帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百七十六〕きらきらしき物

2012-01-12 00:04:32 | 古典

  



                                                  帯とけの枕草子〔二百七十六〕きらきらしき物



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、君が読まされ、読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百七十六〕きらきらしき物

 
 文の清げな姿

 煌ら煌らしいもの、大将が御前駆けしている。孔雀経の御読経、御修法。五大尊の(御修法)も。御斎会。

 蔵人の式部の丞が、白馬の日、大広場練り歩いている。その日、靫負の佐が摺衣艶出している。尊勝王の御修法。(春秋の)季の御読経。熾盛光の御読経。


 原文

 きらきらしき物、大将、御さきをひたる。くざ経のみど経、みずほう。五だいそんのも。ごさいゑ。

 くら人のしきぶのぞうの、あをむまの日、おほばねりたる。その日、ゆげいのすけのすりぎぬやらする。そんしゃうわうのみずほう。きのみど経。しゞやうくわうのみど経。


 心におかしきところ

 嫌ら嫌らしいもの、対象がお先に感極まっている。来る途中の身と京。見ず放。五体損のも。小細枝。

 暗人の堅苦しい丞が、白うまの日、大広場練っている。その日、遊芸の出家が摺衣艶出している。損傷負うの見ず放。年二回の見と京。非常に盛んに乞う見と京。


 言の戯れと言の心

 「きらきらし…綺羅綺羅し…煌煌し…すばらしく輝いている…嫌ら嫌らし…嫌ふ嫌ふ」「大将…対象…お相手」「をひたる…前駆している…老いたる…極まっている…感極っている」「くざ…孔雀…来さ…来る途中」「経…京…極まり至ったところ…感の極み」「みど経…御読経…みと京…みとのまぐあいの京」「みど…みと…水門…身門…陰」「見…覯…媾…まぐあい」「京…頂点…感の極み」「法…放…放出…放棄」「五大…五体」「尊…損…損傷」「斎…細」「会…ゑ…枝…身の枝…おとこ」「くら人…蔵人…暗人」「式部…儀礼儀式大学等に関することを司る…堅苦しい役所」「白…色のはて」「馬…おとこ」「大場…大広場…大路」「場…女…路」「練る…ゆっくり歩む」「ゆげい…ゆげひ…靫負…武人…遊戯芸…遊芸」「すけ…介…佐…次官…出家…乞食の法師」「尊勝王…損傷負う」「季…春秋…年に二回…年に見る数二回」「見…覯…媾…まぐあい」「熾盛…盛ん盛ん」「光…乞う…媾」。


 枕草子第三章「同じ言なれども、聞き耳異なるもの、法師の言葉、男の言葉、女の言葉」。

 紫式部日記「清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人。さばかりさかしだち、真名(漢字)書き散らして侍る程も、よく見れば、また、いとたへぬこと多かり(まったく、聞くに・耐えられないことが多くあります)」。

 枕草子の文の内容がわかれば、枕草子第三章と紫式部日記の枕草子批判の意味がわかるでしょう。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。