テイカカズラ
高安ミツ子
荒れ果てた家の垣根を
テイカカズラが
人の思い出を
絡めるように咲いている
陽に照らされた
雨上がりのテイカカズラは
子供たちの笑い声を蘇らせ
小さな風車の花は
群れになって涼やかに揺れている
空には薄く虹がかかり
少女たちが晴れがましく
通り過ぎていったように思えてくる
このひととき
花のほのかな香りに
私の不安は沈んでいく
初夏の風はおおらかに吹いている
定家鬘(テイカカズラ)は万葉植物であります。つる性の木で初夏の頃
5弁の可愛い花を咲かせ、香りもあります。きっと万葉人も心が動いた花なのでしょう。
我が家では大きな鉢に植えてありますが、いま満開です。亡くなった義母が残したものです。義母が他界し、6年目を迎えますが、花は義母の思いを咲いているように思えます。
定家鬘という花の由来は、藤原定家の定家から命名されたようです。藤原定家は後醍醐天皇の皇女「式内親王」に恋情を抱いていたようです。かなわなかったその思いは、「式内親王」の死後も忘れられず、彼女のお墓に定家の執念がまつわりついて花になったという言い伝えがあります。