後編です。
大洋酒造の蔵を出た僕は、中心部(大町)に足を伸ばす。いつも行く「お約束の場所」である。他にも肴町とか鍛冶町とか、いかにも城下町らしい町並みもあるけど、どうしてもここに来てしまう。もはやクルマで来たときと同じ状況になった。ただ一点、大きな違いがある。今日は鉄路で来たので、アルコールを嗜むことが出来るのだ。というわけで念願のランチである。狙っていた店は貸し切りで入れなかったが、他の店でビールと日本酒付きで食事をした。これで旅の目的の7割方は達成されたといえよう。公共交通機関で遊びに出かけ、お昼(夜でも良い)にビールなんかを頂いて、そして帰宅する。大都市圏では当たり前の行為かもしれないが、東北の田舎町では中々困難な作業なのである。どこかで「クルマ」が介在しないと実現しない。そもそも家から鉄道の駅までクルマがないと到達できない地域が殆どなのである(幸い、僕は不便さを別にすれば鉄道の駅まで歩いていくことができる)。
感慨に耽りながら〆張鶴を呑んだ(写真の銘柄しかないのは残念だった)。食後は、ぷらぷらと周囲を歩き、パシャパシャと色々なものを撮影した。それは大体写真の通りである。まだ時間は残っている。でも何故か僕は予定の時間よりもかなり早く駅に歩いて行った。乗るべき列車の時刻の40分以上前には駅に着く。鉄道とかバスの時刻に合わせて行動する習慣を持たなくなってから、既に15年以上経つ。時刻調整をスマートに出来ない。しかも1本列車を逃すと、数時間の遅れは当たり前、場合によってはその日のうちに帰れなっても不思議ではない環境。必要以上にナーバスになる。東京在住の時代は、終電に走り込んでギリギリ間に合う、そんな綱渡りも日常茶飯事だったけど、田舎ではそうもいかない。時間つぶしに駅前で軽く一杯と思ったが、そんな店はなかった。ただ駅で列車を待って過ごした。これでは駄目駄目だと思う。折角の遠足、現地滞在時間は4時間半しかない。そのうちの15%近い時間を駅の待合室で、ただ列車を待って過ごした。次回以降の遠足のテーマとなるだろう。