





旅の最後の訪問地は、旧・新鶴村(会津美里町)である。当初の予定では更に北上して、旧・高郷村及び旧・山都町(共に現・喜多方市)に行く予定だった。寒さと道路の積雪への不安からとても行く気にはならなかった。旧・新鶴村にはJR(只見線)の駅が二つある。小さな村に駅が二つもあったことは驚きだ。一つは今回の写真の「新鶴駅」。もう一つは南隣にある「根岸駅」。横浜と同じ根岸である。しかも新鶴駅と根岸駅の間は約2kmと至近距離にある。根岸駅周辺には特に何もないので、どういう経緯で駅が存在するのかは分からない。20年くらい前のデータによると、一日の利用客素は25人だった。今はもっと少ないだろう。
そんなわけで写真は新鶴駅である。今は鶴(タンチョウ鶴含む)といえば、北海道以外ではごく限られた場所でしか見ることはできない。十年ほど前だっただろうか、1羽のタンチョウ鶴が北海道から秋田県に飛来し話題になったことがある。結局、それは単発で終わり、秋田県に鶴が定着することはなかった。でも江戸時代には割と日本全国各地に鶴は飛来したそうだ。鶴に関連する地名や逸話も数多く残っている。新鶴町はどのような経緯で「鶴」を名乗るようになったのだろうか。明治に新田村と鶴野辺村が合併して出来たというから、大体の想像はつく。恐らく旧・新鶴村で写真を撮るのは、今回一期一会だろう。町の来し方行く末に思いを馳せるのは渡世の礼儀である。そんなことを考えているうちに旅の終わりが近づいた。帰路の前に遅めの昼食、喜多方ラーメンを食す。寒さは撮影することの敵になった。その代わりにラーメンを十倍旨くした。帰りの大峠は問題なく通過できた。結局、旅の終わりは鶴ではなく、ラーメンだった。
X-T5 / XF23mm F2R WR