好きな小説家は、宮本輝

2012-01-08 13:03:13 | 読書マラソン
「一番好きな小説家は?」と聞かれたら、やっぱりこう答えると思います。


まだ、そんなに多くの作品読んでいないんですけどね。


読んだ数でいえば、村上春樹の方が断然多い。

『風の歌を聴け』
『1973年のピンボール』
『羊をめぐる冒険』
『ダンス・ダンス・ダンス』
『スプートニクの恋人』
『海辺のカフカ』
『国境の南、太陽の西』
『ノルウェイの森』

これくらい。

一方で、宮本輝で読んだのは

『螢川・泥の河』
『道頓堀川』
『ドナウの旅人』
『流転の海』←今ココ。


でもやっぱり、宮本輝の作品が好きかな。

『錦繍』とか『草原の椅子』とかも読んでみたいけど。


そもそも、宮本輝を知ったのは、確か中学生の時だったと思います。

それも、学習参考書で国語の問題を解いてたときに、題材が『螢川』のクライマックスのシーンだったんですよね。

その時の自然描写の素晴らしさと、話し言葉の自然さに引き込まれてしまったんだと思います。
あとは、『螢川』の主人公が「たっちゃん」て呼ばれていたのも大いにあるけど(笑)


その時から、「この人の小説読んでみたいなー」って思ってた気がする。
確か地元の図書館行って、全集漁ってた。


宮本輝の作品の、一番の良さは『言葉使い』かな。

日本語がすごくきれい。

特に、登場人物が使う方言(『螢川』→富山弁(?)、『道頓堀川』や『流転の海』の関西弁)が、すっごく自然。

普段関西弁を使っている身としては、とても読みやすい。

読み進めてて、言葉のいがいがしさがないのは、大きいかな。


あと、もう一つは、最近思ったけど「泥臭さ(人間臭さ)」。


『流転の海』は、今途中までしか読んでないけど、主人公はじめ、生きるしぶとさ、みたいなのが強く感じられる。
それにはもちろん、言葉使いや描写も影響してるんやろうけど。

『ドナウの旅人』は、恋人とか夫婦とか、男女関係の話やったから、僕にとってはつかみづらい部分はありましたが(笑)


まだまだ、ファンのはしくれなんで、時間をかけて、より多くの作品にチャレンジしていきたいですね。


最後に、『流転の海』より、心に響いた言葉を二つ引用します(少し長いけど)。




俺は何のために生まれてきたのだろう。熊吾はそう考えた。金を儲けて、一流の事業家になるためなのか。熊吾はふんとつぶやいて、自嘲の混じった笑みを浮かべた。俺の築きあげたものは砂上の楼閣だったのではないか。戦争という、自分には何の責任もない突発的な出来事で、すべては崩れ去ってしまった。五十歳の男が、この混迷の時代に再び昔日の勢いを取り戻すためには、よほどの欲と悪辣な策略が必要だろう。しかし、そうやって得たものは、俺を幸せにするだろうか。たった一回の空襲であっけなく焼亡したように、金や財産や地位や名誉などは、俺の人生に、僅かな潤いしか与えはしない。死んでからもなお持って行けるものではないのだ。それらはみな、俺の人生の最後を飾るものとはならないのだ (p112)




お前に、いろんなことを教えてやる。世の中の表も裏も、教えてやる。それを教えてから、わしは死ぬんじゃ。世の中にはいろんな人間がおるで。こっちがええときは大将やの社長やのと言いよるが、悪うなると掌を返しよるやつもおる。日ごろはそうでもなかったのに、困ったことがあるとそっと助けてくれるやつもおる。人の心は分からんもんやが、わしはお前に、人間を見る目を持たせてやるけん。人の心が分かる人になれ。人の苦しみの分かる人間になれ。人を裏切るようなことはしちゃあいけんぞ。だまされても、だましちゃあいけんぞ。この世は不思議ぞ。なんやわからんが、不思議ぞ。他人にしたことは、いつか必ず自分に返ってくるんじゃ。ええことも、悪いことも、みんな自分に返ってくるんじゃ。そりゃあ恐ろしいくらい見事にな…  (p78)


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