新得で9時25分発の帯広行きに乗り換えます。
帯広行きの列車が待つ3番線ホームへ跨線橋を渡りました。
跨線橋の上から望むと、根室本線が一直線に東へ向かい、
反対側は、尾根の裾を単線の線路が回り込んでゆきます。
改札口に接する1番線で、数人の客が列車を待ちます。
すると程なく、4両編成の特急列車「とかち4号」がやってきました。
この特急は石勝線経由で、札幌に2時間強で到着しますから、昔の根室本線富良野経由の特急より約1時間早くなりました。
富良野-新得間の根室本線が廃止となるのは致し方ないかもしれません。
帯広行きの普通列車は、特急列車を見送った4分後に新得駅を発車しました。
空は青く、雲は白く、野や山は緑に彩られています。
三角形に尖る山は新得町のシンボル、オダッシュ山のようです。
そしてオダッシュは、アイヌ語でボロボロの岩山に穴が空いた状態を指すとされます。
列車は十勝清水駅に停車しました。
私はホーム越しに見たヨーロッパトウヒを撮影したようですが、今は何を撮影したのか定かではありません。
風景を見て、停車駅を確認し、植物に目を配る旅は何かと気ぜわしいも
のです。
しかし、車窓風景は実に長閑。
この玉ねぎ畑は、こちら側からあちら側まで500mはありそうです。
そんな景色の中を、気動車はひたすら走り続け、
御影駅に停車しました。
駅名は、この辺りで御影石が産出されることに因みます。
御影駅に停まった列車の窓から、雲を被った芽室岳が見えました。
芽室岳の標高は1754mで、これより北に、これ以上高い山はないことから「日高山脈最北端の山」とみなされます。
日高山脈にも数多くの想い出が詰まります。
帯広で過ごした学生生活で自然探査会というサークルに所属し、二年生の時に「日高五ヶ年計画」をスタートさせました。
それ以前に実施された「大雪五ヶ年計画」を踏まえてのことですが、それが私の人生に影響を与えました。
三年の夏休み前半に、日高の幌尻岳(ホロシリダケ)、戸蔦別岳(トッタベツダケ)に入る合宿を計画しましたが、そのタイミングと教職資格に必須な教育原理の集中講義が重なったのです。
「日高五ヶ年計画」の提案者が合宿に参加しない訳にはいきません。
そして翌年もこの集中講義を受けることができず、私は教員となる為の単位が足りないまま卒業の日を迎え、偶然のリクルートで、北海道勤務を希望する社員を探していた製薬会社に就職しました。
そして腰掛けのつもりで入社した会社で定年を迎えることになります。
そんな思い出と重なる日高の山々ですが、
膝まで水に浸かりながら戸蔦別川を登り詰めて行くと、
目が覚めるような幌尻岳七つ沼カールが待っています。
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