今日もNHK・BSクラシック倶楽部の録画で「ウェールズ弦楽四重奏団演奏会」を観た。ウェールズ弦楽四重奏団の「ウェールズ(verus)」とは「真実・誠実」を意味するラテン語に由来する。2017年からベートーベンの弦楽四重奏曲全曲録音プロジェクトを開始した。メンバーは
- 﨑谷直人(バイオリン)
- 三原久遠(バイオリン、東京都響)
- 横溝耕一(ビオラ、N響)
- 富岡廉太郎(チェロ、読響)
今日の演目は
- 弦楽四重奏曲イ長調作品18-5から第3、4楽章(ベートーベン作曲)
- 変容(弦楽七重奏曲版、R・シュトラウス作曲)
インタビューでメンバーは、今回の演奏会の大きなテーマは「変奏と変容」、演奏会は全体通してストーリーを考えて選曲している、無意味なプログラミングは絶対していない、ずっと一緒にやってきたのでお互い理解しているし、変化して成長してきた、と説明している。
最初のベートーベンの弦楽四重奏曲作品18の第5だが、中村孝義著「ベートーベン、器楽・室内楽の宇宙」によれば、ベートーベンの弦楽四重奏曲作品18番は作品番号が初めて付された弦楽四重奏曲で全部で6曲からなる。この作品18番は1798年に着手してから2年以上経た1800年にやっと完成した。この作品はあくまで伝統的な枠組み(ハイドンやモーツアルト)を守りながら、その中に以下に革新的イデーを持ち込みうるかという、困難極まりない試みであった、この6曲は作曲という行為が彼自身の中で大きく意味転換を果たしたと言う点で重要な意味を担わされている、と書いている。
ベートーベンは1799年までは交響曲を作曲していなかった、1799年から1800年にかけてこの弦楽四重奏曲を作曲し、その後、作風に大きな変化が生じて「傑作の森」と言われる大きな飛躍の時期を迎えることになる。よって1800年前後という時期は彼にとって大きな転換点であった重要な時期に当たる。
次の「変容」では以下の3名が加わる
- 佐々木亮(ビオラ、N響)
- 横坂 源(チェロ)
- 池松 宏(コントラバス、都響)
「変容」は、番組の説明では、R・シュトラウスの80代の時の作品、第二次世界大戦末期に作曲された、この曲はまず弦楽七重奏の形で構想が練られた、1990年になって初期の七重奏の楽譜が発見され現代の音楽家が手を加えて弦楽七重奏版の「変容」が完成、シュトラウスが表現した戦争による「変容」への悲しみや怒りが弦楽七重奏に凝縮される、とある。確かに聴いてみると非常に暗い雰囲気の曲で、不協和音を聞いているようだった。
今日聴いたベートーベンの初期の弦楽四重奏曲はわかりやすい、親しみやすい曲だったが、後期の弦楽四重奏曲などは難解である。このクラシック倶楽部でも弦楽四重奏の演奏会を良く取り上げるが、難しい感じの曲が多い印象がある。なぜだろう? 楽器を弾ける人からすれば「そんなことはないよ」と言うことなのかもしれないが、演奏家も小難しい顔をして演奏しており、玄人好みの素人を寄せ付けないところがある、ベートーベンもR・シュトラウスも好きな作曲家だけど、弦楽四重奏曲はあまり好きにはなれない、聞き込みが足りないのかな。