漁港の片隅で生きる猫。白いのが3匹、黒いのが1匹いるみたいだ。白いのは皆、似たような容貌であり、兄弟とか何らかの血縁関係にあるのだろう。かなり「やさぐれ」化してきているが、多分元々は育ちが良い猫だと思う。どういう経緯でここに来たのかは分からない。あまり良い話ではないことは間違いない。台風前夜、人の気配のない漁港で、猫たちは静かに過ごしていた。
さて、お盆に東北地方を直撃した台風5号。僕はその台風が通過した秋田県に住んでいる。幸いなことに被害はなかった。それどころか殆ど雨も降らなかったし、風も吹かなかった。自然が相手なので、少しでも進路がずれると大きな被害になったかもしれない。それは理解している。報道がなければ我々は目隠しされたも同様の状態であり、大変助かっている。その上で尚、NHKに文句を言いたい気持ちもある。ちょっとあんまりではないだろうか?。NHKの災害関連ニュースは、多くの人にとって重要で、避難等の命に関わる行動に大きな影響を与えてきた。でも残念ながら最近の報道姿勢は、「大きな災害である」ことを強調したい気持ちが勝り過ぎている。まるで極めて礼儀正しいワイドショーのようでもある。今回の台風については、「先日の大雨で被害を受けた東北地方が再び災難に見舞われる」というストーリーに、明らかに固執していた。現地に住む者として、まず何より欲しいのは正確な情報である。分析や予想に伴う警戒情報はその次で良い。実際、天気予報サイトで示唆にみれば、NHKで言うことと全く異なる予想が出ていた。一般民衆は気象のことなんて分からないんだから、我々の言う通りにしなさい。とにかく危険なんだよ。NHKからは、そういう思想を感じる。例えば「明日の朝までの降水量は、東北地方(の多いところ)では約50ミリになる見込みです。先日の大雨で大きな被害を受けた東北地方の日本海側の地域では最大限の警戒が必要です」という報道。確かに多いところでは50ミリを超えたかもしれないが、岩手県や青森県の太平洋側の一部地域だけかと思う。それと先日の雨で被害を受けたところ云々は、別の文脈にある。それを敢えて混同させ、インパクトを与えようとしている。こういうことが続くと、段々と受け手に「結局大したことないだろう」というバイアスが働くようになり、むしろ危険である。参考までに今回の台風では秋田市のある地域から北側に雨が降り、南側は雨すら降らない状況だった(まあこれがずれると確かに状況は変わるけど)。つまり秋田県北部、岩手県と青森県だけに雨が集中し、東北地方でもそれ以外の県には大した雨は降っていないと思う。
この東北地方という括りがいかに大雑把か、少し補足したい。東北地方最北端の青森県の大間町から、最南端の福島県の檜枝岐村までの距離は、直線距離にして500kmを超えている。これは東京から岡山県の備前市までの(直線)距離に相当する。もう岡山城は目の前だ。ではニュースで盛んに言っていた「東北地方の日本海側」はどうだろうか。最北端は同じく青森県の大間町、最南端は山形県の鶴岡市(鼠ヶ関)であり、直線距離にして約350kmとなる。同じく東京からの距離で例えると、大体、滋賀県の大津市までの距離に相当する。あと少しで京都、都入り寸前である。岐阜県とか愛知県で大雨だからといって、東京の人は避難なんかしないと思う。こと東北に関しては、その位の距離感のものを一緒くたにして報道しているのである。違和感を覚えるのも当然である。これは被災地に寄り添う振りをしつつ、視聴者の興味を煽る手法だと思っている(その興味の煽り方は報道的善意に基づくのかもしれないが・・・)。まあそのくらいにしないと、まともに避難行動を取らない人もいるのだろう。でも報道は正確な情報提供が第一優先、何が無くても正確な情報。インパクトとかは後回しにして欲しい。僕は根底に気象庁に対しての不信感を長年持っていて、その八つ当たりもNHKに向いている。熱くなり長文になった。これで終わりにする。
追伸:と言いつつ追伸。最近は番組途中に「いま入った情報です!」とか「速報です!」とぶっ込み、ライブ感を過剰に演出もしている。これも情報の重要度よりも、番組的な「スクープ感」を優先しているからだと思う。
X-PRO3 / XF56mm F1.2R WR