春風がフフフと笑って
花おこしの風が通り過ぎて行く日に
生きる喜びをいっぱい吸い込もうと
春を待っていたが
今年の空はなかなか春色にならなかった
ようやく訪れた春の風は
私の名前も知らないけれど
私の運命に頬ずりして
やわらかな匂いを
花瓶に挿してくれたようだ
何故かそんな小さな道化が
うれしくて
今日の日記に
明日の風景を夢想できるように
言葉の呪文を書いてみたくなる
春風は
うらうらと咲くタンポポに
うまれたてのまぶしさを映しているが
この島の物語の虚しさを
にじませている
島の物語は重く
淀んだ虚しさが続くけれど
春風は
それでも ケヤキや桜の枝々に
響きあう春の恋唄を結んでいるようだ