NHKプレミアムシアターで1月15日に放映された喜歌劇「天国と地獄」を観た。これはギリシャ神話の「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディーであり、オペレッタの父といわれたオッフェンバック作曲の作品である。原作の翻訳は「オルフェとエウリディーチェ」だが1914年に帝劇で日本で初演された際に「天国と地獄」と翻訳されたのでこれ以後この題名が定着している。
パロディーといわれるゆえんは
- ギリシャ神話では夫婦は愛し合っているが、ここでは夫婦の関係は冷え切っている、夫も妻も浮気している
- 天井の神もオルフェの妻に気があり、神様も人間とあまり変わらない
- 地獄から妻が夫に連れられ地上に帰る途中、振り返ってしまい帰れなくなるが夫はそれを喜ぶ
2幕の劇だが、1幕では妻のユリディスが夫が浮気相手のプルートの仕掛けた毒蛇に誤ってかまれて地獄に落ちる、プルートは地獄王でありこれを喜ぶ、夫は世論に屈し仕方なく地獄に妻を探しに行く、第2幕ではプルートがユリディスを部屋に閉じ込めているが、ジュピターも女好きで、蠅に化けて鍵穴から部屋に入る、大宴会に変装して紛れ込み地上に脱出しようとするがプルートに見つかり三角関係の争い、そこにオルフェが登場、世論に言われ、ジュピターは地上に返すがその途中で振り返るなと言う、しかし実際には振り返り、地獄に(天井に?)に戻り、ジュピターとプルートは和解し、ユリディスをバッカスの巫女にし、オルフェも含め誰もが喜ぶ結果になって大団円で終わる、というもの。
第2幕の途中で有名なCMで使われた「カステラ1番、電話は2番・・・」という音楽が流れてダンスが踊られる場面がある。陽気で楽しめるクライマックスだ。また、同じく第2幕の途中で突然モーツアルトの41番交響曲が流れる。なぜだか不明だ。
このオペレッタは日本語上演だが、歌の部分の日本語が良く聞き取れないと感じた。後でWebで確認したら当日は歌の部分だけ日本語字幕がでたという、さもありなん。TVでもそうしてほしかった、これはNHKの見落としによるミスか。なぜ日本語の歌の歌詞が聞き取りづらいのか、もともと現地語で制作されたものなので、その音楽も現地語の台本の言葉のリズムに乗りやすい曲になっているからなのか。
演出は良く、楽しめた。また、原田慶太楼と東京フィルの演奏も良かった。
- 作曲:ジャック・オッフェンバック
- 台本:エクトル・クレーミュ、ルドヴィック・アレヴィ
- 指揮:原田慶太楼
- 演出:鵜山 仁
- 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
《キャスト》
- ジュピター(神々の王 / 雷神):又吉秀樹
- プルート(地獄の神):渡邉公威
- ユリディス(オルフェの妻):湯浅桃子
- オルフェ(音楽家):市川浩平
- 世論:竹本節子
- ジョン・スティクス(プルートの召使):髙梨英次郎
- ジュノー(ジュピターの妻):増田のり子
- ダイアナ(狩の女神 / 純潔の女神):上田純子
- キューピッド(恋の神):吉田桃子
- ヴィーナス(美の神):鷲尾麻衣
- ミネルヴァ(知恵の神):北原瑠美
- マルス(軍神):菅谷公博
- マーキュリー(神々の伝達係):中島康晴
- バッカス(酒神):鹿野由之