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帯とけの枕草子〔百九十一〕浜は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百九十一〕はまは
清げな姿
浜は、有度浜。長浜。吹上の浜。打出の浜。諸寄の浜。千里の浜、広くて思いやられる。
原文
はまは、うどはま。ながはま。ふきあげのはま。うちいでのはま。もろよせのはま。千さとのはま、ひろうおもひやらる。
心におかしきところ
は間は、度重ね有るはま、永はま、吹き上げのはま、打ち出でのはま、諸寄せのはま、千里のはまは広くて思いやられる。
言の戯れと言の心
「はま…濱…嬪…女…端間…破間…おんな」「うど…有度…無数では無いが数えられるほどある…たび重なる」「度…回数」「ふきあげ…吹き上げるものは、風、潮、温泉、もの、その他」「うちいで…何を打ち出すのやら」「もろ…諸々…諸君全てか」「よせ…寄せ…寄せつける…拒まない」「千さと…千里…ひろい…ほめ言葉ではない…細谷川ではない」「さと…里…女…さ門…おんな」「おもひやる…同情する…心配する」。
「はま」の歌を聞きましょう。古今和歌集 巻十七 雑歌下
貫之が和泉の国に侍りける時に、大和より越えもうできて、詠みて遣わしける。 藤原忠房
きみを思ひおきつの浜に鳴く鶴の たづね来ればぞありとだに聞く
(君を思い沖津の浜に鳴く鶴のように、訪ねて来れば、在ると聞く・逢えてよかった……君のおを思い、奥つの端間で泣く女がいると、さがし求めてくれば、君は健在だと聞く・さすがお強い)
「はま…濱…女…端間」「おき…沖…奥」「たづ…鶴…鳥…女」「なく…鳴く…泣く」「の…比喩を示す…主語を表わす」「たづねくる…訪れてくる…捜し求め繰る」「あり…有り…在り…在宅…健在」。忠房は貫之と同じ国守仲間。「心におかしきところ」を添えた挨拶の歌。
返し 貫之
おきつ浪たかしの浜の浜松の 名にこそ君を待ちわたりつれ
(沖津浪、高師の浜の浜松のように、名高いからこそ、君を待ち続けていた……奥つ心浪高しの端間の、端間が待つような、名高い君の汝おこそ、女は待ちつづけていたよ)
「はま…浜…端間…女」「まつ…松…待つ…女」「たづ…鶴…鳥…女」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。