制度などは廃止し、原則自由化し、もっと分かり易く、誰にでも公平に適用されるようにすべきであろう。原則規制ではなく、原則自由化として規制緩和を促進すべきであろう。原則自由化し、その上で弊害がある領域についてのみ規制すると共に、違反者には相当額の罰金を科すこととすれば、誰にでも公平で分かり易く、また罰金による違反者の抑止が出来るであろう。因みに、経済犯については、高額の罰金を科し、実刑は極めて悪質な事案以外は無くしてもよいのであろう。実刑判決を課しても、利益が残るようでは経済犯は無くならない。(2017.6. 2.)
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対北朝鮮の米・韓‘首斬り作戦’はグロテスクな軍事演習!

2017-06-29 | Weblog
 シリーズ平成の本音ー対北朝鮮の米・韓‘首斬り作戦’はグロテスクな軍事演習!
 4月5日早朝、北朝鮮は2月、3月に続いてミサイル発射実験を行った。これに対し、ほとんどのマスコミは、北朝鮮の‘挑発行為’として非難した。また政府は、安全保障への脅威であり、また国連安保理決議に反する行為であり、‘断じて容認出来ない’として非難した。
 北朝鮮の今回のミサイル実験だけを取ってみればその通りだ。
 しかし他方で、米韓合同軍は、2016年から3月頃に北朝鮮の鼻先で「首斬り作戦(Beheading Operation)」と称する軍事演習を約1か月間実施しており、2017年も3月初旬より「首斬り作戦」を実施している。この軍事演習は毎年恒例のものではあるが、北朝鮮はこの米韓合同軍事演習に対し最大級の反発を繰り返してきている。米韓合同軍の北朝鮮の鼻先での軍事演習が北朝鮮への‘挑発’と映り、反発するのは不思議はない。その上2016年からの軍事演習の名称が北朝鮮の首脳に向けた「首斬り作戦(Beheading Operation)」であるので、この挑発に対し北朝鮮として強く反発して来ることは米韓両国にとっても想定内と見て良いであろう。
 南北朝鮮は現在も「休戦状態」であり戦争は終結していないので、どちらが先に挑発したかは直ちには言えないが、軍事的必要性は兎も角、「首斬り作戦(Beheading Operation)」とは何ともグロテスクで、野蛮な呼称ではなかろうか。北朝鮮でなくても反発するのは当然であると共に、国際社会がこのようなグロテスクで野蛮な軍事訓練や軍事行動を容認して良いものであろうか。カーボウイ時代のお尋ね者ハンテイングでもあるまいし、現在の国際社会において、特定国家によるこのような単独行動が許されて良いというものでもない。
 他方南北朝鮮間では戦争は終結していないので、北朝鮮の核・ミサイル開発が「休戦状態」を超える水準に達しているとの判断から、米国が北朝鮮の核・ミサイルを中心とする軍事拠点を攻撃することはあり得る。
 しかしそのための大きなハードルは、韓国の政治不安であろう。米国の北朝鮮攻撃には韓国の同意が不可欠だ。近く行われる韓国の大統領選挙で親北系の「共に民主党」の文候補が当選すれば北朝鮮攻撃は難しくなるという判断から、黄大統領代行の同意を取り付けて敢行できないことはないが、北朝鮮への軍事攻撃を行えば第2次朝鮮戦争に発展する可能性があり、戦争は長引くと予想されるので、次期大統領が選出される前の軍事攻撃は事実上難しそうだ。とすると軍事攻撃以外の強硬策となると予想される。
 ところで日本政府が‘断じて容認できない’としているが、それならば何をするのか、出来るのか。現自・公連立政権となって以来、核実験やミサイル実験のたびに、‘容認できない’旨繰り返してきているが、実態上有効な措置は講じられていない。せいぜい非難、抗議しているだけである。拉致者の奪還については何も結果を出せていない。被害者家族に言葉だけで期待を持たせているようだが、気の毒で仕方がない。(2017.4.6.)
(All Rights Reserved.)
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テロ等準備罪法案の採択は疑問

2017-06-29 | Weblog
シリーズ平成の本音―テロ等準備罪法案の採択は疑問
 テロ等の準備段階での行動を準備罪として罰することの出来るテロ等準備罪法案の審議が進んでおり、5月にも委員会採択となるとも伝えられている。この法案は、事実上‘共謀罪’を罰することが出来るようにするもので、277もの多数の犯罪が対象になる。‘共謀罪’については、官憲により国民活動が広範な悪影響を与えられるとして、過去に廃案になった法案である。
 この法案については、野党のみならず日本弁護士連合会なども反対しているが、次の理由で法案成立には反対である。
 同法案は、このような中で5月23日、衆議院において自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で採択された。国民に277もの多数の事項で嫌疑をかけ、場合により罪人とすることの出来るような法律を、担当の法相でさえ良く説明ができない状態でこのような形で成立させて良いものであろうか。
1、所管の法務大臣が答弁出来ない法案採択は不適切!
この法案の国会審議において、担当の金田法相が適切な答弁が出来ず、答弁を法務省の
担当局長が行っている。副大臣が答弁することもあるようだが、法相の答弁と異なることがあるようだ。
 法案の細部につき事務当局が説明することは良いが、基本的な内容につき担当大臣が答えられないような法律を、一般国民が理解出来るはずがない。そもそも277にも及ぶ準備行為が犯罪の対象となるが、これだけ対象が広がれば警察当局はいろいろな理由を付けてどんな準備行為でも捜査対象とすることが出来るだろう。
 いずれにしても法相を含め、国民が理解出来ないような法案は成立させるべきではないだろう。
2、行政当局任せは官僚独裁や恐怖政治を招く!
この法案が成立すると、その実施は警察・検察当局に事実上任せられることになるが、
現在の官僚組織は全幅の信頼を置くことは難しく、任せることは望ましくない。
 最近でも、防衛省が南スーダンPKO活動について‘日報’はないと虚偽説明をした上、報告資料を廃棄したなどとして国会、国民に真実を伝えようとしなかった。
 また森友学園への国有地の破格の安値の売却を巡り、‘適正に売却した’とし、首相や首相夫人の意向を‘忖度’していないとした上、記録はない、廃棄したなどとして、破格の安値の売却の具体的な理由を説明していない。国家、国民の財産のずさん且つ恣意的な管理であり、国民に損害を与えている。
 警察庁も嘗て、捜査費(機密費)を飲食に使うなどの不適正な使用につき疑問が呈された際、会計資料は廃棄したとして、国会、国民に対し誠意ある説明を行わなかった経緯がある。
 更に問題は、このような行政当局の不適正な行動や公文書、公的資料の保管義務違反に対し、現政権が何も有効な措置を取っておらず、内閣が「行政各部を総理する」とは言い難い状態のように見え、内閣による内部統制に疑問がある。このような状況で、警察、検察当局に対し、広範にわたる準備・共謀活動に対し捜査権を与えることは、健全な言論、集会の自由などを抑制する恐れがあり、いわば官僚独裁や恐怖政治を招く可能性がある。
 3、国連越境組織犯罪防止条約批准のためにこの法律は不可欠か?
 日弁連は、この法律が無くても国連越境組織犯罪防止条約は批准できるとしている。また日本は、多くの欧米諸国とは異なり移民人口が少ないので、欧米諸国と同じような法律は必要ないと思われる。同条約批准に新たな法律が必要かにつきもう再検討すべきであろう。新たな条約が必要としても、国際組織犯罪に絞った簡潔で分かり易い法律にすべきであろう。(2017.4.27.)
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森友学園という国民洗脳モンスター!?

2017-06-29 | Weblog
平成の本音―森友学園という国民洗脳モンスター!?
 森友学園(籠池理事長)に国有地(大阪府豊中市)を破格の安値で払い下げた問題が混迷を深め、日本の政体や憲法にも係る重大な政治問題に発展する様相を呈し始めている。
 同学園の籠池理事長の国会招致が焦点となっていたが、‘民間人だから’という意味不明な理由で招致に反対していた自民党が、一転招致を了承し、3月23日に証人喚問という厳正な形で招致されることになった。
 籠池理事長が、3月16日、記者団に、建設中の小学校は多くの人の意志があり建設されているとしつつ、‘安倍首相から100万円の寄付を頂いている’ことを明らかにした。安倍首相側は、首相としては寄付していない、昭恵首相夫人についても、個人としてもない旨明らかにした。自民党側は、これを‘首相に対する侮辱’とし、喚問に応じることになったものだ。偽証すると罰則が掛かる証人喚問とすることで、発言に抑制を掛ける狙いもあろうが、新たな真実が語られる恐れもある。
 籠池理事長としては、小学校認可申請を取り下げるようにさせられたことや、財務省当局から10日間ほど身を隠しているように要請されるなど、これまで好意的に対応して来た行政当局等が手のひらを返したように圧力を掛けて来たのに対し、同理事長が発言している通り‘しっぽ切りになる’のではとの危機感を感じ、長期政権になることが期待されている首相との関係を前面に出し、首相の威光を借りて行政当局等を封じ込めようとする意図が見え隠れする。そもそも、国有財産の超格安取得や小学校建設認可などが嘗てない速さで進められたが、首相夫妻の名を最大限に使って行うことが出来たと見られるので、国会等での追及に晒された行政当局を黙らせるには、籠池理事長と距離を取り始めたものの、森友学園の教育方針、信条に好意的な首相の威光を借りるしかないと思っているのではなかろうか。
 森友学園籠池理事長は、国有地格安取得、小学校建設許可などを‘安倍晋三記念小学校’、‘安倍昭恵首相夫人名誉校長’などの名前を巧みに使用して進めたことは明らかだ。これらの名称は、国有地取得問題が国会等で追及された後首相側から取り下げられた。首相が‘自分たちが被害者’と主張していることにも一理はある。しかし首相夫妻は、森友学園の幼稚園児に明治天皇が公布した強固な天皇制を前提とした「教育勅語」を唱えさせ、これに沿った‘修身教育’的なしつけや保守思想を教えていることに共鳴し、幼稚園に止まらず、それを小学校等へと繋げたいとする願望に賛同しているようだ。
 森友学園問題は、不明朗、不適正な国有地払い下げや関連資料の廃棄という国有財産管理上の問題や「教育勅語」をはじめとする保守思想を教える幼稚園や義務教育課程の学校に対し政府の補助金その他の優遇、支援を与える問題など、行政上の公正さ、適正さがまず厳しく問われなくてはならない。
 しかし日本の将来にとって、これらの行政上の適性さの問題と勝るとも劣らない問題は、森友学園が目指している教育勅語や‘修身教育’などに象徴される復古的保守教育を判断力や批判力のない幼稚園児から始め、更に小・中学校へと広げようとする意図が根底にあることではなかろうか。
 これは天皇制を旧帝国時代に準ずる強固なものにしつつ、恒久的な制度としようとするもので、その擁護者としての保守勢力を利すると言えよう。しかしこのような教育を、判断力や批判力のない幼稚園児や継続して小・中学校生にまで行うことは、いわば洗脳教育に等しい。森友学園による小学校経営が認められていれば、そのような教育を支持、擁護している首相や首相夫人を始めとする新保守主義勢力の支持、協力を得てどんどん広がっていたかもしれない国民洗脳モンスターとなる可能性がある。
 「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、その中に‘公のために奉仕し’というくだりがあり、それ自体は理解されるところである。しかしその次に‘永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい’などとあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいとの勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制君主国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。信条、信仰の自由であり、私的にこれを教えることは自由であろうが、これを教え、従わせるような教育を行う幼稚園や小学校等に国(行政府)が補助金を与えたり、特別の優遇措置を与えることは、憲法で禁止されている‘国の宗教活動’には当たらないものの、国が特定の信条、思想を教える教育機関を擁護、助成することになるので問題であろう。
 文科省が「教育勅語」を教えることは法令上問題ないなどとしたり、稲田防衛相が「教育勅語」にも良いことが書いてあるなどとしているが、行政当局や閣僚が廃止になった「勅語」を教えることを容認する姿勢は、現行憲法に照らし適正を欠くと見られ、その是非が厳正に問われなくてはならなそうだ。
 籠池理事長が、この小学校は‘いろいろな人の意思に支えられている’としつつ、首相よりの寄付金を同夫人を通じ得ている旨公表したが、小学校建設が首相及び同夫人の意思もあって進められているのだと言いたいのだろう。
 もし今回この問題が表面化せず小学校が建設されることになれば、中学校等の建設にも発展する可能性があり、そうなれば幼稚園児からの国民洗脳教育が根を下ろす可能性があった。それ自体問題であるが、このような日本の将来に関係する重要な事柄を、国民にきちんと知らせることなく、首相や首相夫人、保守政治家、教育者、知識人などの新保守主義グループにより、背後で密かに進められていることがより重大な問題であり、国民としてもこのような裏の動きを精査することが必要なのであろう。更にこのような政治的な勢力が、中央官庁や地方行政府による‘おもんぱかり行政’を作り出しているとすれば驚きだ。
 このような保守勢力が、天皇を憲法上の‘元首’に据えることを含め、憲法改正や女性宮家の創設などによる天皇制の恒久化などを進めていることは注目に値する。保守勢力は、政権維持、或いは保守党を常に日本政治の中心に据えるため、天皇制、或いは天皇の権威を利用することが出来る。それを背後で首相等が密かに進めようとしているのであれば公正を欠く。国民にきちんと説明して行うべきであろう。
 森友学園の各種行事で、籠池理事長が壇上に掛けてある国旗に敬礼をしている姿は、官邸の記者会見会場に掲揚してある国旗に敬礼する姿に似ている。諸外国でも、国旗は大切にされ、また愛着を持たれているが、軍隊の国旗掲揚等の際を除き、一々敬礼する姿は見られない。国旗を偶像化し、権威の象徴としているのだろうが、その先に天皇の権威があるのではなかろうか。国民はそのような権威主義的な国旗や特定政党を利する天皇制を望んでいるのだろうか。そうなれば一党独裁の専制国家的色彩が強くなり、天皇は、‘国民統合の象徴’ではなくなりそうだ。国民の選択次第であろう。(2017.3.20.)
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防衛省へ募る不信と不安

2017-06-29 | Weblog
シリーズ平成の本音―防衛省へ募る不信と不安
 政府は2012年より、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に100人規模の陸上自衛隊員を派遣しているが、政権が安定せず、治安状況の悪化と共に、派遣中断問題も検討対象となる。
 南スーダンは、2011年にスーダンが南北に分裂して独立したが、2013年12月に大統領派と副大統領派が対立し、その後両派の武力衝突が繰り返されており、事実上の‘内戦状態’とも言われている。その後2015年8月に両派間に和平合意がなされたが、2016年7月にジュバで両派間の大規模な戦闘が発生し、市民を含め数百人が死亡した。
 こうした状況を背景として、国会審議では民進党など野党から「PKO参加5原則」に照らし引き上げなどの検討が指摘されていた。自衛隊のPKO参加の前提条件として、(1)紛争当事者間での停戦合意、(2)日本の参加に現地政府や紛争当事者が同意、(3)中立の厳守、(4)以上のいずれかが満たされなければ撤収可能、及び(5)必要最小限の武器使用というPKO 5原則が定められている。
なお、武器の使用については、安全保障関連法(2015年9月)に基づく新任務として「駆けつけ警護」が付与され、これを盛り込んだ「実施計画」が閣議決定されている。‘駆けつけ警護’は、周辺で襲われた国連職員やNGO職員等の救援に向かう任務で、任務遂行のための武器使用が可能になる一方、生命の危険が高まる。
 国連平和維持活動に自衛隊を派遣する要件として最も重要な点は、表現の問題ではなく、紛争当事者間での停戦合意が維持されているか否かという実態であるだけに、南スーダンで武力衝突や戦闘行為があるか否かが大きな問題となる。
 ‘武力衝突’と‘戦闘’との間にはそれ程大きな差はない。前者は、状態を表現し、後者は行為を表現しているに過ぎず、どっちの表現が正しいかなどは不毛な議論だ。
 この問題で、技術的、法律的な問題は別として、将来の日本にとって深刻な点が2つある。
 一つは、防衛当局が国会を含め、情報や資料を隠し、また資料やデータを廃棄したなどと嘘をつくことではないだろうか。仮にも国会での答弁であるので、虚偽と分かれば処罰すべきであろう。現地部隊からの‘日々日報’は、情勢判断するための生の情報であると共に、今後派遣をされる場合の隊員にとって有用な情報となるので、短期に‘廃棄’すべき情報ではない。ましてや政府当局の公務上の情報は、いわゆる‘ヤバイ’情報でもない限り、3年間ほど、少なくても1年以上保管されているし、保管するのが義務であろう。当局が、勝手に短期に‘廃棄’するのは、ケースによっては証拠隠滅となる恐れがある。これは重大な問題であるので、厳重に調査し、適正な対処が必要だ。
 もう一つは、現場の部隊と本部との間で見解の差がある中で、防衛大臣が、国会や国民に誠実に事実を伝えないことだ。
 現場の部隊からは、‘戦闘’があった旨の報告があったのは明らかである。それを、防衛相は、国会での野党の質問に対し、‘戦闘’ではなく‘武力衝突’と答えた。更なる追及に対し、防衛相は、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とし、‘法律上の戦闘ではない’とした。要するに、憲法上問題になる表現は避けるというだけで、言葉をすり替えているに過ぎない。
 スーダン等で政府軍と反政府勢力が、衝突し、武器を持って射ち合えば‘戦闘’である。現場は生きるか死ぬかの状態であるので、日本の憲法や法律の問題などでは考える余裕はなし、その必要もない。
 現場の部隊と大臣を含む本部との間の情勢認識が違う場合、PKO活動を遂行する上で致命的な結果をもたらすことにもなる。本部が現地情勢を楽観し、国会や国民にそのように報告し、任務を継続させれば、現地の部隊に致命的な被害を与える恐れがあるばかりでなく、政府の姿勢が内外から問われる恐れがある。第2次世界戦争中、戦争遂行の中枢であった‘大本営’は、太平洋各地での戦闘で手柄のみを宣伝し、不利な情勢は流さず、戦争を続けて停戦の機会を逃し、また被害を拡大させた過去がある。‘大本営発表’として知られているが、今回の事件もそれに一脈通じるものがある。
 シビリアン・コントロールの確保は重要ではあるが、現場の部隊(制服組)と防衛相を中心とする幹部(背広組)や首相等との間に情勢認識や情勢判断に差異が存在することは望ましくない。特に部隊が発する情勢認識を首相や大臣が握りつぶし、また政権に都合の良い方に歪めて発表等することは、国家、国民の針路を誤らせることにもなり兼ねない。
 3月10日、政府は、本年5月で南スーダンの国連平和維持活動(PKO)参加している陸上自衛隊員を撤退させることを発表した。しかし、防衛大臣は、それはあくまでも‘任務達成のため’であり、‘治安情勢悪化のためではない’とした。最初に虚偽を発表するとその後の対応についてつじつまを合わせる必要があるのだろうが、こんなことでは防衛大臣も防衛相も信用は出来ない。
 国連のディエン事務総長特別顧問は、2016年12月7日にも、対立が続く南スーダンについて、‘衝突は継続し、大虐殺が起きる恐れが常に存在する’旨警告する声明を改めて発表した。危険な状況は続いているとみられ、治安の悪化は明らかなようだ。
 北東アジア情勢は、緊迫と混迷の度を増している。中国の軍備増強と海洋進出は一段と進んでいる。また中東和平は進展せず、イスラム過激派による国際テロはアフガニスタンや中東地域、一部アフリカ諸国に拡大し、その過程でイラク、シリアにイスラム国(IS)が台頭していると共に、国際テロの危険性は世界に拡散し、膨れ上がる難民問題等が欧州にも影を落としている。このような状況で、本来であれば日本も海・空を中心として防衛力を増強しなくてはならないが、情報隠しや情報の歪曲などをする現在の防衛省では、国民の理解は得られそうにない。
因みに稲田防衛相は、安倍首相同様、東条英機などの戦争責任者も祀られている靖国神社を‘防衛大臣’として毎年参拝している。2016年12月には、首相に同行して太平洋戦争に突入する直接の契機となったハワイのパールハーバーをオバマ大統領(当時)と共に訪問し、戦争体験を克服し和解したことを内外に示したが、その帰国直後、稲田防衛相は靖国神社を訪問した。何を懺悔し何を誓ったのか。同相は、首相やほとんどの閣僚がメンバーとなっている神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議など、神道や神社、天皇制を擁護する団体に属しているとされている。どのような宗教観、政治信条を持つかは各人の自由だが、政治家であれば、国民や有権者にそれを明らかにして活動し、また支持を集めるべきであろう。表舞台では建前やきれい事を言い、裏では特定の団体、グループを優遇するなど、不明朗且つ不誠実な活動を行っているとすれば、不気味ではある。(2017.3.14)
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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)

2017-06-29 | Weblog
マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、
取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選(その1で掲載)
 2、既成の世論調査の問題点                  (その1で掲載)
 3.既成政治の否定とポピュリズム
 トランプ大統領は、就任式の演説において、アメリカ第一主義を強調し、米国民の安全と雇用確保を優先課題としたが、それよりも先に重要としたことがある。それは、ワシントンD.C.における既成政治の打破であり、‘権力を国民の手に返す’ことであった。従って、従来米国政治で当然、或いは常識と考えられ、そのように報道されていたことが、トランプ政権により否定され、新たな政策が出されても不思議はない。既成政治の枠組みの中で報道していたマスメデイアが慌てるのも無理はない。トランプ大統領は、選挙期間中にそれらの考え方を全米各地で訴え、多くのマスメデイアがいぶかしがる中で、中西部と南部を中心として米国市民に支持され当選した。選挙結果を受けて主張してきたことを実施に移そうとしているので、マスメデイアがそれをいぶかしがり、批判し続けることは、選挙結果を受け入れないと言っているに等しく、それは米国自身の統治システムや大統領選挙制度の否定とも受け止められよう。
 既成政治を否定し、対決する姿勢であるので、既成政治の本拠地ワシントン、特に野党民主党グループの間では相対的に不人気であろうし、また民主党支持を表明しているマスメデイアには不人気であろう。
 既成政治、その支持基盤である既成社会や利益グループを打破することは容易ではない。トランプ政権は、少なくても政権発足時にはオバマ政権始めこれまでの政権で取られて来た政策や諸措置をひとまず否定し、新たな政策や措置を打ち出すことになる。対決色が鮮明となるが、もとより承知の上であり、反対があることも想定の範囲内である。同政権としては、当初は対決色を鮮明にし、反応や効果を見ながら調整して行くと予想される。米国では、特にマッチョ系の間ではこのような‘ファイテイング・スピリット’は、その結果は別として最終的に評価されることが多い。
 他方、このような姿勢に反対することは、既成政治や既成社会、既得権益打破に反対し、これを擁護することになる。またロビイストや利益団体に支えられた職業政治家以外の、財界人その他の民間人は大統領にはなれないとの前例を作ることにもなり兼ねない。
 トランプ大統領は、既成政治を打破し、‘権力を国民の手に返す’としているが、これ自体は民主主義を促進する上で望ましいことであろう。これを既成政治側や既成社会は、‘ポピュリズム’として軽蔑する傾向があるが、‘ポピュリズム’は時の流れではないだろうか。
 他方、トランプ政権側も、既成マスメデイアは既成社会や既得権益グループの一部であり、国際世論を含め、世論の重要な部分を構成していることを忘れることなく、合わせ聞く耳を持つことが必要なのであろう。むしろ自らの考えや政策を浸透させたいのであれば、マスメデイアを活用することが効果的であろう。また娘イヴァンカ・ブランドの製品の販売を停止した高級デパートを不公平としてトランプ氏がツイッター等で批判したが、どっちもどっちではあるが、自身及び家族の事業活動から手を引き、大統領としての公務に就いた現在、自身及び家族の事業への公の場でのコメントを控えるべきなのであろう。

 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決
 第2次世界大戦後、1991年12月のソ連邦の崩壊まで続いた東西冷戦構造は解消したが、米、欧とロシアとの対抗関係は残り、また中国の目覚ましい台頭という構図に変化し、新たな対応と国際秩序が必要とされている。
 だが戦後の国際的課題であった中東紛争の根源であるパレスチナ、イルラエル問題は解決するどころか、イスラム過激派による国際テロの拡大、イラクの長期の不安定とイラク、シリアでのイスラム国の台頭、難民の急増、アフリカ諸国のガバナンス低下と部族紛争の継続など、戦後の諸課題は対処療法で先延ばしされるだけで解決の見通しもない。国連も活動分野を広げ、財政的にも人員的にも膨張しているが、対症療法的であり、解決には結びついていない。アフリカの‘国連開発の10年’も60年以上継続しているにも拘わらず90年代は‘暗黒の10年’と言われ、アフリカの安定的な開発には程遠い。また難民問題も多くの地域で難民キャンプが恒常化し、増加の一途であるなど、諸問題の解決目途も立っていない。特に潘基文前国連事務総長時代では、シリアでの和平仲介にも失敗し、シリア難民は増え、拠出を募るだけで問題解決にはなっていない。北朝鮮の核、ミサイル開発についても、非難はするものの、時間の経過とともに実質的に開発が進む結果となっており、記憶に残る成果は見られない。
 米国は、カーター大統領(民主党)が人権、人道や民主主義分野での介入方針を打ち出し、その後の政権も大なり小なり介入政策を継続し、いわば‘世界の警察’的役割を行って来ているが、上記の通り、国連を含め既成の政治、外交は対症療法的な対応に終始し、問題解決を先延ばしし、ほとんどの問題が未解決のまま残っている。
 トランプ大統領は、従来の既成政治の対応を否定し、新たな対応に乗り出そうとしている。いわば‘建前’から‘本音’の政治、外交への転換とも言える。長い間既成政治の中で支持され、維持されて来た概念や政策であり、それがある意味で既成社会の‘常識’となっているだけに、その転換には批判や抵抗があろうが、トランプ政権としては批判があることは十分に想定しているので、必要に応じ調整はしつつも脱既成政治を進めるものと見られる。人道、人権、平等という概念は、世界で広く受け入れられているが、どこの国でも無制限に適用されてはおらず、また各国の発展段階や政治体制によって適用されている程度が異なるのが現実であろう。これが普遍的に適用されるべしというのが誰しも望むところであるが、それは‘建前’であり、各国には国境があり、一律普遍的に適用できないというのが現実であり、‘本音’であろう。グローバリゼーションも、国境がある国家関係が前提であり、世界連邦のような単一世界が形成され、共通の価値が同じようなレベルで適用されているわけでもない。
 このような反既成政治、既成の‘常識’に対する既成政治側の批判は継続されようが、上記の通り、国際問題において解決されていない問題や逆に深刻化や恒常化して解決の目途が立っていない課題があることは明らかである。トランプ政権の反既成政治路線を批判する前に、これら諸課題が時間ばかり掛けて何故解決されていないのか、政策転換の余地はないかを点検、精査することが望まれる。
 これは国連についても同様で、これまでの諸活動を再検討すると共に、費用対効果を重視し、必要に応じ抜本的な改革を検討すべきではないだろうか。‘国連開発の10年’はじめ、これまでのような活動を継続していても、組織、職員は増大し、分担金、拠出金も増加の一途を辿るだけで、問題解決には繋がらない可能性がある。それでも物事が改善して行けばよいが、これまで通りの対応では、多くが問題の先送りに終わり、何も解決しない恐れがある。
(2017.2.12.)(All Rights Reserved.)
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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)

2017-06-29 | Weblog
マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)
 1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
 なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選
 英国は、EU(欧州連合)からの脱退か残留かを問う国民投票において、2016年6月23日、離脱支持が投票総数の約52%、1,740万票、残留が約48%、1,610万票で、EU離脱を選択した。投票率は約72%で、高い関心の中での選択と言えるが、同国の主要マスメデイアの世論調査や予想に反する結果となった。日本のマスメデイアも、いわゆるコメンテータや専門家等を含め、‘僅差ではあるが残留支持’が大方の見方であった。株式市場もそのようなマスメデイアの予想に基ついて楽観していたが、英国のEU離脱というショックウエーブが広がり株価やポンドは大幅に下落した。英国のEU離脱が日本のメデイアでは予想外の結果となり、市場は方向感覚を失い、欧州市場に追随した形だ。
 そして11月8日の米大統領選挙において、米国は主要マスメデイアの世論調査や予想に反し、共和党ドナルド・トランプ候補を次期大統領として選んだ。州ごとに選ばれた選挙人数は、トランプ氏が306人、民主党のクリントン前国務長官が232人をそれぞれ獲得し、トランプ候補が選挙人数では過半数を制した。投票率は、不人気同士の大統領選挙と言われていたが、54%台で、各候補の得票率はそれぞれ46%台、48%台であり、劣勢とされていた。トランプ氏が優勢との報道が流れると日本の株価は大幅に下落した。しかしトランプ次期大統領が、大統領補佐官はじめ大統領府の布陣に加え、財務長官や商務長官などの主要閣僚の人事を発表し始めると、米国の株価及びドルが大幅高となっており、‘トランプ・ショック’は‘トランプ効果’となった。そして1月20日の大統領就任後は、選挙戦中に約束した事項につき矢継ぎ早に大統領令が出されるたびにマスメデイアは一様に戸惑いを示した。選挙後のトランプ効果は後退し、トランプ不安が広がり、右往左往の状態となった。
 また2016年12月4日、イタリアで実施された憲法改正のための国民投票では、否決され、憲法改正を推進していたレンツィ首相が辞任した。目まぐるしく政権が変わるイタリアにおいて、政権を安定させるために上院の権限を大幅に縮小することを目的とした憲法改正への国民投票であったが、大衆の不満に率直な賛同を表明する人民主義政党(ポピュリズム)として行動する「五つ星運動」などに押され、予想に反する結果となった。
 世界の既成マスメデイアの世論調査は、何故予想に失敗したのか。
 2、既成の世論調査の問題点
 戦後欧米で採用されている世論調査は、多くの場合、無作為で一定数の回答者を選択し、回答があった数を基に賛否などの比率を出している。無作為で回答者を選択しているので、‘公平’、‘中立’とみなされているが、これまでの方法ではカバー出来ない層がある。
 1)まず回答率の問題がある。個々の調査により差はあるが、回答率はせいぜい60%前後で、概ね40%前後は無回答であるが、意見を持っていないということではない。賛否の比率等は回答者数で行われるが、4割前後ほどの無回答者の動向如何では、結論が大きく変わる可能性がある。
 調査は特定のメデイアが実施するが、各メデイアが既成政党を支持する等、一定の傾向を持っていることが多く、そのような偏向に好感を持っていない対象者は、調査に応じないであろう。一般的に有権者の約4割前後は無党派層、或いは無関心層であり、選挙やこのような世論調査を敬遠、拒否する傾向が強いが、意見を持っていないということではない。米国でも同様だ。他方調査メデイアに好意的な対象者を中心に回答することになり、調査メデイアの傾向がより強く反映されるのは当然のことであろう。事実、保守系メデイアが行う世論調査では、保守党支持が顕著に高くなる傾向があることは衆知のことだ。
 このような無党派層、無回答層を排除した統計は、世論の全体を反映せず、調査主体により偏向が出やすくなる。
 少なくても賛否の比率は、調査対象者(所在が分からなかった者を除く)をベースとして出すべきであろう。
 2)情報伝達メデイアの変化
 情報伝達の手段は、戦後マスメデイア化した新聞やテレビを媒体とするものから、デジタル媒体に移っている。既成の新聞やテレビは、巨大化、商業化すると共に、既成社会の一部となり、読者や視聴者に影響を与え、類似性の高い‘既成世論’とも言うべき世論やいわゆる‘常識’といわれる意見を形成している。従って、それがあたかも広く共有された‘常識’とみなされ、それと異なる意見を表明し難くしている。マスメデイアの調査に対し、そのマスメデイアが期待している意見に近い意見が述べられることが多いのもその一例であろう。またコメンテーターや専門家、有識者なども、マスメデイアが期待する意見に反しないコメント等をすることが多い。それに反することを言えば姿が消える。
 マスメデイアの更なる巨大化で、より多くの多様性を伝達すると思われたが、政治的には、特定政党を支持するか、支持政党の立場を代弁している場合が多いので、一定の方向性を持つと共に、類似性が高まることになり、それが繰り返し、繰り返し伝えられることにより、一定の世論や‘常識’が形成されて行く。そのメデイアによる調査では、結果が一定の方向性を持つことは不思議ではない。
 米国の、ニューヨークタイムズは民主党支持であり、ワシントンポストやウオールストリートジャーナルは共和党支持であるし、日本の主要都市新聞やテレビ局も同様である。
 このような中で、4割内外の無党派層や不回答層の意見は、選挙においても、マスメデイアによる世論調査などでも、ほとんど相手にされず、対象外とされて来たと言えよう。いわば場外世論だ。
 しかしデジタル情報手段の普及により、これらマスメデイアに依存することなく、ツイッター、フエイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、ラインなどのWebやSNSメデイアを通じ意見やコメントの発信、拡散が可能になった。その拡散力は瞬間的で広範に及ぶ場合がある。トランプ氏は、大統領候補の時からこれを巧みに活用していたと言えよう。
 従来気にも止められなかった無党派層や不回答層をどのように世論に反映させるかが今後の課題だ。そのため世論調査等の方法や手段も工夫が必要になっている。
 2016年当初は、不動産王の泡沫候補とマスメデイアを通じ報道されていたトランプ候補があれよあれよと言う間に共和党の大統領候補となり、そして3回のテレビ討論などを経て、クリントン候補優勢と諸‘世論調査’が伝えていたが、大統領選挙ではトランプ候補が選挙人の過半数を制した。そして選挙人による最終投票においては、トランプ支持の選挙人の何人かはクリントン候補に寝返るなどと報道されていたが、これら報道は見事に外れた。読者や視聴者にその理由を説明する責任がありそうだ。
 3.既成政治の否定とポピュリズム    (その2に掲載)
 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決 (その2に掲載)
 
(2017.2.17.)(All Rights Reserved.)
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賭博と麻薬まみれの読売ジャイアンツ!

2017-06-29 | Weblog
賭博と麻薬まみれの読売ジャイアンツ!
2015年11月、読売ジャイアンツの3人の投手が賭博に関与したことが明らかとなり、更に2016年3月、1投手の関与が明らかになったが、4月29日、警視庁は、笠原投手(事件発覚後契約解除)と開帳容疑で飲食店経営者を逮捕した。
これら4投手は、球団側から契約解除され、また野球連盟から資格停止処分を既に受けていたが、賭博事件として司直手に委ねられることになる。これより先、野球連盟は、4投手以外に関与した選手がいれば、処分を軽減するので名乗り出るように促していたが、名乗り出るものはいなかった。予想通りとも言える。
このような影響の大きな不祥事に対し、読売ジャイアンツの‘渡邉恒雄最高顧問、白石興二郎オーナー、桃井恒和球団会長の3首脳が辞任’した。しかし今回の選手の逮捕である。
このような複数の選手による事件が起これば、選手自身や監督責任のある球団幹部の処分に止まらず、チームの試合出場の自粛や出場停止処分が行われてもおかしくはないし、そのような論調があっても良いのであろう。高校野球や大学野球などでは、恐らくチームの出場の自粛や停止処分となろう。読売ジャイアンツの選手の賭博関与問題についてはそのような論調が起こっていない。野球連盟の対応も、選手の資格停止などだけで、実に手ぬるく映る。野球ビジネスを優先させるということなのだろうか。
読売ジャイアンツについては、清原氏の麻薬使用問題もある。同人については、有罪(執行猶予)となって罰を受けている。しかし同人の麻薬使用は、巨人軍の現役時代からで、読売ジャイアンツの同僚の投手にダッグアウトやロッカールームで麻薬の注文などをしていたようだ。野球賭博にしても麻薬にしても、いずれも複数の選手が関与しており、誰も知らなかったでは済まされない。特に読売ジャイアンツについては、最大手のマスコミの読売新聞グループが実質的なオーナーである。マスコミの論調や社会意識形成などへの影響も大きい。
球団首脳が球団の役職を辞任しても、親会社である読売新聞グループでの地位を未だに維持しているとすれば、社会的にはそれ程反省していないと映っても仕方がない。トカゲのしっぽ切りに終われば、それだけのことで終り、事件の不適切性についての諸選手や社会の意識への浸透は薄れ、いずれ同じような事件が繰り返されるだろう。新聞としての説得力も失う。
他方、バドミントン選手の闇賭博への出入りやスキー選手の海外での大麻吸引については、不適正であり厳重な注意や一定期間の謹慎処分、再教育は必要としても、プロ野球選手が野球賭博に関与したり、麻薬をやっているのとは重大さが異なる。出直す機会が与えられるべきであろうし、その方が抑止効果や教育効果が上がるであろう。(2016.4.29
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