羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

5→9~坊さん~ 1

2015-11-25 21:38:14 | 日記
「あっ、はっ?! 良かった、夢か」同僚の結婚式で高嶺といい雰囲気になった夢を見て起きた潤子は全て『夢』と思おうとした。が、握った手の感触が残っている。「あっ?! 夢じゃない。何で握っちゃったっ!」ジタバタする潤子。「しょうがないよね、流れっていうか、お約束っていうか、あれだ。結婚式マジックだ!! 流れ弾的なっ」握った手の感触と高嶺の笑顔を『いい感じ』と思い出してしまう潤子。「待って! いやいやっ、寺の嫁? 無い無いっ!」自分で自分にツッコむ潤子。「好き? どこが? 具体的に出ないな。悪い人ではないんだけど、いや、彼氏随分いなかったしなぁ。いや好きって、『好き』って何だ?」ため息をつき、そういえば自分はニューヨークに行くつもりだったと無理矢理結論付けて「忘れようっ!」と勢いよく居間に出てゆくと高嶺が来ていた。
「結婚してさしあげます」「コングラッチュレーションっ!」家族も盛り上がる。「やめて下さい」「目と目で通じ合いました」「一方通行です」高嶺が勝手に刷った結婚式の案内状も拒否していると寧々が蜂屋と由希に誕生日会を開いてもらうという。高嶺も手伝う気満々だった。「御家族は勿論、私と潤子さんの記念日は全て祝います」事細かに大量に列挙し出す高嶺に「その内(記念日が)被るよね?」ツッコむ潤子。「その場合細分化し、記念の時刻を『記念時』として祝います」「星川ワールドぅっ」ビビる潤子。とにかく寧々の誕生日は祝われることになった。
出勤するとフードを被った天音が現れ職員達に不審者か? と騒がれながら潤子に近付き「あらら、何か普通」と言って潤子の頬に触れようとし、来ていた高嶺に腕を取られた。「星川さんのお知り合いですか?」「弟です」「星川天音と申します。どうぞよろしゅう」名乗るだけ名乗り、サングラスを掛けて天音は去っていった。
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5→9~坊さん~ 2

2015-11-25 21:38:07 | 日記
天音は14の時から京都の寺に修行に出されていたという。何故戻って来ているのかは高嶺にもわからなかった。
「可愛い可愛い兄さんに女ができたからって、毛嫌いしている俺に一興寺を継がせるなんて。俺みたいなちゃらんぽらんに無理や」一興寺の池の傍で、帰って来ていた天音は私服のまま、ひばりに軽口を叩いていた。「おやめなさい。変な関西弁と、その服。ふふ、あなたはわたくしの言う通りにしていたらいいんです」ひばりは笑って去った。「怖い怖い」冗談めかすのをやめない天音。それから三休が寺の縁側で十二支の絵本を読んでいると「面白い本読んどるやんけ」院内をぶらぶらしていた天音が話し掛けた。「鼠がズルいです」と三休が言うと「ちゃうなぁ、騙される猫が阿呆やったんや」天音は笑って、三休の頭を撫でて立ち去った。
昼間、もう結婚する気で例によって散々付きまとわれ、寧々の誕生日を豪勢に祝うと言い出す高嶺にうんざりして帰宅した潤子は夜、ベッドに入っても「ああっ、もう寝れない!」と起き出し、冷蔵庫からカニカマと発泡酒を取り出し部屋で呑み出した。「ああ~っ、生きてる世界が違い過ぎる。例えばこの『カニカマ』、あの人なら絶対本物の蟹、バカみたいに買って来ちゃうもん。この蟹にも蒲鉾にもなれないカニカマの切なさ、わからんだろうなぁ」カニカマに自分を重ねる潤子。その頃高嶺は実際寧々の誕生祝いのせっせと蟹を箱に詰めていた。
「こんな風に呑まないだろうし、つまらん男だよっ」潤子はかなり呑んでいた。「呑んだら意外と甘えてきたりして、ウフッフフっ!」一人でウケる潤子。一頻り高嶺をネタに一人で騒いでいたが「好きになんてならいもーんっ!」とベッドに倒れ込む潤子。と「好きなんでしょ?」不意に寧々の声がして、ギョッとした潤子は部屋を仕切ってるカーテンを開けた。「寝言?」寧々は鼾をかいていた。
     3に続く

5→9~坊さん~ 3

2015-11-25 21:37:59 | 日記
翌日、「潤子先生のやり方はズルいですぅ」職場の化粧室で潤子、毛利、山淵が並んで身仕度していると毛利が一撃入れてきた。ハッキリさせずに男に保険を懸けているという。「だよねぇ、ホントどうにかしなくちゃ」素面の潤子は鏡の中の自分を見詰めた。「高嶺、必ずしも、あなたが住職になれるとは限らないのですよ?」寺ではひばりが高嶺にクギを差し「おもろなってきたな」盗み聞きしていた天音が不敵に笑っていた。
「ホントにすいませんでした!」人気の無い職場の一室で、2年前も今もずっと逃げていたと清宮に頭を下げる潤子。「もう逃げません。私、ニューヨークには自分の力で行きます!」「そっか。いい顔してるよ、桜庭。何かあったらいつでも、相談してくれ。俺はお前の味方だ」結局自分事情は話せないまま、清宮はフラれた。その後、天音が再び職場を訪ねてきた。「自分、兄さんと結婚するん?」潤子を食事に連れ出し高嶺がその気でいること、ひばりの力が絶大であること、寺の嫁、それも一橋寺の嫁になれば身動きが取れなくなることを忠告する天音。「あんたのこと思うて言うとるんやで?」上手く回答できない潤子だった。
潤子の周囲でも、BLドラマCDをイヤホンで聴いていた山淵が通り掛かった三嶋が聴いてるCDドラマのBLキャラに似ていた為ときめき、これを目撃してアーサーが「何故僕はダメで、Mr.三嶋はOK何ですか?!」とヤキモチを妬き、毛利は女子高生にモテる蜂屋を面と向かって睨んで「子供ってホントやだっ」と言い捨てて去ったりと、それなりに波風は立っていた。
「ただいまぁ」帰ると母が「高嶺君格好いいわぁ」等言ってるのでまた来てると思って居間にゆくと案外来ていなかった。母達は結婚式の写真を見ていただけだった。「ああっ、寝れない!」夜、潤子はやっぱり寝れず、また冷蔵庫から今度は父用の魚肉ソーセージと
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5→9~坊さん~ 4

2015-11-25 21:37:49 | 日記
発泡酒(これも父用、カニカマも父用だった)を取り出し、部屋で呑み出した。「何でいないかね? 今日に限って。清宮さんのことハッキリさせたのにっ」ソーセージをムシャムシャ食べる潤子。「ダメだ! 全然ダメだっ! 無理無理っ」結婚式の高嶺の笑顔をまた思い出す潤子。「いかん、会いたいかも」呑んだくれて眠ると高嶺の夢を見る潤子。二人で暮らす部屋で、朝、目覚め、全て英語で甘く話し出す二人。「おはよう潤子」隣で裸の高嶺。「可愛い子ちゃん、私の蜂蜜、僕の全て」囁く高嶺。その口にシーッと指を当てる潤子。「行動で示して」夢の中の潤子は言って、高嶺と互いに引き寄せ合い「んーっ」寝ぼけて空中にキスをしてベッドから落下する現実の潤子。「はずいっ! 軽く死ねる!!」起きてドタバタする潤子。もう朝だった。
服屋で寧々のプレゼントを買いにを高嶺と来た潤子。店を貸し切った高嶺は売り場の端から端まで買おうとしたが、潤子は断り、1着だけ買ってもらった。「寧々は高校生だからこれで十分」そう言いつつ、潤子は服屋に寄った後で行列の出来るラーメン屋に連れてこられたことに戸惑った。「好きな人と1度行列に並んで見たかったのです」夢のこともありリアクションできない潤子。「様子が変ですね?」「そんなことない!」「もしかして清宮さんと?」「はい?」急に清宮の話を持ち出し、部屋に行った、何も無い、何も無くても部屋に行った、と不毛な言い争いになる二人。
「今日は喧嘩したくなかったですっ」困惑する潤子。「あなたは自分がどれ程魅力的なのか気付いて無いっ! もっと自分が可愛いことを自覚しなさい!!」「怒ってるんですか?! 誉めてるんですか?!」「誉めてるんですっ!」「ありがとうございますっ!!」一連のやり取りを「おーっ」他の行列客に感心され、二人は何やら恥ずかしいことになった。
     5に続く

5→9~坊さん~ 5

2015-11-25 21:37:39 | 日記
夜、寺に帰った高嶺を天音がチェスに誘った。「お前のチェスの手は父さんの手に似ている」「兄さんが似とるんや、俺が教わったんは兄さんなんや」自転車の乗り方もザリガニの釣り方も全て高嶺から教わったという。「そのしゃべり方は教えていません」「兄さんの知っとる天音は、京都で死んだも同然や。わかっとると思うけど、お婆様から頼まれとる」「気付いています」天音は駒を打ちながら『二択』を迫った。潤子を諦め寺を継ぐか、潤子を選んで寺から去るか。
「ならば、潤子さんと結婚して、一橋寺を継ぎます。チェック・メイト」高嶺は天音を詰ませた。「兄さんらしいわ。せやけど、俺やったら」駒を指で弾く天音。「お婆様をどうにかするかなぁ」天音を見る高嶺。「冗談や冗談! やっぱり何度やっても兄さんに勝たれへんわ」チェスを片す天音。「せや、もう一つ思い出したわ。干支の猫の話」「よく覚えていましたね」「いや、ええんや、ええんや。マジで惚れた女に出逢えて。応援するわ。住職も巻かす。お婆様も話せばわかってくれるって」天音は途中で話を変え、殊勝なことを言った。
寧々の誕生日当日、出勤した潤子が高嶺のプロフィールから意外なことに気付き、高嶺が先日買った寧々へのプレゼントを箱に詰める中、寺田はひばりに考え直すよう説得していた。「俺からもお願いします」天音までひばりの説得を始めた。「わかりました。今晩8時、高嶺をここに連れていらっしゃい」ひばりは最後の機会を与えることにした。「俺が兄さんに伝えてくるわ」退室すると天音は寺田に『何気に』申し出た。「ああ、頼む」寺田は連絡を任せ、立ち去った。ここで「何を企んでいるのですか?」控えていた香織が天音に詰め寄った。「あんたが香織さんか、俺にしといたらどうや?」香織の肩に手を起き、拒絶される天音。「冗談や、俺ら仲良うなれると思うねん」
     6に続く