私のつれづれ草子

書き手はいささかネガティブです。
夢や希望、癒し、活力を求められる方の深入りはお薦めしません。

特別養護老人ホームというところ(3)

2009-10-09 | 3老いる
特養入所の翌日
「皮膚科を受診してもらおうと思いますがよろしいでしょうか」
と、連絡が入る。

有難い。
是非とも、とお願いする。

老健では、医師が常駐し、その管理下で施設運営されているという形態から、病院を受診することが容易ではなかった。

定期的に病院受診の必要だった父の場合、受診の都度退所手続きをとり、一泊入院する形でチェックと処置を受けていた。

もちろん移動も病院への付き添いも、老健の持ち場ではなく、すべて家族が負うこととなる。
「○○日に病院に行って欲しい」と、老健から連絡があると、その日と翌日は父の為に時間を空けなくてはならなかった。
仕事も何もあったものではない。
自分以外に対応してくれる人物はいないのだから。

老健の現場を束ねる看護師さんにとっては、急な受診を必要とするその都度、家族に対応してもらうよう依頼する事がひと仕事だったろうと思う。
体調の変化し易い御老人にあっては、夕方様子がおかしいので、翌日病院へ行ってもらいたい…なんてことは頻繁に起こる訳だから。

「こちらの都合も考えてほしい」といったことをはっきりと言う家族も少なくないだろう。
急に、待ったなしでスケジュールを押さえられてしまう家族の辛さは容易に想像できるから。

必要な薬ひとつとっても、老健では入所費用の中からコミコミで都合することが要求されていて、医療費を別建てで請求することが許されていない。
医師の判断があっても、高い薬は使えないとか、多くの薬を処方し得ないとか、老健の施設対応の難しさは察して余りあった。

かくして、時に優れた介護職のスタッフによって父の痒みの訴えが伝わっても、ベッドサイドにオイラックス(痒みどめ軟膏)が一定期間置いてあるだけだった。

特養では、医療費は別建て請求が可能だ。
そこは中間施設の老健と違って、堂々たる生活の場であるから。

病院への受診も、家族の出番を待たず、特養のスタッフが付き添って下さる。
余程重篤な状況に陥らない限り、夕方の電話一本で、翌日から二日間連続の休暇を取らなくてはならなくなるといった状況も減るのだ。

その事実が、私を想像以上に安堵させてくれた。

父のベッドサイドには、皮膚科医から処方された4種類の薬と処方一覧がそっとおいてあった。
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