もう何年も、十月になると毎年必ず訪れる店がある。
明治から続くフランス料理のお店。
小高い山の上の木立に、埋もれるようにひっそりとある。
名物はオイスターバリエと呼ばれる牡蠣のオーブン焼き。
牡蠣殻の上にひとつずつおかれた五つの牡蠣が、それぞれに異なる五種類のソースで味付けしてある。
歴史ある店なのだが、散歩の途中にふらりと立ち寄ったという様子でも迎えてくれる、気の置けない温かさに満ちている。
オードブルとして供されるこの料理。
今年は例年に比べ、妙にさっぱりとしている印象だった。
シーズンが始まったばかりで、牡蠣自体が小ぶりだから…ということもあったが、五種類のソースもいやにあっさりとしている。
動じない、穏やかな笑顔できりもりされていたマネージャーが、若い女性に代わり、恐らく厨房のシェフも代わられたのではないだろうか。
フレッシュな、若々しい雰囲気は感じられる。
ただ、磯の香り、ミルクのようなコク、牡蠣に特有な風味がほとんど感じられなかった。
明治から続くその店を、実質的に続けていらしたのは、多分オーナーの一族だけではなく、外からの人材であるのだろうが、平成21年の今日までにどれだけの人が歴史を引き継いで来られたのだろうか…と想いを馳せる。
若いセンスで厨房に飛び込んでも、守られてきた伝統がある故に、個人の主張は控えめであらねばならないだろう。
その伝統を懐かしんで、毎年訪れる顧客もいることだろうから。
しかし、全く同じでは継続は実現されないと言った話もよく聞く。
帰り際、若いマネージャーにオイスターバリエの感想を聞かれ、言葉を選んで
「あっさりしていました」
と答えた私に、
マネージャーは
「仕入れも変えたのですが、今はまだ早生の牡蠣ですから、シーズンを迎えて牡蠣が大きく育ったころ、是非またお越しください」
と重ねた。
変化を期待して、寒さが身に沁みるようになったころまた訪れてみよう。
明治から続くフランス料理のお店。
小高い山の上の木立に、埋もれるようにひっそりとある。
名物はオイスターバリエと呼ばれる牡蠣のオーブン焼き。
牡蠣殻の上にひとつずつおかれた五つの牡蠣が、それぞれに異なる五種類のソースで味付けしてある。
歴史ある店なのだが、散歩の途中にふらりと立ち寄ったという様子でも迎えてくれる、気の置けない温かさに満ちている。
オードブルとして供されるこの料理。
今年は例年に比べ、妙にさっぱりとしている印象だった。
シーズンが始まったばかりで、牡蠣自体が小ぶりだから…ということもあったが、五種類のソースもいやにあっさりとしている。
動じない、穏やかな笑顔できりもりされていたマネージャーが、若い女性に代わり、恐らく厨房のシェフも代わられたのではないだろうか。
フレッシュな、若々しい雰囲気は感じられる。
ただ、磯の香り、ミルクのようなコク、牡蠣に特有な風味がほとんど感じられなかった。
明治から続くその店を、実質的に続けていらしたのは、多分オーナーの一族だけではなく、外からの人材であるのだろうが、平成21年の今日までにどれだけの人が歴史を引き継いで来られたのだろうか…と想いを馳せる。
若いセンスで厨房に飛び込んでも、守られてきた伝統がある故に、個人の主張は控えめであらねばならないだろう。
その伝統を懐かしんで、毎年訪れる顧客もいることだろうから。
しかし、全く同じでは継続は実現されないと言った話もよく聞く。
帰り際、若いマネージャーにオイスターバリエの感想を聞かれ、言葉を選んで
「あっさりしていました」
と答えた私に、
マネージャーは
「仕入れも変えたのですが、今はまだ早生の牡蠣ですから、シーズンを迎えて牡蠣が大きく育ったころ、是非またお越しください」
と重ねた。
変化を期待して、寒さが身に沁みるようになったころまた訪れてみよう。