帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百九十一〕浜は

2011-10-05 00:22:28 | 古典

  



                             帯とけの枕草子〔百九十一〕浜は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔百九十一〕はまは

 
 清げな姿

浜は、有度浜。長浜。吹上の浜。打出の浜。諸寄の浜。千里の浜、広くて思いやられる。


 原文

 はまは、うどはま。ながはま。ふきあげのはま。うちいでのはま。もろよせのはま。千さとのはま、ひろうおもひやらる。


 心におかしきところ

は間は、度重ね有るはま、永はま、吹き上げのはま、打ち出でのはま、諸寄せのはま、千里のはまは広くて思いやられる。


 言の戯れと言の心

「はま…濱…嬪…女…端間…破間…おんな」「うど…有度…無数では無いが数えられるほどある…たび重なる」「度…回数」「ふきあげ…吹き上げるものは、風、潮、温泉、もの、その他」「うちいで…何を打ち出すのやら」「もろ…諸々…諸君全てか」「よせ…寄せ…寄せつける…拒まない」「千さと…千里…ひろい…ほめ言葉ではない…細谷川ではない」「さと…里…女…さ門…おんな」「おもひやる…同情する…心配する」。



 「はま」の歌を聞きましょう。
古今和歌集 巻十七 雑歌下


 貫之が和泉の国に侍りける時に、大和より越えもうできて、詠みて遣わしける。 藤原忠房

きみを思ひおきつの浜に鳴く鶴の たづね来ればぞありとだに聞く

(君を思い沖津の浜に鳴く鶴のように、訪ねて来れば、在ると聞く・逢えてよかった……君のおを思い、奥つの端間で泣く女がいると、さがし求めてくれば、君は健在だと聞く・さすがお強い)


 「はま…濱…女…端間」「おき…沖…奥」「たづ…鶴…鳥…女」「なく…鳴く…泣く」「の…比喩を示す…主語を表わす」「たづねくる…訪れてくる…捜し求め繰る」「あり…有り…在り…在宅…健在」。忠房は貫之と同じ国守仲間。「心におかしきところ」を添えた挨拶の歌。

 

返し 貫之

おきつ浪たかしの浜の浜松の 名にこそ君を待ちわたりつれ

(沖津浪、高師の浜の浜松のように、名高いからこそ、君を待ち続けていた……奥つ心浪高しの端間の、端間が待つような、名高い君の汝おこそ、女は待ちつづけていたよ)


「はま…浜…端間…女」「まつ…松…待つ…女」「たづ…鶴…鳥…女」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
 
 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。