たろは尊い。
たろがどのくらい尊いかは
私しかわからない。
たろはたしかに なんだかちょっと他のことちがって
動きもゆっくりだし、不器用なところもあるし、
お尻にうんちくっついている時もあるし
うんちを取るために、カーペットに尻をこすりつけたり
でっかいうんこをしたり、
時々血便をしたり
異様に吐いたり
夜中にどこか別の部屋で鳴いてたり、
ふとんの上で寝られると重くて寝られないし
それでもふとんの真ん中で寝ようとするし
寝起きの腰痛はたぶん太郎を股の間で寝させて寝返りがうてなかったからだし
爪をたててふとももに穴をあけて、血が出るし
おもちゃを見せても反応がにぶいくせに遊んでくれとせがむし
ちょっと重すぎるし
私の足の上からダッシュして出血したり
いろいろあるけど
たろは尊い。
たろには思い出がある。
外の、寒いところで待っているたろを
連れてくるまで どのくらい葛藤したか
その思いを乗り越えて連れてきて
一緒に暮らし
信頼関係を築けた喜びは言葉につくせない
駄菓子屋の裏路地の
汚い溝の間で
だれかがくれた おかずの味がついた
発泡スチロールのトレイをかじって飢えをしのいでいた太郎
藤の木の根元で、ずっと待っていて
私が行くと伸びをしながら近づいてきた太郎。