拙者の大好きなオネエ様がやってきた。
今日はタケノコほりにやってきたらしい。
時々東京からやってくるこのオネエ様は、いつもおいしいオヤツを持ってきてくれる。 拙者は、おいしいオヤツをくださるこの優しいオネエ様が大好きである。
このオネエ様のご主人はレストランの料理人なので、この里山に来ると、拙者のご主人様にいつもオイシイ料理を作ってくれる。従って、ご主人様は、この優しい料理人様が大好きなのである。
いつぞやは、ご主人様自慢の「シシ鍋」よりはるかにオイシそうなニオイのする「スキヤキ」とかいうものを作ってくれた。その時は拙者はヨダレを垂らしながら、おこぼれを頂戴するのひたすらジッと待ったものだ。 はたして今日は何を作ってくれるのだろうか?
今日のタケノコほりには、オネエ様のテニス仲間であるご友人夫妻も一緒なので、かなり賑やかである。裏の竹薮の方から時々歓声が聞こえる。
「きゃー、こんな大きなタケノコがあった!」
「へー、ここにも頭がでているぞ!」
「おーい、根っこが硬くてほれないぞ!」
そんな歓声を聞きながら、優しい料理人は台所で黙々とそしてセッセと調理にいそしんでいる気配である。
しかし10数本のタケノコを掘り終わった後、勝手口の方でタケノコの皮をむき始めたオネエ様が突如叫んだ。
「あー、ビールが飲みたい!」
そうなのだ、このオネエ様はお酒も大好きなのだ。
拙者のご主人様は、前日から冷蔵庫に用意しておいた缶ビールをあわてて取り出している気配だ。
さてさて、いよいよ昼食の時間である。 庭先から居間の卓上に並べられた料理をのぞいてみると、どうやらちらし寿司と天ぷらのようだ。大きな桶に彩り鮮やかに盛られたちらし寿司を囲んでの宴会が始まった。
台所で優しい料理人が揚げている山野菜の天ぷらを、仲居さんよろしくオネエ様が甲斐甲斐しく次から次と食卓に運んでくる。
里山で取れた新鮮なタケノコやシイタケやゼンマイやヨモギなどのアツアツの天ぷらが次々と運ばれてきて、ご主人様の皿の上に置かれる。
「あーーーうまい!」
ご主人様の感極まった恍惚の声が聞こえる。 それはそうであろう、プロの料理人が揚げているアツアツが次から次と運ばれてくるのだる。うまくないはずがない。
しかしそれにしても、 拙者にもおこぼれがまわってくるのだろうか・・・・・。