イケメンではないけれど、妙な色気を漂わせる
男の中の男、キム・ウビン。
ドラマ「むやみに切なく」とは、ただひたすらに
“男が女を愛する物語”― 鑑賞コラム
「悪い」男たちの魅力、「最低野郎…」
主人公ジュニョン(キム・ウビン) に、ヒロインのウル(スジ) は、
たびたびこう言います。「最低野郎」…
要は、「悪い男」っていうことです。
そして、断っておきますが、「悪い男」と「ダメな男」は違います。
ジュニョンは、ダメな男ではなく、悪い男、です。
韓国ドラマにおいて、それは大概、「悪い男に見えるけれど、
ものすごく温かで、ものすごくいい男」を指し、
そんな「悪い男」ばかりをひたすら書き続けているのが、
本作『むやみに切なく』の脚本を手がけたイ・ギョンヒです。
そのイ・ギョンヒが本作で目をつけた「悪い男」俳優が、キム・ウビン。
『ゆれながら咲く花』や『相続者たち』ですでに演技力には
定評があり、長身で野性味を感じさせる体つき、決して
イケメンではないけれど(失礼!) 妙な色気を漂わせているあたり、
ジソブやRAINの系統をばっちり引き継いでおります。
新たなる「悪い男」キム・ウビンが切なく、愛おしい理由
というわけで、ジュニョンです。出だしから、ワガママな
韓流スターぶり全開。でも、彼がどんなに非情な態度をとろうとも、
むかつけない、むしろ悲しいのです。なぜなら、その裏には余命宣告
された者のやるせない気持ちがあるから。さらに、ジュニョンは
ウルの父親の死にまつわる因縁を持っており、「愛する女性(=ウル)
への罪を償いたい」という思いもある。ウルと触れ合うほど、
罪悪感と愛の間で揺れ動き、苦悩する姿が放っておけないのです。
イ・ギョンヒ作品の男たちは、残酷なまでに傷つけられる宿命を
背負わせられ、傷つきながらも、ただひとりの女性を愛し抜く。
だからこそ、胸に迫るのですが、ジュニョンもしかり。
ウルが見ていないところ、知らないところで、彼女のために
動くのです。
例えば、ウルが犬アレルギーだと知れば、部屋飼いしていた愛犬ポロロの
犬小屋を庭に作り、ポロロの毛が残らぬよう部屋中を大掃除
(サービスは使わず、自ら!)。ウルが泥酔した際も、民宿に運び込み、
口元を拭いてやったり、着替えさせたり(民宿の女主人に頼むも拒まれ、
自ら!)、寝ている彼女に苦しい胸のうちを告白したり(定番!)。
そんな“かわいい”純情愛で視聴者を悶えさせながら、それをウルの
前では決して口にはしません。どこまでも「最低野郎」のフリなのです
(なのに、ウルが笑うのを目にして、思わず笑みがこぼれたりして!)。
一方で、自らのコンサートでウルに告白してみたり、恋敵ジテ
(イム・ジュファン) にかばわれたウルを奪い、手を取って
連れ去ったり。愛に向かう決意を決めた彼が見せる強引さは、
いわゆるツンデレたちが見せるそれとは異なり、とても切実で。
やっていることは勝手なのだけれども、やたらと胸を締め付け、
“むやみに切ない”んです。
ある事件により、ジュニョンに騙されていたと誤解したウルが
怒って去ろうとする場面があります。それまでどんなときも強気
だったジュニョンが、口にしたのは、「お前を利用したことはない。
愛してる、行くな」切実に訴えるその姿がいたいけで、
悪い男の弱い面にぐらり。
「最低野郎」の仮面の下は…キム・ウビンの愛に涙が止まらない
後半になるにつれ、ジュニョンは再び「最低野郎」の仮面をかぶり、
ウルの父親の死の真相を明かそうとしていくのですが、その冷酷プレイに
ハラハラさせられる一方で、上記の「行くな」に続く弱い面がぽろぽろと
出てきて、母性本能がくすぐられまくり。
さらに、物語終盤、ウルはドキュメンタリー用に撮った映像のなかで、
音声を切った状態で話しているジュニョンに気づきます。
その口の動きから彼の言葉を読み取ったウルは、その深い愛を
知るのですが。この本心を語るジュニョンには、これまでカメラの前で
見せてきた挑発的なスターの姿は露もなく、どこまでも穏やかで、
このうえなく寂しげな表情が、たまらなくいいのです。
(KSTYLE)
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