うちの娘が今朝、唐突に「プロレタリアサンドウィッチって知ってる?」と訊いてきました。
やぶからぼうの質問に戸惑いましたよ。そんな食べ物はきいたことがありません。まあ、「プロレタリア」と銘打ってあるので、「質素で安い食材を使ったサンドウィッチ」くらいの連想はできますが、ではいったい、どんな具を挟むのかは、正直言って判りません。
と、娘が取り出したのは戦前の新聞記事のコピー。
「この記事を仲間と見て、いろいろ話し合ったんだよ」と娘。日付を見ると「1932年10月4日」付です。戦前の記事。「共産主義青年同盟」が発行していた機関紙「無産青年」のようです (19日追記:指摘を受けました。「日本共産青年同盟」という名前が正式で、現在の日本民主青年同盟(民青同盟)の前身のことです。ご指摘ありがとうございました)。
コピーの字は小さく、かすれているところもあって読みづらいのですが、「にぎやかなお握りやらプロレタリアサンドウィッチ」という小見出しははっきり読めます。
大見出しは「繰り出せ!秋晴れの郊外へ」と書かれています。どうやら、「活動の生気を興し」、長時間労働と低賃金で苦しむ青年のレクリエーション要求のために、ピクニックなどの企画に旺盛にとりくもうという内容のようです。
で、お弁当のガイダンスまで紹介されていて、「にぎやかなお握りやプロレタリアサンドウィッチ」が紹介されているというわけです。
この記事によれば、今では当たり前ともいえるハム、ソーセージは『ブルジョアの食ふ高いサンドウィッチ』なのだそうで、「人参馬鈴薯、青豆等をゆでて薄く塩で味をつけたものを挟」んだり、「パンの上に鰹の塩から・・・柚子味噌または鱈の子、鱈か鰊の干物、塩鮭をほぐしたものなどを塗」った『プロレタリアサンドウィッチ』の方が「いくらいいか知れません」と書かれてあります。
ついでにいえば、ここでいう「にぎやかなお握り」というのは、中に入れるものとして、たくあん、糠漬け、福神漬、紅生姜、シソの実などが紹介されています。これらを各々おにぎりの中に入れるのだとか。
何が「にぎやか」なのだろうと思えば、次に、「手当たり次第に、何にあたるかわからないので、大勢で食べると、とても楽しみ」なのだと。
なるほど。面白い記事です。
いろいろ参考になるなあと思いつつ、このコピーの最下段を見ると『急告』の見出しが目につきました。読んでみると、この号は発行が遅れたのだそうで、その理由が「警察の追及により、印刷所が危険に瀕した」ためと書かれてありました。
戦前の思想統制の中、日本共産党同様、共産主義青年同盟も弾圧の対象であり、党が発行していた「赤旗(せっき)」も、印刷・発行は権力の弾圧を逃れながらのことでした。当時の生々しさを感じます。
今でこそ、堂々と発行ができる「赤旗」や「民青新聞」。まかり間違って、憲法が変えられ、戦争できる国にでもなれば、当然目の敵にされることでしょう。
この当時の青年たちの苦しみ、未来への希望を思うと、二度とこの当時のような社会を繰り返してなるものかと思います。今の青年であるわが子たちのためにも。