
居酒屋とかレストランで「とりあえず生中!」とビールを注文し、出てきたジョッキが小さくてドン引きすることがある。グラスビールとして考えても小さすぎて困惑したこともある。「生中」には厳密な定義が存在しないので店によってマチマチである。言ってみれば「ご飯大盛り」と同じであり、その店の中での大中小なのである。これが日本酒の場合となると、かなりバラツキは抑えられる。1合=180mlだけど、飲食店などでは実質容量が150ml位のグラスなり徳利を使うケースが多いという。そもそも江戸時代から米屋の桝は微妙(?)な調整がされていたと聞くし、この程度であればムキになることでもない。
少し前に弘前に行ったとき、居酒屋で「陸奥八仙」を頼んだ。僕は心房細動の手術を受けて以来、基本的に酒は2合まで(医者は1合というが)、旅などの一時的な例外としても3〜4合の範囲に抑えようと思っている。陸奥八仙はぐい呑で提供された。最初これは多分、90mlなんだろうなと思った。でも並々と注いであるので、もしかしたら120mlかもしれない。そこで僕は女将らしき人に質問した。「これは実質的な量としては何mlくらいですか」。量が少ないとケチをつけたのではない。その後に呑む酒の量が決まるからだ。でも言い方が良くなかったのかもしれない。女将は異様に動揺し、一度奥に引っ込んだ。カウンターの大将が「小さく見えるかもしれませんが、1合ぐい呑なんです。だから180mlです」と言った。いやこれ180mということはないだろうと思ったが、特に気に留めず次の注文を決めようとメニュー表を眺めた。メニュー表を良く見ると確かに「1合でのご提供」と書いてあった。僕がメニュー表を眺めていると今度は大将が動揺し、前掛けを外し外に一服に向かったようだった。虎の尾を踏んだようで、僕も困惑した。量の問題を差し引いても値段は決して高くなかったし、酒も料理も旨かった。僕は満足して楽しんでいたのだが、クレームだと思われたようで申し訳ない。でも写真を見返すと、確かに小さい(笑)。21世紀、令和の世になっても計量の闇は継続しているようだ。今回のぐい呑も、180 mlには流石に無理がある。90mlとは言わないがせめて120ml、どんなに話を盛っても150 mlとすれば良かったのかもしれない。何度も言うけど、旨かった。