上段の写真、窓際で麗らかな陽を浴びる猫の写真に見えると思う。それは間違いではない。でも実際には下段の写真の窓際であり、この直後に薄日が差しただけである。モノクロ写真をやっていると気づくことがある。明るさは相対的なものに過ぎない。どこを基準にするかにより、光は影となり、影は光にもなる。性質が反転したのではない。最初からそうなのだ。
人間の性質もこれと同じようなところがある。例えば虫も殺せぬ美少女が、熊が駆除されたニュースに涙しながら、とんかつを食べたりする。虫も殺せないことと、豚を美味しそうに食べることが両立するのが人間だ。生を維持することは、そういう矛盾を受け止めることでもある。最近は芸能人とかスポーツ選手などをやたらと礼賛し、あたかも「聖人君子」であるかのように祭り上げる風潮が強い。僕はそういう礼賛具合が少し気持ち悪い。必要以上に祭り上げられた結果、そこから落ちると悲惨な状況になる。そして実際に何かをやらかして、オセロがひっくり返るように評価の大逆転が起きることもしばしばである。やらかさないとしても、前述の通り人間のあり様の振れ幅は大きい。評価軸の基準点をどこに設定するかによって、善人にもなれば、その逆にもなり得るのである。極論すればプロ野球選手は野球を極めただけの人であり、芸能人は何らかの芸を極めただけの人である。その方たちの中には、人格が素晴らしい人もいれば、人間的に問題がある人もいる。特定の分野で顕著な実績を上げたからといって、ハードルを上げ過ぎない方が良い。
昼寝をする猫を眺めながら、こんな物思いに耽った、いま問題になっている「あの件」を念頭に置いてはいるが、ここで辞めにしたい。
X-PRO3 / XF35mm F1.4R