千歳坂を下り始めた右手に、鯨の模型を掲げた「鯨類供養塔」が見えました。
この供養塔は、1957(昭和32)年に、遠洋捕鯨会社で船長・砲手を務めた天野太輔さんが自費に加えて、漁業会社や捕鯨会社からの賛助を受けて建立したものだそうです。
碑文に26年間に捕鯨した頭数は二千数百頭に達する・・・」と記されていました。
私が子供の頃は、かなりの頻度で鯨肉が食卓に上った記憶があります。
そして1980年以前、独身貴族だった20代後半に寿司屋で食べた、鯨の尾の身の味は忘れられません。
市電が走る通りに出た後、そのまま真っすぐ港へ向かう道を歩き続けました。
100m程も進むと、はこだてマリーナの横に出ました。
多数の白いボートが係留され、その奥に函館どつくのクレーンが見えます。
函館市街で港らしい風景をみるのは久しぶりな気がします。
青函連絡船を利用していた頃は、函館が港町であることを常に意識しましたが、それ以降は異人館や函館山の印象が強く、函館市街で港を感じることが少なくなった気がします。
更に進んで行くと、目の前に、美しい船体曲線を見せる船が現れました。
船腹に楽し気なイラストが描かれ、船首に「ナッチャンWorld」の船名が記されています。
岸壁で釣りをしていた男性に、この船は何ですか? と聞いてみると、
「昔、函館から青森に行ってたフェリーで、最近は動かないね」
とのお話でした。
「それは勿体ないな~ 」と答えましたが、係留費用も馬鹿にならない筈で、かなりお金に余裕がある会社が所有しているの?と思いましたが、頭の中に沢山の???が浮かびました。
更に船体に近寄ってみると双胴船で、かなりのスピードが出る筈です。
そして、函館で一番インスタ映えすると思います。
記事を書くに当たってググってみると、「ナッチャンWorld」は
「2011年の東日本大震災の時に、自衛隊の緊急災害援助部隊派遣に活用され、その後防衛省が大災害に備える目的で借り上げ、自衛隊の演習や装甲車、戦車などの輸送に使われました。
2019年の台風19号襲来時に自衛隊の派遣部隊を乗せて仙台港へ向かい、2018年には、青森ねぶた祭ツアーに運用されています。」
とのことです。
なるほど、頭の中の???が全て消えました。
ウィキペディアには、防衛省の賃料は約3憶5千万と記されます。
自衛隊が災害時に対応する船を新たに作れば、大きな費用と維持費が必要です。誰が考えたのか、素晴らしいアイデアだと思いました。
そして私は、満ち足りた思いで散策を終え、函館どつく前から市電に乗って、函館駅へ戻りました。
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