寝台特急殺人事件

2009-05-07 20:49:14 | 小さなこと
ゴールデンウィークに実家帰ったら、こんなタイトルのビデオが置いてあったんで見たんですけどね、

ツッコミどころ満載でしたよ、本当に。

西村京太郎原作の小説をドラマ化したやつで、いわゆる「十津川警部シリーズ」ですね。

原作に出てくる列車は「あさかぜ」なんですけど、今回のドラマでは、廃止になるので脚光を浴びた「はやぶさ・富士」が舞台になりました。


都内にあるとある病院(武田メディカルセンターという名前だった)は、度重なる医療事故で何人もの患者を死亡させ、医療裁判にもなったがすべて原告(患者の遺族)は敗訴。遺族の中でもその院長に復讐する、という動きが出てきて、集団で院長を殺害しよう、ということになった。その前哨戦として、病院で働いている女性の一人が「はやぶさ」に乗って熊本に向かうので、その女性を殺した。その女性は、「はやぶさ」が大阪駅を発車した時(午前1時8分)には乗っているのを目撃されていたが、翌日の朝5時ごろ、東京築地の海岸で水死体となって発見された。ちなみに、「はやぶさ」は大阪を出た後は、広島(午前5時21分)に到着するまで客扱いをしない。さあ、どうやって死体は東京にいったのか??というのがどちらかといえばこのドラマの謎解き。十津川警部らはこの殺人が病院の院長殺害の前置きだと察して、その院長が「はやぶさ」にのって熊本に行く日に、同じ列車にのって見張りをしていたら、翌朝殺人未遂事件が起こった(警察がいなかったら殺人事件になっていたと思われる)。院長は二号車の個室に乗っていたが、その日の他の個室の客は、全員その病院の医療ミスで家族を亡くした遺族であり、彼らが協力して殺人を計画した。最初彼らは黙秘権を使っていたが、次第にアリバイが崩れて逮捕される。ところで、病院の女性が殺されたことに関しては、その日「はやぶさ」は車内で体調を崩した人がいたため、姫路駅で臨時停車(午前2時)、そこで患者が運ばれるどさくさにまぎれて、すでに殺した女性の死体を車内から運び出し、水産会社から盗んだ、魚を運ぶトラックを使って東京まで運んだ、というものだった。それらの事件が解決した後に、武田メディカルセンターが隠ぺい工作(裏金とか)をしていて、裁判で勝ったことも違反するとして、逮捕状が出て逮捕される、というのが結末。


少々長くなりましたが、だいたいのあらすじはわかっていただけましたでしょうか?少し説明不足なところがあるかもしれませんが、ご了承ください。だいたいの流れだけでも理解いただけるといいのですが。


とまあ、こういうストーリーが二時間くらいで完結するんですけど、はじめに見終えた感想は「なにかもやもやが残る」でした。

一番分からなかったのは、「はやぶさ」が姫路駅で停車した理由、というかその原因。院長が狙われた時は、遺族がグルになって殺害しよう、ということが話の中で示されていたのですが、その前に女性が殺された時は、誰が殺したのかいまいちわからなかった。テレビの中で監視カメラを分析するシーンがあって、そこにはやはり遺族が写っていて、その人が「はやぶさ」に乗ったことも分かるのですが、それがグルになってしたのか、ひとりでしたのかが不明瞭でした。といっても、人を殺す役、車内から運び出す役、東京へ運ぶ役というものが必要なので、よく考えればグルにならないとできないことが一目瞭然なんですが、それが直接説明されていないので、何も考えずに見ていると僕みたいに見終わった後で「あれ?」と思ってしまいます。しかも、姫路駅で体調不良をおこした人間も、よく考えるとメンバーの一人なんですけど(偶然そういう人が現れたとしたら、もし姫路で止まらなかった場合東京まで持っていけませんから)、それもドラマの中で言及されてなかったので、100%本当かどうか、といわれると確証がないんです。あくまで三段論法のように考えた場合は、グルでやったということが分かるんです。このあたり、院長を殺す場面との兼ね合いもあってか、よくよく考えると疑問符ばかりが残る設定となってしまっています。

それに、そもそも「姫路駅で臨時停車させる」というトリック、レベル低すぎじゃん、と思うんですね。だってその駅で停車させること自体「偶然」なことであって、普段のダイヤを使ってのトリックじゃないですからね。作者が本当に頭使うなら、大阪か広島で死体を下して、それからなんかすごいトリック使って東京に運ぶ、っていうのをしてほしかった、というかそうするべきでしょ。そのあたり考えるのやめてしまった雰囲気が出てるのが否めない。

他にも、一人の鉄道ファンとしての立場からツッコむ点もいくつかあったんですけど、それはここではご愛敬、ということで。

なにかその、初めて読んだ本格推理小説が松本清張の「点と線」であることも関係しているのかもしれないけど、あの中で使われた『4分の空白』という神わざ的なトリック(普段は電車が入れ替わり立ち替わりしているので、ホームから隣のホームの乗客が見えないのだが、その4分だけは一日の中で唯一隣のホームが見える、ということで、それを使ってアリバイ作りをした、という今考えても素晴らしいもの;当時の時刻表で実際に再現できた)の印象が強すぎて、他のトリックが大したことないように思えてしまうんですね。それに比べたらこの姫路駅のトリックなんて…と思ってしまう。特に他の推理小説を読まない僕が言うのは傲慢かもしれませんが、西村京太郎の作品はトリックの種明かしが一級じゃないと思う。漫画で読んだ『金田一少年の事件簿』なんていうのも、トリックはハッとするものが多かったから、やっぱり見劣りするのかな。

それに、こういう話を二時間にまとめようとするのも余計に作品の質を低下させていて、言いたい事の半分も言えていないんじゃないか、と思う。推移小説は種明かしをするところに時間をかけないと。この「寝台特急殺人事件」も、ものの5分くらいで終わってしまって歯がゆいこと極まりなかった。

最新の画像もっと見る