西の空に陽が落ちて冬の早い闇が訪れると、「ワッショイ・ワッショイ」と元気な声が志賀海神社の参道を駆け抜ける。
子供達を含めた射手の若者達はふんどし姿で、市営渡船のある船着き場近くの海に向かうと冷たい海に体を沈めて禊ぎを行う。
それから仮宮まで走って戻ると、樽に入った真水を被りこの夜の禊ぎは終わる。
樽の前に一列に並んだふんどし姿の子供たちに向かって、容赦なく「すくい桶」で水が浴びせられる。
沿道では厚着をした地元の人から、「ガンバレ・ガンバレー」の声がかかる。
樽の水も減ってくると前列に座った子供たちの頭に、樽の中に残った冷たい水が一気にぶちまかれる。
取り巻く観客からは、同情とも歓声ともつかないどよめきが起る。
彼らはこれから神社にこもり、歩射祭の朝を迎える。
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