バイロイト音楽祭2023、舞台神聖祭典劇「パルシファル」(ワーグナー 作曲)をテレビで録画してあったので鑑賞してみた、4時間10分の放送時間
<出演>
パルシファル:アンドレアス・シャーガー
クリングゾル:ジョーダン・シャハナン
クンドリ:エリーナ・ガランチャ
グルネマンツ:ゲオルク・ツェッペンフェルト
アンフォルタス:デレク・ウェルトン
ティトゥレル:トビアス・ケーラー
演出:ジェイ・シャイブ
合唱:バイロイト祝祭合唱団
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
指揮:パブロ・エラス・カサド
収録:2023年7月25日 バイロイト祝祭劇場
鑑賞した感想を述べてみたい
全般的なことについて
- 初めて観るオペラで、かつ、4時間超の長いオペラなので、いくら予習をしても1回で理解するのは難しかった、それでも自宅で録画を見る良さは、何度でも繰り返し後戻りして確認することができること、また、一気に4時間ぶっ続けで観ないでもよいということでしょう、私は3日に分けてゆっくり観た
演出について
- 最近のバイロイトは人気演出家による奇抜な演出がはやっているようだ、今回のマサチューセッツ工科大学教授ジェイ・シャイブの演出は観客が3Dメガネをかけることにより舞台上の演出に加えARを体験できるという奇抜なもの、ただ、これは一部の観客だけのようだ
- 3Dメガネをかけないで観る舞台も十分ユニークなものだった、舞台が中世の城やその周りの森だけど聖杯がレアアースであるコバルトだったり騎士団がレアアース採掘現場の労働者だったり、何が何だか分かりにくい設定だった
- どうもシャイブはレアアース獲得競争が引き起こす環境破壊をもテーマにしているようで、パルシファルは最後に聖杯と見立てたレアアースを地面のたたきつけて粉々にしてしまう、これは、環境破壊に対する批判なのか
- オペラのストーリーの中に環境問題などの時事問題を入れる演出は今までもあったであろうが、好きになれない、そもそも温暖化ガスによる環境問題など欧州が騒ぎだしたもので、これをまともに取り上げること自体、思考停止であり、欧州各国や米国では行き過ぎた環境原理主義に是正の動きが出ている、そんな問題をオペラでも演じるというのはオペラの政治利用であり、別の場所でやってもらいたいし、取り上げるなら皮肉を込めて劇中に入れるほうがセンスが良いと思う
- また、観ていてわからなかったのはガランチャのやったクンドリについてだ、ガランチャのクンドリとそっくりの衣装や髪形、髪の色をした影のクンドリとでもいう存在が何度か出てきてグルネマンツ役のツェッペンフェルトと絡むところが多いことだ、いったい何を意味しているのかさっぱり分からなかった
歌手について
- 観ていて良いなと思ったのはアンフォルタス役のデレク・ウェルトンであった、禿げ頭の王であったが、そこがびっしょりと汗でぬれるほどの熱演であったし、聖槍で刺された傷口の血がグロテスクで良かった
- タイトルロールのアンドレアス・シャーガーはピンチヒッターでの出演だったそうだが、歌いなれている演目らしく、その歌唱力を存分に出していたと思う、また、彼は最近観たばかりの2024年バイロイト音楽祭の「トリスタンとイゾルデ」にトリスタン役で出演していたあの彼だ(こちら参照)、もうバイロイトではおなじみの歌手なのでしょう
- そして、カーテンコールで一番の喝采を浴びていたのはガランチャだった、確かに観ていて適役だと思った、単なる美女ではなく、ちょっと特徴のあるこんな女がガランチャは一番似合うし得意なのではないか、特に第2幕のシャーガーとのキスシーンなど映画女優並みの演技力であり熱演に驚いた
指揮者について
- カサドは、バロックオケとシューベルトやメンデルスゾーンまでのロマン派領域まで時代考証を経た演奏を重ねてきて、さらにはモンテヴェルディのスペシャリストでもあり、ブラームスやチャイコフスキー、ヴェルディ、現代音楽も普通に指揮してる多才な指揮者だそうだ、彼が指揮する姿が何回も写されており、良かった
今後、機会があれば見直したい、何回か観て勉強を重ねないと理解できないオペラだと思った
あらすじ
第1幕
中世のスペイン、モンサルヴァート城の近くの森の中、アンフォルタス王は聖杯守護から外された異端者クリングゾルに聖槍を奪われ、傷を負った、この傷をなおすには「共に苦しんで知に至る純潔(パルシ)なる愚者(ファル)」を待たねばならない、その時一人の若者が白鳥を矢で射たかどでひきたてられてくる、老騎士グルネマンツはこの若者が「純潔なる愚者」かもしれないと考え、城に連れていく、城内で聖杯の儀式が行われるが、若者はこの儀式の意味を理解できない
第2幕
クリングゾルの魔法の城、あの若者が無邪気にやって来て花園の乙女たちの誘惑にあうが、関心をしめさない、その時クンドリの「パルジファル、待って!」という呼び声で、若者は自分が何者であったかを知り、彼女の熱烈なキスにより自分の果たすべき使命を悟る、クリングゾルがパルジファルに槍を投げつけるが、それはパルジファルの手に落ちる、その槍をパルジファルが振ると、クリングゾルは倒れる
第3幕
数年後、森の中のグルネマンツの小屋の外に、クリングゾルの手からのがれたクンドリが倒れている。そこへ槍を手にしたパルジファルが現れ、王の傷を癒すためにやってきたと告げる。グルネマンツとクンドリがパルジファルの体を清めると、森は呪いから救われて輝きだす。グルネマンツはこれこそ聖金曜日の奇跡と喜び、三人は城へと向かう。パルジファルは聖槍で王の傷をなおし、みずから聖杯守護の王となる。魂が救済されたクンドリは、彼と見つめあい手を触れあう
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