この町は海岸近くまで山がせまっているので、山の幸にも海の幸にもめぐまれていた
■山の獲物
※鹿
明治の終わりまで山手の村では、鹿が作物を荒らして困るので、槍を持って村人が集まり、鹿狩(シシガリ)をしたという
雪がたくさん積もって表面が凍っているような日にシシガリをする。山の下の方に直径2メーター程の穴を掘っておき、大勢で上から大声をあげて、鹿を驚かして穴に追い込んで捕まえた。肉は皆でスキヤキにして食べた
※イノシシ・タヌキ・ムジナ・テン
捕まえると皮をとり、肉は食用にした。キツネも捕まえたが肉は臭くて不味い。皮は高く売れた
※ウサギ
冬になるとワナを仕掛けて捕まえる。肉は大根、ゴボウ、ネギなどと煮てすき鍋にすると美味
※キジ・ヤマドリ
冬になるとワナでつかまえる。肉は細かくたたいて団子にして、ササガキゴボウと共に味噌汁にすると美味しい
※カタツムリ
別名、ヤマサザエともいい、囲炉裏に入れて焼き、口が開いたら塩を1つまみ入れて食べると美味しい
※マムシ
猛毒をもつので、見つけたら捕まえて口から裂く。強壮剤としてマムシ酒を作ったり、竹串にさして照り焼きにして少しずつ食べた。マムシは頭から尾まで全部が薬になるといわれていた
※ハチノコ
ハチの巣を見つけるとハチノコをとってきて、からいりして醤油で味をつけ食べる。誰でもとりに行ったわけではなく、好きな人だけである
※アカイヌ
昭和40年頃まで食用にした。イヌを食べるのは冬に決まっていて、体があたたまる。捕まえると雪の中に一晩埋めておく。そうすると煮た時に泡が立たなくなるからで、臭いも強いので一度ゆでこぼしてから大根、ネギなどと煮込む。普通の家では料理しにくいので、山の炭焼小屋などに集まって、家の者にはウサギの肉だといって鍋を囲んだ
※牛・馬
病気で死んだ牛・馬は危険だから食べないが、怪我をして死んだものは食用にした
ウマイケバへ皆で牛や馬を運んで行くと、検査の警官が食用にしないように石油をかける。警官が帰ってから裏返して石油のかかっていないところを切りとって、皆で分けて持ち帰った